令和5年度税制大綱

先日、与党税制大綱が発表されました。
相続税・贈与税に大きな改正があり、NISAも少し様変わりしました。
その辺りの解説と私見を。

贈与税の非課税枠

何年か前より、贈与税の非課税枠110万円が
廃止されてしまうのではないかという懸念が囁かれていました。

しかし現実問題としては超少額の贈与に対して
全て贈与税をかけることは実務上非現実的ですので、
それはないだろうなと思っていました。

と考えると、
被相続人がなくなる前に贈与したものを相続財産に加算する期間を
現行の3年よりも引き延ばすことくらいしかできないだろうということで、
7年になるか10年になるか・・と個人的に予測していたところです。

実際にフタをあけてみると、ほぼ予想通りで、
無事毎年110万円の非課税枠はそのまま。
そして相続財産に加算する期間は、3年から7年に引き延ばされました。

これは110万円の非課税を使いにくくしよう、という意図よりも、
早く財産を次の世代に引き渡してください、
というメッセージであると受け止められます。

お年寄りが多額のお金を抱えていても、使われずでは経済に寄与しませんから、
よりお金を使う若い世代にお金を回して使ってもらうことで経済効果を生み出す、
という趣旨ですね。

ですので、今後も暦年贈与を利用した相続対策は有効です。
加算期間が長くなった分、早めの財産贈与を行い、
節税効果を高めましょう。

相続時精算課税の改正

贈与税の制度には、
昨日のブログでも少し触れましたが、
暦年課税制度のほかに、相続時精算課税制度、というものがあります。
この2つの制度は選択制ですので、相続時精算課税を選択すると、
暦年課税制度は利用できないようになります。

この制度を選択した場合には、2500万円までの範囲内であれば、
贈与をしてもその時点では贈与税は課税されず、
相続が発生したときにその過去に贈与した分を相続財産に加算することで、
相続税の精算が行われます。
贈与を積み重ねていって、その合計が2500万円を超えると、
その超えた部分については20%の贈与税が課税されます。
そして相続が発生したときにこの贈与税は相続税の前払いとして扱われるのです。

相続時精算課税制度を選択した場合には、
これまでどれだけの贈与をしていったかということの管理がなされないといけないため、
改正前は、極端な話し1円の贈与を受けても
贈与税の申告をしなければならないことになっていました。

しかし今回の改正で、
相続時精算課税を選択した場合でも、
年間110万円までの贈与については申告の必要がなく、
相続が発生したときに加算される金額も、
毎年110万円を超えた部分の金額を加算する、ということとなりました。

つまり相続時精算課税を選択した場合でも、
110万円の非課税枠が生まれる、ということです。

これで随分、相続時精算課税が使いやすくなりました。
今後この制度を利用する人が結構増えていくのではないかと思います。

ただ注意点としては、110万円という非課税枠は統一されていますが、
相続時精算課税を選択したらもう暦年課税には戻れない、
という部分については改正後も変わりがないことです。

昨日のブログで紹介した、
「毎年低い税率での贈与税を払ってでも毎年多額の贈与をした方が良い」
というような、結構な富裕層については、
やはり暦年課税のままにしておいた方が良いとも考えられます。

毎年110万以上の贈与をすることはない、という家庭については、
相続時精算課税を利用するメリットが出た、ということですね。

先の暦年課税の改正と同様、
お年寄りが抱えている財産を若年層に開放するという意味では、
歓迎される改正であると思います。

NISAの拡大と恒久化

NISAとは、「少額投資非課税制度」と言われるもので、
一定の金額までの投資については、
その投資に対して一定の時期までに発生したキャピタルゲインについて非課税とする、
というものです。

この利用幅が今回、大きく拡大されました。

まずこれまでの利用上限は、
一般投資については年間120万、積立投資については年間40万までだったものが、
一般は240万と倍増、積立は120万と3倍になりました。

そしてこれまで非課税期間は、
一般が5年以内、積立が20年以内でした。
つまりこの期間内に売却したものについてのみ非課税ということだったのが、
この期間が無制限、ということになりました。

長期投資に対して非課税になるというのは、
本来の株式投資のあり方から考えて、良い改正だと思います。

しかし注意しなければいけないのは、
非課税になるからという理由で気軽に投資を始めるのもどうかというところです。

これはあくまで、
「利益が出たときに」非課税となる制度です。

ですので株式投資で赤字がでることに対しては
当然自己責任です。
そして株で利益を出そうというのは案外難しいことで、
ちゃんと勉強をせずに気軽に始めるものではありません。

国は株式市場の活性化の観点からNISA枠を拡大して大々的に発表しますし、
マスコミもなぜかやたら焚きつけてくるのですが、
株式投資は所詮バクチであるという認識をもっておきましょう。

「非課税」の言葉に踊らされて、株価下落で損をしていては、
元も子もあった話しではありません。

これら以外にもこまごまと改正がなされた今回の税制大綱。
興味のある方は新聞に載っている概要だけでもざっと目を通していただけたらと思います。

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