【バックナンバー】必ずしも、売上高を伸ばす必要はない。

今日は過去記事より、「売上」というものについて考えたいと思います。
この考え方は、基本ですが案外忘れられがち。
疲弊する組織を作り上げてしまうようなことがないように、
気を付けたいところです。

--- 以下、2021/10/17の記事より ---

ちょっと語弊のあるタイトルかもしれません。
私は仕事柄、お客さまの「売上高」に対して
お客さまと一緒に向き合うことになります。
しかし、「安易に」売り上げをあげるということはオススメしてません。
その辺りをお話ししたいと思います。

会社がほしいものは売上ではなく利益

ちゃんと損益の仕組みがわかっていない経営者の方に
結構見られる傾向なのですが、
「とにかく売り上げをあげたい」
「売り上げを上げることが成長である」
という風に考える方がいらっしゃいます。
しかしこれは、場合によってはとても危険な考え方です。

会社が維持発展していくためには利益が必要です。
これは当然ですよね。
では必要な利益は、
どんどん売り上げを上げていくことで得られるのでしょうか?
そんなことはありませんね。
売り上げが上がれば、
そのための仕入れは発生しますし、
その他経費も必要となってきます。

ですので経営者がフォーカスすべきは利益であって、
売上ではありません。
もっと言うと、売上は下がっても利益が上がれば、
それでOKという判断もありです。
もちろん会社の成長の過程で、
「売上があがり、今は先行投資などで利益が出にくい」
という場合もあります。
この場合、ちゃんと近い将来利益が見込めるように
綿密に計画できていれば大丈夫です。
ただし、近い将来利益が見込める「希望的観測」ではなく
「綿密な計画」がある場合に限ります。
売上だけどんどん伸びていって利益率がどんどん下がっていくのは、
成長ではなく「膨張」と呼びます。
将来的に内部崩壊を招く恐れがあります。

もっと短い時間と手間で

売上を追い求めると、いろんなリスクがついてまわります。
・無理やり売ろうとするので、
 自然と値引きをしたり値段を下げたりしてしまう(粗利が下がる)
・無理やり売ろうとすると、顧客目線でなくなる
・回収条件が悪化して資金繰りが悪くなる・・
などなど。

よく「粗利率を、より高くすればいい」といいますが、
これも少し違います。
例えば
①売上100万円 原価20万円 粗利益80万円(粗利率80%)
②売上500万円 原価450万円 粗利益50万円(粗利率10%)
これだけ見ると、②の方が粗利益も少ないし粗利率も低いし、
いいとこなしですよね。
しかし、次の視点は、
「この粗利益をどれだけの時間で稼いだのか」
というところです。
①を稼ぐのには400時間かかり、
②を稼ぐのには50時間かかる
こう考えるとどうでしょう?
①は時間当たり粗利益が5千円、
②は時間当たり粗利益が1万円となります。
これでわかりますよね。

もっと極端な話、②を人が全く動かなくていい状態で実現できれば、
ほぼ「自動販売機」と化すわけです。
「人が動く必要があるのであれば人を雇えばいい」
という発想だけで考えると、
どんどん会社の利益率が下がっていく可能性があります。

社員さんが関わっている場合においても、
より少ない時間で粗利益をあげることを考えるべきです。
意識しなければいけないのは、粗利率よりも、
「時間当たり粗利益」なのです。
私たちの仕事(税理士)は基本的に労働集約型です。
人が動かないことには売り上げは一切発生しません。
時間は有限ですから、人が動くことで上げられる粗利益の天井は、
決して高くはありません。
だからこそ時間当たりの粗利益をあげることは、最も意識しているところです。

どの売上でどれだけの粗利をあげるのか。

どんな会社の中にも、売上の種類が一種類だけではないと思います。
何を販売するか、どんな目的で販売するか、などによって、
粗利益の率は大きく異なります。
ですので、損益計画の段階で「売上×粗利率=粗利益」と単純に計算するのは
ちょっと乱暴な話しです。
これでは売上を達成できたとしても、粗利率の低いものばかりで達成された場合、
粗利益が計画には全く届かなくなってしまいます。

ですので、損益計画段階において、
どんな種類の売り上げを、
どれだけ行って(つまりどれだけの労働量を投入して)、
どれだけの粗利益をあげるのか。
これを考えていきます。
売上のポートフォリオですね。
会社にとっての必要な粗利益があるのであれば、
その粗利益を満たすために
『どの仕事をどれだけ行うのか。』
この視点に立脚して、販売戦略を立てていきましょう。

ひたすら売上をあげることだけを考えていると、
最終的にどんどん会社が疲弊していくことがよくあります。
顧客満足が忘れ去られる傾向も強いため、
結局誰も幸せになりません。
こんな状態を望んで会社を運営している方はいらっしゃらないはずです。
売り手も買い手も幸せになれる会社を目指して、
粗利益のポートフォリオを考えていきましょう。

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