収益性向上待ったなし。

ここ数年の世の中の変化と動向で、
「企業の生産性を高める」ことが強力に求められるようになっているように感じます。
今日は、それらのことが小零細企業に与える影響について

多様な働き方

数年前から「働き方改革」というものが政府主導で行われるようになりました。
基本的には後ろ向きな響きしか感じられず、
安倍政権の終了とともに耳にしなくなった言葉でもありますが、
その趣旨や、やろうとしていることは、
国全体の方向性として、非常に正しいものであると思っています。

ただ国の方策として、もっと根本的かつ時間がかかる原因への対策が限定的で、
表面の部分だけ強制的に法律化するとで推し進めようとして、
いびつな形になっていいたイメージです。

この中の一つの目的でもある「多様な働き方」は、
コロナウィルスが蔓延することで、
期せずして大きく前進しました。
テレワークは少なくとも大企業では一般的になり(戻りつつあるのが気になりますが)、
小零細企業でも業種によっては実現しているところもあります。
web会議は完全に一般化しました。
オフィスなどの都市集中は徐々に薄れてきており、
地方への移住もこれまで遅々として進まなかったものが急に動き始めている感もあります。
3~5年ほどいっきに進んだ感覚です。

人生は仕事だけではありません。
人生を豊かにするための働き方改革が推し進められ、
多様な働き方が求められるようになりました。
時間の制約を受けない場所を選ばないそんな働き方です。
雇用される側が、このような多様な働き方を求めるようになるということは、
企業側にはその環境を整備することが求められる、ということです。
そして多様な働き方を推進するには、
全体の労働時間を短くすることが必要になりますから、
収益性の向上がセットになってまいります。

就職、というとかつては企業が人を選んでいた立場でしたが、
今は会社が選ばれる側になっているというイメージです。
ですから雇用される側から見て、
いかに働きやすく、魅力的な会社であることが、
よい人材を雇用し続けるうえで、絶対に必要なこととなります。
「うちには、いい人が来ない」となげいている人は、
「うちは魅力的な会社じゃない」と宣言していることと同じことです。
国が推し進めていることは、雇用される側が求めていることでもあるのです。
これらの法律整備・制度設計に文句を言うのではなく、
「それをクリアして魅力的な会社になってやろう」、
という思考をもっていただければと思います。
そのためには、収益性の向上が前提となってきます。

しかし、実は逆でもあって、
多様な働き方ができる環境を整備することが収益性の向上にもつながります。
実際にテレワークを整備することで効率があがった、という会社が
実際に多くあります(もちろん問題課題も内包していますが)。
雇用する企業側は、そのような前向きな意識で、
多様な働き方ができる環境を作り上げていきましょう。

同一労働同一賃金・最低賃金上昇

これも前述の働き方改革に関わることでもあるのですが、
「同じ仕事してるんだから、同じ賃金を支払え」
ってことです。
つまりパートさんとかの時給をもっと上げろ、ということですね。

これは雇用する企業側からすれば、
「時間制約もゆるくて、責任もゆるいんだから当然だろ」
という話しでもあります。
その気持ちも痛いほどわかります。
ただ、完全に同じ賃金を短時間労働の人にも支払いなさい
と言っているわけではありませんから、
責任感のある人とそうじゃない人がちゃんと評価されることで
公平な賃金格差が生まれるような仕組みを作るべきなんじゃないかな、と思います。

そして短時間労働かそうでないかは、
実はそれほど賃金格差を生み出す理由にはならないんじゃないかと思っています。
同じ仕事をして、同じ成果をあげているのであれば、
賃金は同じで当然です。
理屈で考えたときに、ある意味これまでが異常な形だったんです。
それが常識化されていたのです。
そしてその状況を適正にしようということです。
国が旗をふってそんなことを言い始めたものですから、
多くの労働者がそれに気が付いてしまったということです。

実際には「急にそんなことを言われても」、というところはありますよね。
でも確実にその方向へ進んでいきます。
人件費があがる、ということは、
その分収益性を高めておかないことには、赤字に転落してしまいます。
今、赤字の会社はもっと大変なことになってしまいます。
だからこそ経営者は、目の前の売上だけに囚われず、
収益性をあげていくことに、心血を注ぎましょう。

逆に、
「うちはパートさんも正社員も、時給ほとんどいっしょだから」と言えたら
それはカッコいい会社だろうと思いますし、
それが労働者から見た場合の会社のブランドとなっていくだろうと思います。
雇用される側はもちろん給与が高い側に流れますが、
ただそれだけで動くわけではありません。
「その会社が、いい会社なのかどうか」
これも非常に大きなポイントなのです。

最低賃金もこれからどんどんあがっていきます。
経営者からすれば非常に迷惑な話しですが、
1000円が最低ラインになる日はそんなに遠い日ではないと考えます。
ただ、同一労働同一賃金がある程度実現されていれば、
必然的にクリアされるものでもあります。
制度や法律に文句をいっても自社のためには1mmもいいことはありません。
法の穴をかいくぐろうとせず、収益性を高める方向で、
なんとかこれを実現していきましょう。

社会保険への全員加入

今は一定数以上の人を雇用している大きな会社にしか求められていないことですが、
これもいずれは小零細企業にも波及してくるものであると思います。
いつその日が来るかはわかりませんが、
そのように考えて準備しておくべきでしょう。

社会保険は企業にとって、極めて負担の高いものです。
最低賃金をあげたうえで社会保険への全員加入が求められるなど、
経営者側からすれば
「現実がわかってないにもほどがある!」
ということでしかないと思います。
実際現実がわかっていないんでしょうが(笑)。

しかし一方で、企業にとって鬱陶しいのは、
「130万円の壁」です。
現状、収入が130万円を超えると、
社会保険の扶養にはいることはできなくなります。
本人が社会保険に加入する条件を満たしていなければ、国民健康保険と国民年金に・・
ということになります。
これがネックとなって、多くの能力ある人が働くことをためらい、
大きな社会の損失を生んでいます。
企業側も、もっと働いてほしいけれども、
この130万の壁にはじき返されて、
結果短時間しか働いてもらえず人手不足になる、ということになっています。

働く側も働きたい。雇用側は人手不足を解消したい。
両社の思惑は一致しているけれども、
社会保険のせいでこれが実現できない、というおかしな状態です。
短時間労働の人も全員社会保険に加入する、という仕組みになれば、
この問題は解消します。
もちろん会社側の負担は増えますが、
優秀な人がたくさん働いてくれることは
それはそれでとてもありがたいことだろうと思います。

労働者不足の解消、という意味も含めて、
おそらくこの法整備は近い将来実行されることになるでしょう。
来るべきに日備えて、いまのうちに収益性をあげて
その費用負担に耐えられるようにしておきましょう。

どれだけ前向きに考えられるか。

いろいろとお話ししてきましたが、
「何勝手なこといってんねん!」とか
「お前は税理士なんだし関係ないよな」とか
いう思いを持たれた方もたくさんいらっしゃると思います。
それをわかったうえで、発信させてもらっています。

しかしここで私がこの制度に反対をして文句を言ったところで、
先ほどもお話ししました通り、1mmもいい方向には進んでいかないのです。
企業と一緒になって、
「本当、国って腹立ちますよね」で終わらせていると、
それは結局その会社を甘やかして、
その会社の存続を危うくさせているだけのように思います。

それこそ無責任。

顧問先企業をつぶさないためには、
ちゃんと現実を見据えて厳しいことを言わねばならないときもあるのです。
というかそういうことばかりなのです(笑)。

上記のような社会の流れは、もう変えることはできません。
国の持って行き方はともかくとして、
これらがちゃんと実現されることは社会全体にとっていいことですから。
だからこそそのために、
各企業が収益性を高めることが求められているんです。
後ろ向きにとらえるのではなく、
これが「企業価値を高める」、「魅力ある企業にする」チャンスだととらえて、
国の制度設計の上を行ってやりましょう。

そのために、なんとか、
もっと利益のでる会社にしましょう。
下請け体質から脱却しましょう。
ちゃんと価値のある商品やサービスを磨き上げて、
価格決定権を相手にゆだねるのではなく、
自らの手に取り戻しましょう。

そんな思いを強くする、今日この頃です。

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