売上の柱を複数持つ。

会社内の売上を支えている柱が一本だけだと、心許ないものです。
業界や現状の取引環境にもよりますが、
売上の柱を何本か立てておくに越したことはありません。

春日大社の柱。

未来創造マネジメントの事業の柱

私は税理士業・コンサルタント業なわけですが、
売上の柱を複数持つことを意識しています。
その一方でやらないことにしている仕事もありますが。

自社で言うと、これから柱に育てようとしているものも含めると、
・税務顧問
・コンサル顧問
・セミナー事業
・不動産活用事業
といった感じです。
今後小さい柱も含めるともう少し増えていくかもしれません。

税務やコンサルの業務に付随して
相続や事業承継(M&A)も業務として行っていますが、
積極的に伸ばしていかない、という意味では事業の柱ではありません。
ただこれらの業務は税務顧問やコンサルと地続きの仕事ですので、
この業務が必要となったときに他の人に任せることができないため、
必要な研鑽をし、事業の一部としています。
しかし「柱」とは考えていないということです。
柱ではありませんから屋台骨を支えているわけではありません。

逆に補助金については、ノウハウがある人がやる方が採択率もあがるでしょうし、
個人的にあまり好きな仕事ではありませんので、
必要な情報提供と申請書作成上のアドバイスはしますが、
仕事として引き受けないことにしています。

つまり必ずしも私がやる必要がない仕事、ということです。

税理士にもいろいろで、
完全に顧問先の業種を絞り込んで(例えば医業専門、など)やっている事務所もあれば、
業務を絞り込んで(例えば、相続税専門、など)やっている事務所もあります。
このようにすれば、ノウハウは間違いなく蓄積され、
強みをどんどんと尖らせることができますから、
事業のあり方としては大切なことだと思っています。

しかし売り上げの柱をあまりに一つに集約させてしまうことは、
基本的にオススメしておりません。
ある程度売り上げの柱を複数持つ、ということを推奨しています。

売上の柱が一つであると危険

それではなぜ、柱を複数持つことを推奨しているかというと、
一つであるとリスクが高いからです。
私の場合はそれに加えて、
一つの仕事ばかりやっていても面白くない、ということもありますが。

いずれにしても、一種類の売上に依存することは危険です。
なぜなら、外部環境に振り回されてしまうから。

ある一つの道を極めてきたとしても、
その道が事業としてある日突然(いきなり明日から、ということはないでしょうが)
なくなってしまうことはあります。

その多くは外部環境の変化によるものですが、
例えばコロナウィルスの蔓延でインバウンドに依存する観光業界は
限りなく売り上げがゼロに近づいてしまいました。
これについては、感染拡大が落ち着く日が来たらある程度もとに戻る、
という考え方もできますが、
極端な話し、感染拡大以前日本に相当多くの観光客が来ていたお隣の某国が、
「来年から観光目的で日本にいっちゃダメ」と政府が決めたら、
インバウンド業界の売上の1/4以上が吹き飛んでしまうのです。

ですから、自社の業界ではどんなリスクが考えられるのか、
それを回避ためにはどんな準備をしておく必要があるのか、
考えておく必要があると思うのです。

そう考えるとやはり、ある程度売り上げの柱は
いくつか持っておく必要はあるのではないかと思います。
それも、既存の重要な柱と同時に吹き飛んでしまうものではない柱を、です。

先ほどの例は極端なものでしたが、
通常外部環境の変化による業界構造の変化には数年かかります。
しかしその変化に気が付いてからその売上がなくなるまでの間に新たな事業を立ち上げているようでは
間に合わない可能性があります。

ですから、次の時代を担う、という意味でも
意識的に新たな売り上げの柱を生やして育てておくことが必要です。
どんな事業でも、20年後に同じ仕事がそのまま残っているとは到底思えません。
その時代に合わせて徐々に既存の事業を変化させるという形での対応が
最も大切ですし、王道ですが、
それとは別に急激な変化に対応できる準備をしておきましょう。

せめて特定の取引先に依存しない

新しい事業を始めるといったって・・
という人もいらっしゃるでしょうが、
なかなかそれが現状困難な方は、
せめて特定の取引先に依存するのはやめましょう。

ほとんどの会社が、たとえ利益が出ているとしても、
粗利益の10%~15%の経常利益が出ていれば優秀な方だろうと思います。
しかしその状態で、一つの取引先に粗利益の25%依存していたとすると、
その取引先との取引がなくなった瞬間赤字に陥ってしまいます。

特定の取引先が50%以上を占めてるとなると、
それがなくなってしまうことは存亡の危機です。

だから現状特定の取引先に依存してしまっている会社は、
それを徐々に解消する努力をしましょう。
急にはムリだとしても、
中長期的には一社当たりの依存度を粗利益の10%以下に抑えたいものです。

また、同じ事業内容でも、その販売チャネルが異なれば、
それは複数の柱に準ずるものと考えることができます。
商品を店舗でも販売するが、ネットでも販売する、というのが
その最もわかりやすい例です。

このように「事業」「商品」「取引先」「販売チャネル」などの軸で分散をさせていくことで、
リスクヘッジが可能となっていくのです。

売上の柱を立てるなら、今の柱の近くに立てる

売上の柱を立てる、と言っても、
思い付きでなんとなく事業を始めればよい、ということではありません。
しかもその一つ一つがまとまったイニシャルコストを必要とする事業であるならば、
それ自体がリスクでしかありません。

事業領域の基本は「強み」です。
複数の事業の柱を立てるにしても、
この「強み」から離れるようなことを行ってはいけません。

基本的な考え方は2つで、
一つは、既存事業の強み・ノウハウをそのまま転用・活用できる事業であること。
もう一つは既存事業と相乗効果のある事業であることこのいずれかであること。
これらが大切だと考えます。

小零細企業はその経営資源も脆弱ですから、
いろいろあれこれ手を付けると力が削がれていく一方です。
しかし今の強みやノウハウをそのまま活用できる事業であれば、
強みで勝負ができるということになりますし、
相乗効果のある事業であればそれを立ち上げることで既存事業も成長し、また
既存事業の存在が新規事業の成長を促進させてくれる、
ということになります。

今の事業の柱と関係のないところに、
いきなり柱を立ててはいけません。

私の会社の「不動産活用事業」も、
一見他の事業と関係のない柱のようにも見えますが、
これまでの顧問・コンサル業務で蓄積してきた不動産知識と財務分析管理能力、
そして事業承継ノウハウを資源として立ち上げようとしているものであって、
決して既存の柱から離れたところにあるものではありません。

新しい事業は、既存の柱のすぐそばに。

これを意識しながら、
新しい売り上げの柱になり得る事業を常に意識しながら
経営していただければと思います。

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