相場で価格を決めない。

皆さんは自社の商品の価格を決定するときに、
どのように価格を決めているのでしょうか?
このとき「相場」というものが見え隠れしますが、
相場でもって価格を決定してはいけません。

相場で決めてはいけない理由。

値段提示をするときに、
「相場より高くない?」とか言われることがあると思います。
その言葉に負けて、値引きをしてしまうこともあるでしょう。

でもよく考えていただきたいのは、
自社が提供しているものは、その商品そのものではなく、
商品を通して自社が届ける「価値」であるはずです。
自分売っているものは、
商品としては同じものであったとして、
売り手がそもそも違うわけですから、
提供できる価値は変わってきます。
相場で決める、ということは、みずから
「よそと同じものを同じように提供しています」
と宣言しているようなものです。

ですから相場で価格を決めると、
結局は価値に差がない価格競争に飲み込まれることになります。

こうやって「相場」という言葉を持ち出されるということは、
少なくとも自社の提供しようとしている自社独自の価値は、
その相手には正しく届いていません。

もちろん、同じものを売る以上、
ある程度相場の呪縛にとらわれてしまいます。
ウェブサイトで商品販売している場合など、
価格comとかで価格比較されてそれで一発ですから。

しかしサービスであれば、
それはそれぞれ違ったものを売っているはずですから、
そこには明確な相場感はないはずです。
売っているものが同じものであったとしても、
それが顧客に届くまでに自社なりの価値が付加されて提供されているでしょうから、
相場感だけに引っ張られてはいけません。
付加されている価値がないということであれば、
その「価値」がないことが問題であるという意識を持ちましょう。

なぜ価値に対する値付けができないか

とはいえ、自社の商品の値決めをする際に、
「原価」と「相場」だけで判断してしまう人が多いかと思います。
先ほどお話しした通り、
それは価格競争に飲み込まれるだけの消耗戦になるのがわかっているのに、
なぜそんなことになってしまうのでしょう?

それは自社の商品の価値を、正しく理解していないからです。
100年企業が「自分の会社は古いだけ」と言っているのに驚いたことがあります。
100年も続いてきているからには何かちゃんと理由があることだろうと思いますし、
新参企業が同じところに辿り着くのに100年かかるわけですから、
それは明確な強みなのです。
もちろん商品そのものが一定基準以上のものであるということは大前提ですが、
その水準をクリアしていれば、
それを100年企業が作っているというだけで価値があるはずです。

それほどまでに、自社の強みが見えていない。
大企業でもそうですが、
特に小零細企業はいかに強みにフォーカスして戦うかが勝負です。
自社と自社商品の強みをきちんと知ることから、まずは始めましょう。

そして顧客の求めている価値を定めていることから
逃げない、目を背けないことです。
誰しも、顧客から「高いなぁ」とは言われたくないものです。
たまに「そう言われたら快感」という変態もいますが(笑)。
しかし多くの人は結局相場で価格を決定することが楽なので、
そこに逃げてしまいがちです。

皆さんの作っている商品や提供しているサービスは
その程度のものなのでしょうか?
「ほかと一緒にするな!」くらいの気持ちをもっておきましょうよ。
そしてそう思えるだけのプライドをもって
商品やサービスを提供し、独自性を磨いていきましょう。
顧客から「相場」という言葉を持ち出されたら負け、
というくらいの矜持が必要なんじゃないかと思います。

でもそのためには、
商品やサービスの価値が顧客に正しく伝わることが絶対に必要です。
その価値を顧客に伝えるために、
価値が整理され、
言語化されていることが必要です。

あなたの商品サービスがほかと違うところを10個あげてみましょう。
どんな経緯とストーリーでその商品が生まれたのか、整理しましょう。
小売業で、ほかでも同じ商品を売っている場合でも、
なぜあなたはその商品を自分のお店で置いているのか、考えてみましょう。

逆に言うと、商品開発が思いつきであったり、
特になんのこだわりもなく商品ラインナップがなされているのは、
いかんということですよね。

顧客と向き合う

稲盛和夫氏は言いました。
「値決めは経営」と。

言葉尻だけとらえると当たり前のことですが、
それだけ真剣に、値決めという部分に向き合っているか?
ということを問いただす言葉です。
「顧客の喜ぶ最高の値段をつけよ」と言っています。
言葉だけで言うのはとても簡単なことだということはよくわかっています。
自分が実際それが実現できているかというと、
決してそうではないかと思います。
しかし、実際はどうあれ、
その意識をもって値決めをしようとしているか、ということが
まず大切なんだろうと思います。
少なくとも私は安易に相場に逃げるような価格設定はしていません。

値決めと向き合うには、
顧客と向き合う必要があります。
自社のターゲットと向き合う必要があります。
マーケティングの根本は、
自社の届けたい商品(価値)を、
その価値を正しく理解してくださるターゲットに確実に届ける、
ということに尽きます。
ですから、
「ターゲットがどう感じてくれるか」、
その一点を突き詰めて考えてみましょう。

わからなければ、市場調査です。
大企業みたいに、そんな大掛かりでなくて構いません。
身近な人で、自社のことを良く分かってくれている人を捕まえて
実際に聞いていけばいいのです。
人によって驚くほどの差があると思います。

半ば余談ですが、私は燻製を作るのが趣味で、
たまに燻製を作っては自分で食べるだけでなく、人にふるまったりしています。
この中で燻製卵が我ながら絶品で、評価も高いのですが、
一度いろんな人に、
「これ1個いくらなら買う?」
と聞いてみたことがあります。
いろんな人がいましたが、そのうち一人、
「300円」という値段を付けた人がいて驚きました。
さすがにそれはないかな、と(笑)。

しかしそれくらい、人が価格に対して考えていることは、
人それぞれだということです。
「相場」というのがどれほど空虚なものであるかということが、わかると思います。
その中で最も高いものを選ぶ、ということではなく、
「この価格であれば理想とするターゲットのほとんどが、喜んで買ってくれる」
というポイントを探しましょう。

逆にどれだけ自分が「うちの商品は価値が高い」と言い張っても、
顧客やターゲットがそう判断しなければアウトです。
価格は、世間一般が決めるわけでもなく、
独りよがりに決めるものではなく、
「自社と顧客・ターゲットの接点で決まる」、ということを認識したうえで、
「価格を決定する」ということにもっと真剣に取り組みましょう。

これが会社の利益を決定づけるのです。
商品を買う側は、値段が安ければ安いほど喜ぶのは当たり前です。
「あらゆる消費者の喜び」を目指していると、
会社は赤字になって継続できなくなってしまいます。
「大切な顧客の喜びと、自社の利益の最大化」を目指して、
改めて「価格」というものに向き合っていただけたらと思います。

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