会社の価格決定権は大切です。
特に小零細企業においては。
会社の生殺与奪を、他人に握られてはいけません。
価格競争では勝てない。
中小企業、特に小零細企業は、
その力関係から、大きな会社に買いたたかれて、
極めて安い価格での取引を求められることがあります。
私の知っている某食品メーカー(歴史ある、小企業です)、
相当昔から大手スーパーへの商品の卸が
その売上の大きな柱になっています。
当然儲かりません。
なぜ儲からないかと言うと、
極端な価格競争にさらされるからです。
もし価格競争に巻き込まれないとしても、それは
「特定のバイヤーに気に入ってもらった」などという、
極めて不安定なものだったりします。
バイヤーなど、結構頻繁に配属が変わりますから、
全然考え方の違う担当者にすげ変わったら
その瞬間売り上げは激減します。
取引先の品格にもよりますが、
大手スーパーも基本的には自社の利益を最優先に考えますから、
仕入金額をとにかく抑えようとします。
これはある意味、当然の対応とも言えます。
そしてそんな価格競争の土俵の上では、
高額な設備投資と大量生産を可能とする大企業に
太刀打ちできるわけがありません。
いい商品を真面目に作っている会社が
そもそも勝負できる土俵ではないのです。
価格決定権もほぼないのと同じ。
どれくらい買ってもらえるかは、相手の理不尽な思い一つに振り回されてしまいます。
この食品メーカーにとって、そんな事業の延長線上に、
将来の成長・発展があるとは到底思えません。
というか、ありません。
自分で価格の決められる場所へ
今の、
・価格決定権がない
・大企業との過当競争
という事業の延長線上に未来がないのであれば、
即刻事業の方向性を変更しなければなりません。
大企業の下請けに甘んじているという基軸から
脱却しなければならないのです。
そこで知恵を働かせず、
「経営陣の労働時間を長くすることで解決する」
というのは何の解決にもならないどころか、
着実にその会社の「死」へと近づいて行っているのです。
大企業ですら、そのメーカーからしか購入せざるを得ないような特殊な技術や、
他社に真似できない、しかも代替されない技術を有しているのであれば話しは別ですが、
そんなメーカーはごく稀だろうと思います。
もちろん自社の技術を磨き続けることは大切ですが、
そこまでの技術力に至っていないのであれば、
大企業の下請け体質から脱却し、
独自性の強い商品を作り上げて、
その価値を「価値あり!」と理解してくださる消費者に直接届ける、
ということを考えなければなりません。
この事業のあり方であれば、
最終的には消費者が買ってくださるかどうかという問題はもちろんありますが、
価格決定権は間違いなく自分の手元に取り戻せます。
目の前の経営という問題がありますから、
今すぐに下請けの売上をゼロにして完全シフト、
ということはムリがありますが、
まずは一つ、
直接消費者に訴えかける自社商品を開発して、
それを直接消費者に向けて販促し、
販売することを始めましょう。
実際にやってみないことには、
どんなものが受け入れられるのかわかりませんし、
これまでの企業の下請け体質が
すぐに転換できるわけではありません。
しかし、この一歩を踏み出すことで初めて
わかってくることもたくさんあるはず。
そして自分たちの作りたいもの・売りたいものを作って売って、
お客様が買ってくださって喜んでくださる。
その体験が大切です。
利益率が高まると、全てがいい方向へと転がる
しかしそうは言っても、
これまでずっと続けていた企業体質から抜け出すのは、
なかなか苦労がいります。
人間、先のリスクが見えていたとしても、
急激な変化は嫌う生き物ですから、当然です。
そしてこれまでは大企業がまとめて商品を買ってくれてたわけですから、
それを直接消費者への販売にシフトすることは、
売上・販売量の減少ということにつながり、
それに対する不安というのがどうしても生まれてしまいます。
しかしここは要計算です。
今まで1個当たり150円の原価がかかるものを180円で大企業に卸していたとします。
1個当たりの粗利益は30円です。
しかし付加価値の高い商品を開発して、
1個当たりの原価が同じ150円であるものを450円で販売したとします。
1個当たりの粗利益は300円となります。
1個当たりの粗利益は、一気に10倍になるのです。
これまで1億8000万円の売上を上げていたとしたら、
同じだけの粗利益を上げるのに必要な売り上げは
約4,500万円程度で済むという計算になります。
極端な話し、販売数量が1/4になったとしても、
同じ粗利益があげられるのです。
そしてそもそも販売数量が1/4であれば、
機械による自動生産に頼らない製造をしているのであれば、
製造にかかる時間も1/4で済むことになります。
すると当然人件費から何から、
いろんな経費が浮いてきます。
組織全体が小さくて済みますから、
その分そこに経営者が注がないといけない手間も気苦労も大きく減少します。
そうして経営者は、余った時間と心のゆとりを、
またさらに生産的な方向性へと活かすことができるのです。
現状、利益率の低い下請け仕事でアップアップしている会社は、
えてして時間に追われているものです。
なぜならたくさん働くことで稼がなければいけないから。
しかしそんな中でもなんとか時間をひねり出して、
その負のスパイラルから抜け出す一歩を
せひ踏み出していただけたらと思います。
作るものも、その値段も、
他人の言いなりにならざるを得ないような事業よりも、
自分たちの作りたいものを作り、
それを売りたい相手に売って
喜んでいただいて儲かる方が、
絶対に楽しいですよね。
ですから「そんな時間がない」ではなく、
そこをなんとか、
自社の将来のために今を踏ん張っていただきたいと思うのです。