大きな会社であれば、いろんなことができます。
しかし、小さな会社には小さな会社なりの魅力がたくさんあります。
小さな会社は非効率なのか。
何年か前に、
「日本には小さな会社が多すぎるから非効率」
という議論がありました。
確かにそういう側面はあります。
同じ仕事をしているいくつかの小さな会社が一つに合わされば、
一つの会社であったときは導入できないような設備を導入することができて、
効率を高めることができるかもしれません。
小さい会社の中には経営能力が低くて、あまり儲かっておらず、
効率化を実現するための仕組みができあがっていない、
という会社も確かに多くあります。
それはそれで事実なので、
謙虚に受け止めなければいけないことだろうと思います。
しかしこれらは、ほんの一部を切り取った、多少乱暴な議論です。
小さい会社の中にも、素晴らしい技術をもち、
収益力も高い優れた会社はたくさんありますし、
収益性を高めるために日々経営努力を重ねている経営者もたくさんおられます。
逆に大きな会社だから効率的かというと、
それは全くそうでもないかと思います。
組織が大きくなった分融通が利かず、
極めて非効率なことになっている組織は世の中にゴマンとあるだろうと思います。
大きな会社に勤めている知り合いの話しを聞いていると、
「大きな組織になると、そんなちょっとしたことも変えられないのか、大きい会社も大変だな」
と考えさせられます。
大きい会社も小さい会社も、結局はその会社それぞれ。
大きい小さいが良い悪いではなく、
良い会社・良くない会社があり、
そして良い経営者・良くない経営者がいるだけなんだろうなと思います。
そして小零細企業の収益性の低さは、
自己責任の部分ももちろんありますが、
大企業の効率性・収益性のしわ寄せが来ていると感じることも多々あるのです。
小さいと、バランスを崩しにくい。
経営というものは、「時間軸と断面」で、できあがっています。
経営の全体像、という断面があり、
それが時間軸のレールの上を転がっているイメージです。
この「時間軸のレール」とは、
経営者が指し示した、経営の方針や方向性です。
この方針に従った時間軸の上で、
時の経過とともに刻々と変化する「断面(=経営の全体像)」を、
いかにバランスを崩さないようにコントロールし、
時間軸のレールの上をキレイに転がしていくのか。
これがマネジメントなのだろうと思います。
小さい会社は、この断面である経営の全体像そのものが小さいので、
バランスを崩しにくく出来ています。
崩れかけてもすぐに立て直しが可能です。
しかし大きい会社は、レールの上を転がる玉の大きさが遙かに大きく、
キレイにレールの上を転がすのは至難の業ですし、
一度崩れてしまうと、これを立て直すのはもっと大変です。
これが、小さい会社・組織であることの、大きなメリットです。
小さいと、やりたいことができる。
どんな事業を展開していくか、ということを考えたときに、
それは、
「社会が求めること(使命)」
「やりたいこと(ビジョン)」
「できること(能力)」
の接点に生まれます。
社会に求められて、それを実現する能力があったとしても、
それがやりたくないことであれば、それはビジネスにはなりにくいのです。
なぜなら、そこに情熱を注ぐことができないから。
組織が小さければ小さいほど、そこに関わる人数は少ないですから、
その分自由度が高まります。
それは経営者が好きなことを好き勝手にやる、という
悪い意味でのワンマンとは意味合いが違います。
小さな会社であると、
その事業に対する経営者の思いと情熱を、
直接組織の隅々に伝えるコトができるので、
組織全体の共通認識もできあがりやすく、
共感も得られやすいのです。
極端な話し、一人の組織であれば、
自由自在にやりたい事業を行うことが可能です。
小さい会社の経営者は、自分が本当にやりたいと思っていることを
経営の中で実現させることができるという特権を有しているのです。
もちろん事業である以上、それはやりきる必要があります。
やりたいことに次々と手を出して、
中途半端にほったらかすということとは全く次元が違う話しであるということは
ご理解いただけると思います。
小さいと、全部の仕事ができる。
これは経営者ではなく、そこで働く人たちにとってのメリットです。
大きい会社では全体の事業そのものが大きいため、
その全体を一人の人間で抱えることは、まずできません。
結果、全体のうちの「部分」をその役割として担うこととなります。
大きな組織の中で、この「部分」としての役割を果たすことに
仕事の楽しみを感じる人ももちろんおられますから、
それ自体を良くないと断じているわけではありません。
ただ少なくとも、
「全部の仕事をすることができない」
というデメリットがある、ということです。
小さい会社は人的資産が乏しいですから、
必然的に一人で複数の役割を担うことになります。
それは小さい会社のデメリットでもあるのですが、
逆に考えると、
一つの企画・プロジェクトを、その隅から隅まで体験することができるのです。
これは大企業においては、まずできることではありません。
そしてこの「隅から隅まで体験した」という事実は、
後々活きてくる大きな経験になるだろうと思うのです。
小さいと小回りが効く。
これは小さな会社の、大きな大きなメリットです。
前述の「レールの上をバランス良く」という話しに重なる部分でもあるのですが、
小さな会社は動き出すのも止まるのも、
とても機敏に行うことができます。
大きな会社では、一つ大きなプロジェクトを動かそうとすると、
極めて多くの稟議が必要となりますし、
経営者の鶴の一声だけで、急に動き出すということはできません。
しかし小さな会社は
「こんなことをやりたい」と経営者に直接伝えて「OK」がでれば、
その瞬間から動き出しますし、
経営者が「この方向へ!」と旗を振れば、
即座にその方向へと転換することができます。
また止まるのも同じ事で、
今行っていることを続けることがリスクであると経営者が判断した瞬間、
その瞬間、急停止できます。
大きい会社で行っている事業や企画は巨大な鉄球のようなものですから、
それを止めようとしてもしばらくは惰性でズルズルと動いてしまいますし、
それをムリに急停止させようとすると、
そこに何がしかの歪みや犠牲を伴います。
社会環境の変化が激しいこのご時世、
小回りが効くことはとても大切なことです。
そして小さい会社は事業自体がニッチであっても充分に成立しますから、
非常に細く変化しやすい細かい道を、
縫うように進むことが出来ることができます。
そしてこれこそが、小さい会社の生きる道なのではないかと思います。
こういった状態であることが私は好きですので、
私はこれからも、できるだけ小さな組織であり続けようと思っています。
そして私が事務所を大きくしないのは、
こういった理由からです。
もちろん自社だけで出来ることは制限されますが、
そこはその都度、社外の協力者と共に進めていくことでクリアできます。
これらが小さな会社のメリット。
これが全てというわけではありませんが。
しかし小さな会社であったとしてもこれらのことが実現できないような組織なのであれば、
それは小さい会社であることの優位性をまったく享受できず、
デメリットだけがそこに残ります。
ですから小さいからにはしっかりと、
小さいからこそのメリットを活かすことのできる組織である必要があるのです。