貸借対照表の見栄えを少しでも良くするために。
今日は少しだけ具体例です。
概論(昨日のブログ)はこちら↓
https://miraisouzou.jp/look_better_bs/
経営セーフティ共済は資産計上する。
経営セーフティ共済をご存じでしょうか。
今残されている、極めて数少ない効果的な節税(利益の先送り)のうちの1つです。
基本、「節税」というのは経営判断のジャマになりがちですので、
節税自体、私はあまり好きではありません。
このブログをいつも読んでくださっている方はよくご存じだろうと思いますが。
しかし、キャッシュが潤沢にある場合に限って、
これは私の方から敢えてオススメする場合もあるようなものです。
経営セーフティ共済は、別名「中小企業倒産防止共済」といい、
この共済に掛け金を支払っていると、
取引先が倒産して売掛代金や受取手形が焦げ付いてしまったときに、
無担保無保証人で掛け金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入ができるというものです。
取引先の倒産による連鎖倒産を防止するのが、この共済の本来の役割なのです。
しかしこの共済にはまた別の特徴がありまして、
掛け金の全額を損金(経費)とすることができるうえ、
掛けてから40ヶ月以上経過していれば、基本的に元本割れせずに解約返戻金を受け取れる、
という代物です。
つまり経費(損金)に落としつつ、
その全額をそっくりそのまま簿外によけておくことができるのです。
支払ったときは全額経費(損金)になるわけですから、
解約してお金が戻ってきたときには、
それは当然、全額雑収入として利益に加算されます。
しかし解約はいつでもできますので、保険のように
「このタイミングで解約しないと不利」などということがないため、
自由度が高いのです。
この支払は年間240万円が上限で、累計で800万円までの枠を使うことができます。
で、今回は節税の話しがしたいのではなくて、この会計処理についてです。
この掛け金の支払は全額経費にできるので、
通常何も考えずに処理をすると、
支払った金額を全額普通に経費に落としてしまいます。
しかしこれにはまた別の処理の仕方がありまして、
支払った金額を経費にするのではなく、
「保険積立金」
として、資産に計上することが可能なのです。
「そんなことしたら、節税にならないじゃん」
と思われるかもしれませんが、そんなことはなくて、
経費に落とさず資産として計上した場合には、
法人税の申告書で税金計算をするときにその金額を利益から減額する、
ということができるのです。
つまり、税金の計算上は結果として経費に落としたときと同じ効果を得ることができます。
さて、ここで本題。
貸借対照表を良く見せるためには、
①経費として落とす
②資産に計上する
このどちらを選んだ方がいいか、わかりますよね?
答えは当然②です。
経費に落とさないわけですから、
その分利益は増えて、自己資本が増えます。
自己資本が増えると自己資本比率があがりますから、
貸借対照表は明らかに見栄えがよくなります。
仮にMAXの800万円まで掛け金を支払ってきた場合には、
これを全額経費にしている場合とそうでない場合とでは、
自己資本に800万円もの差が生まれてくるということです。
小零細企業にとってはバカにできない金額ですよね。
役員借入金は固定負債に。
役員借入金とは、会社が役員(主に社長)から借りているお金のことをいいます。
金融機関からの借入とは異なり、
役員つまり経営者自身から借りているわけですから、通常、
「あるとき払い」
となります。
経営者自身の生活が困っていない場合には、特に返済されることなく、
ずっと会社の中に留まり続けることも少なくありません。
というか、そういったケースの方が多いくらいです。
問題なのは、この「役員借入金」が「短期借入金」と同じ扱いとして、
流動負債に入っているB/Sをたまに見かけるのです。
おそらく最初は
「すぐに返してもらおう」という気持ちもあって、
流動負債に入っているのかもしれません。
もしくは税理士事務所が何も考えていないか、どちらかです。
前述の通り役員借入金は
「基本的に、あるとき払い」
なわけですから、
明らかにこれは固定負債の類いであって、
「長期借入金」として取り扱うことは何ら問題がありません。
これを流動負債に入れているとどういったことが起こるかといいますと、
流動比率・当座比率が悪化するのです。
流動負債を分母として計算するわけですから、当然そうなりますよね。
当然のように固定負債にもっていけるものを、
流動負債として処理するのは、
B/Sの見栄えの問題としては、とてももったいない話しです。
役員借入金はたとえ「すぐに返してもらう」つもりであったとしても、
固定負債にいれましょう。
だって、現実としてはいつ返済できるものなのか、わからないわけですから。
圧縮記帳は購入資産と相殺処理しない。
圧縮記帳、皆さんご存じでしょうか?
これは少しマニアックです。
プロからしたら当たり前のものなのですが。
一応簡単に説明しますが、
このブログはあくまで小零細企業の経営者がターゲットで、
細かい税務の解説をすることが目的ではありませんから、
この解説を読んでもよくわからなければ、スルーしてください。
そして顧問税理士にでも聞いていただけたらと思います。
例えば、今コロナの影響でいろんな補助金がありますが、
事業再構築補助金で2000万円の補助を受けて、
設備投資として3000万円の建物を新築したとします。
これ自体は非常にありがたいことなのですが、
これを普通に会計で処理すると、とても理不尽なことが生じます。
補助金2000万円はもらったお金ですから、当然雑収入などとして収益に計上されます。
しかし購入した建物は1年で経費になるわけではなく減価償却を行いますから、
これが鉄筋コンクリートの事務所建物であったとしたら、
耐用年数50年となって、1年で60万円しか経費に落ちないのです。
その差額1940万円は税金の対象となり、
25%~30%以上(およそ600万円!)が税金として持って行かれてしまいます。
しかしもらった2000万円は当然全額建物代金に消えていますから、
その600万円もの税負担が大変なこととなってしまうのです。
そこでこのままではあまりに理不尽なので、
これを解消しようというのが、「圧縮記帳」です。
圧縮記帳を使うと、先ほどの例でいうと2000万円は収入として計算しないで、
購入した建物代金と相殺処理を行うことができるのです。
するとどうなるかというと、
まず2000万円は収益としては計上されません。
逆に建物は1000万円(3000万円-2000万円)となりますから、
減価償却費は20万円となります。
2000万円を収益にしない代わりに、
この先50年にわたって経費とされる減価償却費が2000万円減少する、ということです。
つまり、2000万円の利益をこの先50年にわたって繰り延べているという効果が生じます。
この圧縮記帳の処理をちゃんと行っているかというのは当然として、
本題はこの会計処理です。
上記の通りの処理だと、収益はあがらず、建物の金額がその分減る、ということになりますが、
これを、
「2000万円はそのまま収益として計上しつつ、建物の金額もそのまま置いておく」
ということができるのです。
その上で、先ほどのセーフティ共済同様、
法人税を申告書で計算するときに、その分利益を減額するということで、
税金については建物と相殺処理した場合と同じ効果を生み出すことができるのです。
具体的な手段としては、積立金または準備金として積み立てるという会計処理になるのですが、
それは理解いただかなくて問題ありません。
ポイントは、
補助金の分はちゃんと利益として貸借対照表に残りますから、
その分自己資本が増えるということ。
すると自己資本比率がその分上昇して、B/Sの見栄えがよくなります。
先の例だと2000万円が自己資本になっているかそうでないか、ということですから、
その差は歴然です。
ただ税理士事務所としては相殺処理した方が圧倒的に処理が楽チンなので、
積立金処理しないで、相殺処理してしまっている事例をとても多く見かけます。
ただこれはB/Sの見栄え上、大変大きな差になってきますから、
ぜひ「圧縮記帳」という言葉だけは覚えておいてください。
そして補助金で資産を購入したときに、
「相殺処理じゃなくて、積立金処理で!」
と税理士事務所に訴えてください。
それで理解できない税理士はいないと思います。
もしいたら、即刻クビです(笑)。
圧縮記帳が使えるのは、補助金のほか、次のようなケースで固定資産を取得したときです。
・火災などの災害でおりた保険金で固定資産を購入した。
・固定資産を、ほかの固定資産と交換した。
・土地建物などを売却して、その代金で他の土地建物を購入した(買換えた)。
・土地建物が収用がかかって、その補償金で土地建物を購入した(収用買換え)。
これらの場合には要注意。
まずは圧縮記帳、そして積立金処理。
これを意識しておいてください!
以上、長々となりましたが、B/Sの見栄えを良くする具体例でした。