貸借対照表を良く見せる。

貸借対照表を少しでも良く見せる方法は、あります。
粉飾する、という意味ではありませんよ。
合法的に、です。
今日は基本的な考え方をお話しまして、具体例は明日以降のブログにて。

貸借対照表を、少しでも見栄え良く・・。

基本的な方向性

貸借対照表は、会社の財産状態をあらわす表です。
右側はお金の調達方法(負債と純資産(資本))、
左側は、そうやって調達したお金がどのような財産として運用されているのか
が記載されています。

資産は、流動資産、固定資産、繰延資産に分けられ、
負債は流動負債、固定負債にわかれます。

そして、この貸借対照表の数値から、いろんな指標が計算されて、
金融機関などはその指標の数値でもって、
その会社の財産状態が安全なのかそうで無いのかを判断します。

ですから、事実上まったく同じ財産状態であったとしても、
貸借対照表上の表現が変わると、
金融機関の評点が変わる恐れがあるのです。

金融機関の担当者が気をきかせて、良く見えるように変換してくれればいいのですが、
金融機関の担当者も、それほどヒマではありませんし、
ヒマであっても仕事熱心でない人もいますし、
そもそも、勝手に決算書を解釈できるほど
その会社の会計をよくわかっているわけはないですから、
提出した決算書は、銀行のシステムにそのまま入力されると考えておくべきです。

だからこそ、決算書でどのように表現するか、
というのは意外と大切なのです。

基本的な方向性としては、
①純資産が増えるようにする。
②資産のうち流動資産にできるものは、そうする。
③負債のうち固定負債にできるものは、そうする。
この3点です。

①純資産が増えるようにする。

これはもちろん、粉飾をしてください、と言っているのではありません。
そんなことは、絶対にしてはいけません。

粉飾は麻薬みたいなモノで、
最初は軽い気持ちで始めてしまいますが、
どんどん抜け出せなくなっていって、
最後には身を滅ぼしてしまいます。

しかし、純資産を増やすためには、
利益を増やさなければいけません。
これを粉飾でない形で行う必要があるのです。

このときの注目ポイントは、
「経費に計上しても、資産に計上しても、どちらでもいいもの」
です。
経費に計上しないで資産に計上していいのであれば、
その分経費は減少しますから、
結果として利益が増えます。
利益が増えると、資産全体に占める純資産の割合が高まります。
この割合のことを「自己資本比率」といいます。
貸借対照表から算出される重要な指標です。

したがって、この割合を高めることができるのであれば、
それに越したことはありません。
しかし経費でなく資産に計上する(=利益が増える)ということは、
多くの場合税金が増えるということになってしまいます。
当然ですよね。
ですから、そこをどう考えるのかは、
経営者の方それぞれの判断によります。

ただ、極めて数は少ないですが、
貸借対照表の表現上は資産に計上するけれども、
税金の計算上経費として認識してもらえるものがあります。
そういったものについては、積極的に資産計上していくべきでしょう。

②資産のうち、流動資産にできるものは流動資産へ

流動資産とは、
「短期的に(だいたい1年以内に)現金かされると考えられるモノ」
「1年以内に経費に変わるもの」
をいいます。
これに対して固定資産は、
なかなか現金化することが難しいものです。
現金化が難しいものより、比較的早く現金に変わってくれるものが多い方が財産状態がいい、
ということは、おわかりいただけますよね。

ここで「流動比率」「当座比率」という大切な指標が出てまいります。
流動比率は
「流動資産/流動負債」
当座比率は
「当座資産/流動負債」
です。

これらは算出された数値が高ければ高いほど、
評価が高くなるものです。

例えば流動比率が100%、ということは、
「1年以内に支払う必要のある負債を、1年以内に換金できるものと同額」
という状態です。
つまり、
「すぐ返さないといけないものが、すぐ返せる状態」
ということですね。

当座資産とは、
流動資産のうち、換金が容易なもの、例えば、
・現預金
・売掛金
・受取手形
・短期貸付金
・未収入金
などです。
在庫は売れれば現金になりますが、
必ずしも売れるとは限りませんので除外されます。

ですから当座比率は、
流動比率をさらに厳しく判断するための指標です。

で、この流動比率を高めるためには、
固定資産に計上してしまっているもののうち、
流動資産に持って行けるモノがあるのであれば、
それは積極的にそのようにすべきである、ということになります。
それだけで流動比率が(場合によっては当座比率も)上昇しますから。

③負債のうち、固定負債にできるものは固定負債へ

これは先ほどの逆パターンです。
意識している指標は同じく、流動比率・当座比率です。

これらの数字を高めるためには、
「分子の数字をあげるか、分母の数字をさげるか」、
ということになりますよね。
簡単な算数です。

先ほどはこれら比率の分子の数字を高めようということでした。
今度は分母の数字を下げよう、ということです。

流動負債とは、
短期(およそ1年以内)に支払う必要がある負債のことをいいます。
すぐに支払期限が到来する負債が多ければ多いほど、
財産状態が不安定であるということは、すぐに理解していただけると思います。

ですから、流動負債に入っているモノのうち、
固定負債に持っていくことができるモノ、固定負債に持っていくべきモノについては、
これも積極的にそのようにすべきである、ということなのです。

これら3つの観点で一度ご自身の決算書を眺めてみてください。
税理士によっては案外こういった部分について無頓着で、
何も考えず(または、面倒くさくて)、
不利な状態の決算書を作成してしまっていることがあります。

機会があれば一度顧問税理士さんに、
以上三点の視点で改善できるモノがあるかどうか確認してみるのもいいんじゃないかと思います。

明日はもう少し具体的な内容のお話しができれば。
ただいつものことですが、それ以上に書きたい内容が出てきた場合には
そちらが優先されますのであしからず(笑)。

タイトルとURLをコピーしました