私が、心を整えるために読んでいる本に
「『キャー』の遺伝」
というお話しがでてきます。
それで思い出した、社会学の見地から考える、相続について。
「キャー」の遺伝とは
これは、「100%幸せな 1%の人々」という本の中で作者が紹介しているものです。
これがどういうものかといいますと、
ゴキブリをみつけたら、「キャー」と言って、スリッパでたたいたりする親がいます。
その様子を子供は成長する過程でずっと見ていて、
ゴキブリは気持ちの悪いモノだと認識するようになり、
みつけたら「『キャー』と言って、スリッパでたたくもの」とすり込まれ、
同じ行動を取るようになる。
というものです。
黙っていても、その行動でもって教え込んでいる、ということですね。
そしてその子供はまた同様の行動を繰り返すことによって、
さらに自分の子供も同じように行動することになる。
そうやってその家系は
「『キャー』といってゴキブリをスリッパでたたく」
ということを何百年もやるようになる。
このように後天的ではあっても、
あたかも遺伝のように働くものを、著者は
「『キャー』の遺伝」と名付けました。
「テラフォーマーズ」というマンガでは、
人間がゴキブリを嫌悪し駆除するのは、本能的なもの、
としていますが、
実際に人間がゴキブリを嫌悪するのは遺伝子によるものではなく、
後天的なものです。
諸説あるようですが。
ちなみに私の親は、ゴキブリを見ても落ち着いて駆除する人でしたから、
私もそのようになっています。
文化の相続、感情の相続。
一般的に「相続」という話しをする場合には、
金融資産や不動産など、
いわゆる経済資本の相続のことが語られます。
しかし、「キャー」の遺伝の例にあるように、
親から相続されるものは、経済資本だけではありません。
それ以外に
「文化資本」
「社会資本」
「感情資本」
が相続されます。
文化資本とは、
その家が持っている文化や風土のことです。
本物の絵が飾られている家は、代々絵を飾っていたりしますし、
音楽の好きな家は代々音楽が好きだったりします。
社会資本とは、
人間関係・ヒューマンネットワークです。
そして感情資本とは、
親が普段どんな発言をしているか、どんな価値観を持っているか
といったものです。
いろんな会社経営者やそのご家族をみてきて、
「この家は、なんて不幸なことが続くんだろう」
「なんでこんな困った人ばかり集まってくるんだろう」
というような家・会社があります。
これを「不運」とか「そういった星の下」とか言ってしまうと簡単なのですが、
実はそうではなくて、
その家族や経営者の持っている性格・性質が
知らず知らずのうちにこういった不幸や悪い人間を招き寄せているのです。
つまりこれらが、
負の文化資本であり、
負の社会資本であり、
負の感情資本なのです。
そしてその家系は知らないうちに、
そういった資本を次の世代に相続させ、
次の世代も同じように自分の行動や考え方が元で、
不幸を招いたり、悪しき人間関係を築いたりするのです。
このようにその家庭・家族の「負の資本」が引き継がれていき、
「負のスパイラル」がその家系で生み出され続けているのです。
もちろんこの逆もあって、
とても良い文化をもち、感情的に安定していて、性格的にもプラスの家族・家系では、
「正のスパイラル」が生まれていきます。
いわゆる「品格」とか「育ち」とか「家庭環境」とか言われるものですね。
負の連鎖を断ち切る。
顧問先などを客観的に見ていて、
その「負のスパイラル」が完全に見て取れるときがあります。
そして
「なんでうちの家(会社)は、こんなことばかりなんでしょうね」と
聞かれたりします。
「それはあなた方自身の問題ですよ」
と言ってしまうとケンカにしかなりませんから、
なかなかそんなことは言えないわけですが、
ちゃんと人間関係ができている場合は、少しオブラートに包んで、
ちゃんとこのことをお伝えすることもあります。
そして、それは目に見えない形で相続されてしまうんですよ、
とお話しします。
身に覚えのある方には、とても納得してもらえます。
その負のスパイラルは、連鎖ですから、
誰かが断ち切らねば、その家は永遠にそのスパイラルから抜け出すことができません。
ですから、
「自分の代で、なんとかそれを断ち切りませんか?」
ということを提案します。
自分自身が知らぬ間に引き継いできているものですから、
自分自身がそのように教育され、すり込まれているものですから、
これを変えるのは、非常に難しいです。
しかし、それでも
「なんとか自分が断ち切るんだ」
と思っていただきたいのです。
そうでなければ、その「負」が、
次の世代、また次の世代へと引き継がれてしまいます。
「そんなんムリやわ」
ということではなく、
勉強して、行動変容していくしかないのだと思います。
そしてもしその積み重ねの中で自分自身を変えることができれば、
その後の家系は正のスパイラルに乗っていけるかもしれませんし、
そうなっていくと、経営自体も
正のスパイラルで承継されていくこととなっていくのではないかと思います。
以上のようなお話しに心当たりのある方は、
「キャー」の遺伝を、生物学的な「遺伝」と考えずに、
ぜひ、断ち切る勇気を持っていただきたいと思うのです。