ジオン公国から学ぶ、小零細企業のあり方。

今回はまた、初代ガンダム(以下「ファーストガンダム」)ネタです。
ファーストガンダムは地球連邦政府とジオン公国による戦争を描いた作品ですが、
その中で、ジオン公国は中小企業・同族企業に置き換えることができます。
ファーストガンダムをあまりご存じでない方は、置いてけぼりになるかもしれません(笑)。

代表的な水陸両用モビルスーツ。

ジオン公国は中小企業。

以前の記事でもお伝えしましたが、
ジオン公国はその敵対勢力である地球連邦政府に対して、
その国力は1/30程度に過ぎません。

その中でジオン公国は、戦争初期から中期まで、
圧倒的優位に戦況を進めていきます。
地球連邦軍(大企業)に対して、国力で決定的に劣るジオン軍(小企業)が
どのような戦略で戦い、そしてどのような理由で敗北したのか。
そこには小零細企業の生きる道のヒントがあるように思います。

余談ですが、大きな国力差での戦いというと、
石田三成を思い出します。
関ヶ原の戦いは、どちらに転んでもおかしくない紙一重な戦いですが、
石高で言うと、家康の255万石に対して三成は19万石。
およそ1/13です。ジオンほどの差ではないですが、
非常に興味深いですので、いずれブログでお話しできればと思います。

商品戦略について

以前のブログでは、国力的弱者であるジオン公国が、
環境変化に対応するスーパーイノベショーンとして、モビルスーツの開発を行い、
戦況を有利に進めていったことのお話しをしました。

今回もう少しその内容を深掘りします。

子供の時から、連邦軍は決まったモビルスーツしか出てこない
(種類としては、モビルスーツの亜種である「ボール」を含めて5種類)のに、
なぜジオン軍は次から次へといろんなモビルスーツが登場するのか、
ということです。

もちろん敵キャラクターをたくさん作ることで、
プラモデルを始めとする
商業的な成功を狙った大人の事情もあるでしょう。

しかしそこには、それ以外のちゃんとした設定があったようです。

現実世界でのビジネスにおける商品戦略を考えたときに、
小零細企業は資本力が乏しいことから、
多額の資本を投入して製品開発を行い、
それを大量生産することによるコスト削減を行うという戦略をとることはできません。

ジオン公国も同じことです。

連邦軍とは異なり、
資本・資源に限界がありますから、
「アホみたいに開発費をかけてガンダムを開発し、
 そこから丁寧にデータ収集をして、
 徹底的にコスト削減をしてGM(ジム)を大量生産する」
ということはできないのです。

ですから開発するモビルスーツは、
「水陸両用」みたいな専門的なものとなり、
そういったものを多品種少量生産を行うことで、
局地戦での勝利を目指していきます。

資本力で劣る側は、
戦線を広げて全面戦争を行っていくと、
どんどんと不利になっていくのです。

同じように小さな会社は、
汎用的な商品・製品でもって価格競争の中に飛び込むというのは、
絶対にやってはいけません。

ランチェスター戦略に代表されるように、
弱者は、
「ここなら勝てる」という局所に資本を投下して、
その局地戦で勝利を重ねていくことでしか、
強者には対抗できないのです。

商品自体も万人受けするものではなく、
ターゲットを絞った、
コンセプトが尖ったものである必要があります。

特定の消費者に対して刺さる、独自性の強い存在となり、
「私がこれを買うのは、あなたしかいない」
という関係性を、顧客との間で作り上げていかなければならないのです。

組織のあり方について

最終的にジオン公国は、
1年戦争に敗れてしまう訳ですが、
少なくと前半は圧倒的な優勢です。

この時点でなぜ優勢でありえたかというと、
それは前回のブログでも書いたように、
強烈なリーダーシップを有した指導者による、
トップダウンで組織運営がなされていたからです。

巨大組織は、大きいだけに
しっかり環境に適合することができれば、
とてつもなく大きな力を発揮します。
全体の歯車がガッチリかみ合った状態ですね。

しかし歯車がガッチリかみ合っているだけに、
歯車の一部だけを変更すると、その全体が瓦解してしまいますから、
環境の変化に対してその対応は遅れがちです。

また決定機関が民主的なものとなっていくことも、
環境変化への適合が遅れる大きな原因です。
民主的であることは、もちろん基本的には良いことですが、
こと、決定のスピード感に関しては、トップダウンに劣ります。

ジオン公国はまさにこの、「小さきものの利点」を最大限に活かして、
小回りが効く組織としてイノベーションを起こし、
戦況を有利に進めます。

本来であればこのタイミングで和平交渉に切り替えるなど、
長期戦に持ち込むことは避けなければならなかったわけですが、
序盤の成功体験からか、
ずるずると戦争を引き延ばしてしまい、
徐々に戦況が後退していきます。

調子が良いときは問題ないのですが、
このような後退局面に入ると、
その組織の悪い部分が顔を出すもの。

ジオン公国はギレン総帥をトップとして
その兄弟が各方面の司令官として配備される組織形態を取っているのですが、
その兄弟間の仲が悪くなっていき(もともと良くはないですが)、
結果として、縦割り組織化が進んでいきます。

各司令官は自身の組織のことしか考えず、
情報も共有されません。
本来小さな組織のメリットが生きていたからこそ、うまく運営されていたものが、
あたかも大企業病のような様相を呈してくるようになるのです。

自らの強みを自分から放棄してしまったジオン公国は
一度崩れた戦況を立て直すことができず、
最後はトップの仲間割れに到り、
その直後に降伏することになるのです。

小零細企業でも、10人くらいの組織になると、
部署は2つ~3つくらいに分かれますから、
油断をすると、あっという間に縦割り組織になってしまいます。

これは結局各部署のリーダー(=幹部)が、
自分の部署のことしか考えていないから。

こんな状態になると、ジオン公国と同じで、
一気に情報の風通しは悪くなり、
組織としての柔軟性を失っていきます。

だからこそトップは、明確な理念のもと、
幹部を統率しなければいけません。
そして幹部の仕事は、自分の部署の部下だけを見ることではなく、
むしろトップの方を向いて、その意図をよく汲み取ったうえで
部下を引っ張っていくことにあるのです。

そのためには、ありきたりですが、
経営者と幹部のコミュニケーションを絶やさない、ということが大切です。
経営者は常に幹部に対して自分の考えを伝え続け、
幹部は経営者の思いを実現しようとする。

この関係性を構築し、維持発展させ続けることが、
良好な組織を作るためのキモであると思うのです。

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