問題と課題の発見と、問題解決。

経営を行っていると、多くの問題と課題が目の前に現れます。
その整理と解決について。

「問題」と「課題」は、別物です。

問題と課題が混同されている。

冒頭でさらっと「問題と課題」という言葉を使いましたが、
この「問題」と「課題」、私の中では別々のものとして使用しています。

まずは「問題」。
過去から現在まで、それぞれの会社・事業の歴史がありますよね。
その流れの延長線上にある未来が、
「想定される未来」
です。
「このまま行ったら、こうなるよね」
という話しですね。

しかし、現実はそのようにはなりません。
なぜかというと、会社というのは「問題」を抱えているから。

問題と言うのは、
過去から現在までの事業経営・運営の中で生じて積み重なり、顕在化した
「このまま放置していたらマズイもの」
です。

社内にあるクレームの温床であったり、
事業運営上のリスクであったり、
とにかく、そのままにしておくと会社が悪化しダメージを与えるもの。
これが「問題」です。

問題をそのまま放置しておくと、会社にダメージを与えるわけですから、
先ほどの話し、「想定される未来」には辿り着かず、
現在を起点にして徐々にその想定される未来に向かう直線から下に下がって離れていきます。
この離れてしまった差を埋めることが、

「問題解決」

なのです。

そして次に「課題」。
皆さん経営者であれば、経営を行っている以上、
そこにビジョンを持つだろうと思います。
「ビジョン」にはいろんな定義の仕方があって、どれが正解ということではありませんが、
将来の会社のなりたい姿、といって差支えないだろうと思います。
そしてここではそのように定義します。

「想定される未来」は「このまま行ったら・・」という世界なので、
ビジョンに到達しようと思うのであれば、
このままではいけないわけです。
そしてそのビジョンが明確になり、それを見据えたときに、
そのビジョン達成に向けて今取り組まないといけないものが、明確になります。

問題の発見は簡単ではない。

前述の通り、問題は、それを放置しておいたらマズイものです。
ですからこれを解決せずにほったらかしにしておくと、
会社の体力は、着実に削り取られていきます。

しかし、重要なのは、まず問題を発見すること。
問題が発見されなければ、それが解決されることも当然ないわけで。

ということでまずは、経営者自身の問題発見能力が問われます。

よく言われることですが、
「問題」は、長くその組織に属していると、見えにくくなります。
どっぷりその環境に浸かってしまい、それが当たり前になっていくので、
結果として気にならなくなってしまうのです。

私もかつて、経験があります。
税理士の修業をしていた事務所に入社させていただいたとき、
入社してすぐ、多くの問題に気がつき、多くの疑問を抱きました。
ただその時点では何の発言権もない、給料泥棒のぺーぺーでしたので、
一定の実力と発言権をもったときに、これらを一掃してやろうと思ったのです。
しかしその力を手にして「さて問題を洗い出そう」、と思ったときに、
入社時あれほど目についた問題点が、すっかり見えなくなってしまったのです。

もちろん問題をいくつかリストアップすることはできますが、
当時抱いていた問題意識からすると、圧倒的に少なかったのです。

怖ろしいですね、慣れって。
思いついたときに、書き留めておくべきでした。

今は経営者として日々自分の組織の抱えている問題と向き合っていますから、
問題発見能力はずいぶんと研ぎ澄まされております。
これは日々の意識と訓練ですので、
意識的に自社の問題に「ピクッ」と反応できるように
アンテナを張り巡らせておくことが大切です。

あと、定期的に新入社員が入ってくるような組織であるならば、
新入~入社2年目くらいまでの間に、
自社の問題点について積極的に気づいたことをあげてもらいましょう。
「新人が何を生意気なことを」
とかいうことではありません。
新人こそが、自社の問題点に最も気がついてくれる、貴重な存在なのです。

ちゃんと優先順位をつけて解決する。

そうして問題点をリストアップすることが出来るようになりましたら、
それをちゃんと解決していく必要があります。
せっかく見つけ出しても解決しないのであれば、
問題を洗い出した時間がもったいないだけのことになってしまいますから。

問題発見能力が高まってくると、ものすごい数の問題が挙げられます。
これは会社がイケてない、ということではなく、
その分ポテンシャルを秘めていると考えるのが健全です。

ただ、その全てを解決するのは現実的ではありませんから、
ちゃんと優先順位をたてて手をつけていきましょう。

優先順位はいつもの
「重要性と緊急性マトリクス」
で判別していきます。
重要性が高くて緊急性が低い象限に入ってくるものが要注意!

そして「問題」には、
表層にただよっているものと、
深層に潜んでいるものがあります。

表層にある問題は目にとまりやすいですが、それが根本的な問題ではなく、
その原因はもっと深いところにあることが多いものです。

表層の「A」という問題があるときに、
Aの原因はなんだろうと考え、それが「B」という問題で、
さらにそのBの原因はなんだろうと考えると、
その原因は「C」だった、
という風に、
「なぜ」を5回繰り返すと、
大抵の問題はその根本原因に到達するそうです。

これが本来解決しなければならない「大ボス」です。

そしてこの大ボス、大ボスというだけあって、
これを解決するのが極めて難しいことも多いもの。
そんなときは、とりあえず表層の問題から手をつけるというのも
一つの手段です。

深層に潜む問題の大ボスにかかずり合っている間に、
結局何も解決していない、ということになるくらいであれば、
たとえ表層の問題であったとしても、
それを一つ一つ解決していく方が、確実に改善には向かいます。

そしてその解決できる問題を少しずつ掘り下げていって、
最終的に本丸である大ボス(根本原因)を解決する。
この道筋の方が効率的であることも多いのです。

今回、課題抽出とその解決のお話しは全くできませんでしたが、
経営は結局この
「問題発見・課題抽出」と
それらの解決を積み重ねていく作業です。

是非ともまずは経営者自身の問題発見能力を高めて、
その一つ一つを順番に着実に、解決していきましょう。

その積み重ねが、良い経営体質を作り上げる素地になっていくのです。

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