求人が集まらない、自己矛盾。

よく小零細企業の経営者の方から、
「うちの会社は求人しても人が集まらない」という声を聞きます。
その現実と自己矛盾について。

確かに人は集まりにくい

小零細企業は大企業や地元の優良企業に比べて、
もちろん知名度は低いですし、
残念ながら高い給与も支払うことはできません。

働く側としても、
なんとなく小さい会社よりも大きい会社の方が安定しているように見えるし、
良い職場のように感じます(現実その可能性は高いですが)。

そんな環境下でも、雇用は大切ですからなんとかしないといけないわけですが、
求人をかけてもなかなか良い人は集まってきません。

しかしそれが本当に「小零細企業だから」という理由なのかといういえば、
もちろんそれは一つの大きな要素ですが、
必ずしもそうではありません。
経営者自身とても多くの自己矛盾を抱えています。
その自己矛盾の一つ一つを紹介します。
さて、みなさん心当たりはありませんでしょうか?

【自己矛盾①】良い人には来て欲しい、でもいい給料は支払わない

もっとも多いのはこれです。
社員さんは経営者とそもそもの思考が違います。
ですから
「給与は安くても、とにかく自分のやりたいことが実現できれば!」
という心意気の人はごく少数です。
というかそういう人は自分で事業を始めてしまいます。

能力の高い人は、引く手あまたです。
条件が良いところとそうでないところがあれば、
当然のように条件の良いところへ行きます。

もちろんそれだけが条件ではありませんから、「どこよりも高給」である必要はありません。
しかし、優秀な社員に集まってきて欲しいというのであれば、
給与を高く設定する必要はあるのです。

確かに経営状況がそれを許さない会社もあるでしょう。
しかし、決してそこまで状況が悪いわけでもない会社が
「いつどうなるかわからないから」と
いつまでも給料をあげないという方が多いように思います。

そんな考えの経営者のもとに、
「高い給与を支払える瞬間」は、永遠に訪れません。

【自己矛盾②】自由な発想の人に来て欲しい、でも自分の言うことをきけ

経営者は自分の会社が、
いわゆる指示待ち族ではなく、自ら考え自ら判断し、
自ら行動する社員で満たされることを望んでいます。

そして自分が考えていないような新しい発想でもって
会社に貢献してくれるような人を求めています。

しかし実際社内でそういう人が生まれると、
その考えや発想がすこし自分の考えと違うだけで
「それは違う」と上から押さえつけてしまう。
それなのに、
「うちの社員は言われたことをやるだけで、自分のアイデアも自主性もない」という。

そんな社員に育てたのは、誰なのでしょう・・?

【自己矛盾③】早く能力は身につけて欲しいが、教育の投資はしない

経営者は結構、即戦力を欲しがります。
入社した瞬間から仕事ができるわけですから、
そりゃ楽に決まってます。
そして即戦力でないとしても、
早く能力をつけて欲しいと思っています。
これも経営者の立場からしたら当然だと思います。

しかし多くの経営者が、
社員さんに仕事を覚える機会も時間も、
意外と与えていません。

「そんなもの、私たちの時代は、仕事以外の時間で自分たちで勉強していた」
とか言い出します。
昔はそれでよかったかもしれませんが、
今の時代はそんなことを言っていると、一発ブラック認定です。

OJTも必要ですが、OFF-JTも結構大事です。
OFF-JTで身につけたものが現場での実地業務と繋がったとき、
人は飛躍的に成長します。

早く能力を身につけて欲しいと思っているのであれば、
ちゃんと仕事の時間中に知識や技術を身につける機会と時間を与えてあげましょう。

【自己矛盾④】会社に忠誠心は欲しいが、終身雇用はできない

「うちの社員は、会社に対する帰属意識や忠誠心がない」
ということを言う経営者にも結構出会います。

それでは問います。
帰属意識や忠誠心が高まるような待遇を、
社員さんのためにしてあげてますでしょうか?

相手には忠誠心を求めつつ、
雇用体系はいつでも切れるように無期契約でなく有期契約になっている、
なんてことはありませんでしょうか?

忠誠心や帰属意識はこちらから「忠誠心を持て!」といって
持ってもらえるものではありません。
相手が「この会社のため、この社長のためなら頑張れる!」と思ったときはじめて
醸成されるものです。

ですからそういう体質の会社にしたいと思うのであれば、
それは相手に求めるものではなく、
そう思ってもらえる会社や自分になるところからのスタートなのです。

求人は、マーケティングと同じ

自社の商品が売れるためには、
自社の商品をお客さんに選んでもらう必要があります。
経営者は自然な行動として、
そのために自社の商品をより良いものに磨き上げようとします。

しかしこれがいざ「雇用」となると、
その意識はどこか遠くへ飛んで行ってしまう方が非常に多い。

雇用というのは、こちらから社員さんを選ぶという一方的な作業ではありません。
相手方に「ここで働きたい」と選んでもらわないといけないのです。
今は昔よりもいろんな情報が容易に手に入る時代ですから、なおのことです。

そんな意味で求人はマーケティングと同じです。
ターゲットに自社の価値を届ける、そのために発信をしていく、
というのと同じように、
自社の仕事内容と社風に合った人に、
自社がどんな会社であるかということを発信し、
かつ相手にとって魅力的な会社である必要があるのです。

上記のような自己矛盾を抱えている経営者は、
その発想を転換しない限り、いい社員さんは入ってきませんし、
入ってきたとしてもすぐに去っていきます。

こんな言葉聞いたことありませんでしょうか。
「キレイな花にはチョウチョが集まり、〇〇〇にはハエが集まる」

チョウチョに集まって欲しいのであれば、
自社が可能な限りきれいな花になる努力をすることが必要なのです。
社員さんにとってお金は大切ですが、
逆に決してお金だけで仕事を選ぶようなことをしません。
これは考え方のしっかりした方ほど、その傾向があります。
ですから、どうしてもこれ以上給料を上げることができないのであれば、
他のポイントで選んでもらえるよう、考えてみましょう。

これは社員さんに媚びる、ということではありません。
会社は組織ですから、
その力はそこに集まった人の総合力で決まります。
会社が組織力を最大にするためには、
社員さんが働きやすい環境を作り出すことが大前提だということです。

「そんなん、うちはお金がないから無理」
というところで思考停止してしまわないことがとても大切なんじゃないかと、思います。

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