情で仕事を引き受けるかどうか。

経営をしていると、知人や知り合いの経営者から、
「お困りごと」という形で割に合わない仕事が持ち込まれること、
ありますよね。
こういった仕事を引き受けるかどうか、悩ましいところです。

困っている人がそこにいる・・

「こんなことで困ってるんだけどちょっとお願いできないかな」
「友人が困ってるんだけど安くで話し聞いてもらえないかな」

経営をしていると、
普通にこういった話しが持ち込まれます。

おそらく経営者の方ならば、
少なからず経験があろうかと思います。

どんな仕事の種類のものであったとしても、
そこに困っている人がいて
自分(自社)にはそれを解決する力がある。
それがわかっているだけに、
ついつい安易にそういった仕事を引き受けてしまいがちです。

それでは、そういった仕事は、
積極的に取り込んでいくべきなのでしょうか?
最終的には、それぞれの方針の問題ですから、
明確な答えのないことではありますが、
考えなしに安易に受け入れるのは、
少し問題があるんじゃないかと思います。

会社が疲弊する

こういった仕事に限って、
だいたいが、極めて小さい仕事であり、
その割に(というか、だからこそ)収入にはほとんど貢献しません。

「困ってる」というのは、
「それほどお金はかけたくないけど、何らかの問題を抱えている」
という意味ですから、
不当に安い仕事になりがちです。

それなのに人情に訴えかけてきますから、
なかなか断りづらいという、実に曲者なのです。

確かに、自社に時間的・経済的余裕があるときは、
引き受けることもできるでしょうし、
それによる影響はめだちません。

しかし、このような仕事を引き受けるというのは、
困りごとの解決という意味で他社に貢献しているように見えて、
実は自身の身を削っているとも言えます。

このような仕事を積極的に受け続けると、
ちょっと会社が忙しくなったときには、
あっという間に、足を引っ張るようになります。

決して儲かっているとは言えない(というかむしろ全く儲かっていない)仕事に
相応の時間を割くわけですから、
その積み重ねが、会社全体の疲弊へとつながる可能性もあります。

そんな大げさな、と思われるかもしれませんが、
単発の仕事ならまだしも、
継続的な仕事でそれを情にほだされて安価に受けると、
本来であればもっと利益を出すことができるはずだった時間が
継続的にそこに奪われ続けることになりますから、
徐々にすり減っていくことになるのです。

社内問題にもなる。

上記のような仕事の引き受け方は、
大きな会社では、まずありえません。
小零細企業で経営者が独自の判断をできてしまうから
出てくる問題です。

「社長が取ってくるんだからしょうがない」
と社員さんがなし崩しで理解していることもあるでしょうが、
その仕事を誰がするかというと、
必ずしも社長だけでなく、
社員もそれに巻き込まれることになります。

しかも社長は普段、
会社の売上をあげよう、利益をあげよう、と
掛け声を上げていることだろうと思います。
となると、このような仕事を引き受けることは、
完全に普段言っていることと矛盾する行為ということになります。

「なんでこんな利益の出ない仕事を私がしなければいけないの?」
とか
「なんで他のお客様にはこの値段で、あの人だけ特別?」
とか
そんな矛盾と不満がいっぱい出てきます。
特に会社を組織化しようとしている場合には。

組織化する、ということは、それは、
仕組みで動く集団を作るということですから、
イレギュラーなことを介在させることは、
あまり好ましいことではありません。
それは経営者であっても同じことです。

一定のルールのもと動くのが組織ですから、
経営者がそのルールに則らなければ、
経営者としての求心力を失っていくのです。

先の大きな仕事につながるかも?

儲からない小さな仕事を引き受ける理由として
「関係をつないでおけば、先の大きな仕事につながるから」
ということを挙げる方もおられます。

これが単なる言い訳ではなく、本当にそう思っているのであれば、
これは人情どうこうではなく、
マーケティングの話しとなります。

ですから、これまでの議論と切り離して考えねばなりません。

マーケティング、ということになったのなら、
本当にそれが効果を生んでいるのか、
データをとる必要があります。

どの程度、事前にサービスすることが、
先でどれだけちゃんと仕事につながって、
最終的にどんな利益を生み出しているのか。

そのデータ収集をきちんとやって、
最終的に時間当たり利益が合っているなら、
その手段は販促活動としてうまくいっているということであり、
それを継続していくことになります。

しかし逆に、
実際にはタダに近いような仕事をいっぱいさせられるだけで、
それが将来の仕事につながらず、利益を生み出していない、
ということであれば、
それは非常に効率の悪い販売活動ですから、
その方針は変更しなければなりません。

経営者一人でやっている会社で、
その人の思い一つで仕事をするのであれば、
それは経営者の勝手ですが、
社員を巻き込んではいけません。

社長の情で、儲からない仕事を引き受け、
それによって利益の出にくい会社となり、
結果として社員の給与があがらない組織となる。

こんなことは、絶対に避けなければならないのです。

非情な人とならないか

かといって、そんな仕事を断ってばかりいると、
「〇円以下の小さな仕事お断り」
みたいなことになって、
消費者から「お高く留まってる」というように見えないか?
という心配がでてきます。

しかしそれはこちらから理由なく仕事を断るからそうなってしまうのです。。
小さな仕事だからと言って、それを全てお断りする必要なんてなくて、
その仕事でちゃんと利益が確保できるのなら、
それはありがたい仕事かもしれません。

ですから、こちらから無下に断るのではなく、
ちゃんと値段設定を行って、
その仕事に対する適正な価格を提示して、
それでも依頼していただけるか、と投げかけるのです。

そうすれば、選択権は相手方のものとなり、
「それならば、やめておきます」
となるので、カドは立たないでしょう。

安く仕事をすることにしたってそうです。
お店に食事をしにいって、
5000円のコースを頼んで、「これ、4000円になりませんか」
とか言わないですよね。
ですから値引きをしないということも、
それ自体まったく非情なことではありません。

そんな意味で、小さな仕事でも、
もしそれを引き受けるという方針なのであれば、
やっぱり値決めが大切です。
そしてそれを値引きすることなく
ちゃんと価格提示していくことが求められるのです。

決して人情にほだされて、自らの首を絞めてしまうような結果に陥らないように
気を付けてください。
そして、それが単に人情でやっているのか、
それとも販促の戦略でやっているのか、
それを自身の中で明確に切り分けましょう。

そのうえで、最終的には、
経営者自身が判断することだろうと思います。

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