先日顧問先より、iPadを一括で払う方がいいのか、分割で払う方がいいのか、
というご質問をいただきましたので、その件について。
経費に落ちる金額は、変わるのか。
会社で物を購入する場合で、
一括払いで購入するのか分割払いで購入するかの判断を迫られるとき、
最も気になるポイントは、
「それによって経費に落ちる金額は変わるのか」
ということだろうと思います。
まず結論から申しますと、
支払いの方法が変わることで経費になる金額が変わることはありません。
ただしここでいう分割払いとは、
所有権が自分に移転するもの、つまり購入したとき自分のものとなっているもので、
購入金額を分割して支払うもののことを言っています。
リースは基本的に所有権が移転しませんから、リース契約はここでは除かれます。
一括で30万円以上のものを購入した場合、どれだけがその期の経費になるかというと、
減価償却費として計算した金額、ということになります。
例えばPCを30万円で購入したのであれば、
耐用年数は4年、法人であれば原則、定率法で計算することになりますので、
初年度は1年間で15万円が経費になります。
事業年度の中途で購入した場合には、
その期間に応じて月数按分することとなります。
たとえば3月決算の会社が8月に購入した場合には、
初年度は8ヶ月間使用することになりますので、
15万円×8ヶ月/12か月=10万円が減価償却費として経費になります。
分割払いをした場合にもこれと全く同じ計算で、
実際にその事業年度中に支払っている金額と経費に落ちる金額には
ズレが生じることになるわけです。
分割で購入したときの経理
簿記の話しになってしまいますが、
分割払いでパソコンを購入した場合には、
購入時に、
器具備品 30万円 / 長期未払金 30万円
という処理がなされます。
ややこしくなるので、分割手数料(利息)の部分については考えないものとして
以降も説明いたしますね。
前述したとおり、器具備品については減価償却という形で毎年経費に変化していきます。
そして支払った金額については、
長期未払金/現預金という処理がされて、
徐々に長期未払金の残高が減少していくということになります。
これでわかっていただける方にはわかっていただけると思うのですが、
分割払いというのは、
金融機関でお金を借りて資産を購入した場合と同じ処理になるということです。
ちょうど30万お金を借りて、30万のPCを購入した場合には、
PCは減価償却という形で経費になっていき、
支払っていく金額は長期借入金の支払いという処理になりますよね。
長期未払金が長期借入金に置き換わっているだけですから、
まさにお金を借りて買っているのとまったく同じであるということです。
分割払いするかどうかの判断
それでは支払いの方法について、
どのように判断するのがいいのでしょう?
これは、何を最も大切にするか、という考え方と、経営者の性格も関わってきますので、
「絶対にこうだ!」という答えはありません。
しかし、資金が潤沢であったり、購入するものが少額である場合などは、
一括で支払ったとしても資金的にほぼ影響がありませんから、
一括で購入することをオススメしています。
なぜなら、分割払いにするとそこには利息やら分割手数料やらがかかってきますので、
トータル支出が変わってくるからです。
この「トータル支出で考える」という方法は、
一括払い・分割(または借入)・リースの判断をする際の判断になってきますので、
とても大切です。
そして金額が多額のものであったり、
一括で支払うことが資金繰りに一定の影響を与えてしまう、という場合には、
分割払いまたはリースとう可能性がでてきます。
基本的に事業はできるだけ潤沢な資金を保有した状態で運営するのが望ましいですから、
金額が数百万・数千万になってくる場合は
借入をするのがいいのではないかと思います。
しかしここは経営者の性格を加味する必要があります。
長期的に返済する借入金があった場合にも、
借入金の存在が気にならず正常な判断をすることができる性格なのか、
変な焦りが生じてそれができなくなってしまう性格なのか、
ということです。
借入金の存在が自身の経営判断を狂わせてしまうという方は、
資金的に問題がないのであれば、
キャッシュでの支払いをオススメします。
しかし資金的に問題が出てくるようであれば、
一括で購入しようにもそれは不可能ということになります。
先ほどお話しした通り、分割払いと銀行借入は、処理的には全く同じですから、
金融機関から有利な条件で借り入れができるのであれば、
販売会社の口車にのって分割支払いをする前に、
銀行からのプロパー借入で対応できないか、
ということを考えましょう。
そしてリースですが、
基本的には私はリースをオススメはしておりません。
リースは原則
「借入をすることができない場合の最終手段」
くらいに思っています。
リースを組んだ場合には、もちろんリース会社が儲けないといけないわけですから、
リース総額には利息のようなものが乗っかった金額となっています。
そしてその金額は銀行借入の金利よりも高額であることが一般的です。
リース契約をすることでその資産の保険料がリースに組み込まれていたり、
修理代についても一定のものが組み込まれている場合、
購入したとしたら実際にどのくらいの保険料や修理代がかかるのか、ということを考慮に入れて、
前述したように
「支払総額はどうなるのか」
ということを基準に判断いただけたらと思います。
車の購入の場合など、残価設定、という方法があったりしますが、
この場合の判断には「ある程度の年数で車を買い替えたい」、とかいう、
「支払総額」とは別の次元の考慮すべき要素が出てくるので、
これはもう、どちらがお得か、という話しではなくなってきます。
「お得」というのを「支払総額」という要素だけに絞り込んだ場合には、
やはり購入してギリギリまで使い切る、というのがいいんじゃないかと思います。
「支払総額」のほかに「新しいのに乗り換えたい」という要素がからんでくると、
変数が二つになりますので、「お好きな方を」ということにしかなりません。
支払総額は増えますが、それが増えたとしても新しいのに乗り換えたいというのであれば、
残価設定リースにすればいいだけの話しなのです。
以上、一括支払い・分割払い・リースの判断についてでした。
もしこれまで金融機関からの借入をされたことがないという方は、
その機会があれば、もし一括払いが出来るとしても
一度借入で購入されるのも一つの手段です。
金融機関からお金を借りるとは、どういうものなのか、
どういう手続きを踏むものなのか、
金融機関はどういった考え方をするのか、ということが経験できますし、
一度借入を行ってそれを正しく返済していけば、
それが「実績」となって次に本当に必要な借り入れをする場合に
融資が受けやすくなることがあります。
少し話しが逸れてしまいましたが、そんな意味でも
一度は実際に借入をされてみること、オススメいたします。