ロジカルな営業、セールスプロセス。

売上計画や目標を立てたときに、
その金額そのものを追いかけてはいけません。
押し売りにならないための、計画とその実行管理について。

目標売上額や目標契約数をKPIとしない。

かつてはいろんな会社で「目標売上」が設定され、
その達成に向けてのグラフが営業担当者別でグラフにされて、
壁に貼り出されているようなことがありました。

さすがに最近はあまり目にしないようになりましたが、
いまでも多くの会社でこれに近いことがなされています。

しかしこれには大きな問題があります。

「売上額」「契約数」だけを目標とするものですから、
最終的にとにかく数字をあげればよい、
ということになってしまうのです。

ニュースにもなっていましたので具体名を出しても問題ないと思いますが、
近いところでは、日本M&Aセンターという日本最大のM&A仲介会社が
契約書偽造と架空売上の計上をおこなっていました。
これは「粉飾」という違った意味の大きな問題があるわけですが、
そこまでして売上をあげなければいけない風土になっていたということは、
顧客との間で無理矢理な契約をねじ込んだりしているだろうことも
想像に難くありません。

事業の目標は顧客の創造なわけですが、これには
「顧客が求める価値を届けることで顧客満足を得ることを通して」
という前提があるはずです。

ですから、売上額・契約数といった最終数値をKPI(重要評価指標)としてはいかんのです。

例えば、1ヶ月で10件の成約を目標にするとして、
そこに至るまでのプロセスをいかに設定し、
いかにこれを管理・改善していくか、
ということが大切なのです。

これを「セールスプロセス」と呼んでいます。

契約までのステージを設計する。

顧客接点が発生してから契約(購買)までの距離が短い業種には当てはまりにくいですが、
例えば初めて顧客接点が生まれて「見込み顧客」となっていただいてから、
顧客とのやりとりがいろいろと発生し、
契約に至るまでの間にいろんなステージが発生するような業種では、
このセールスプロセスは極めて大切です。

例えば住宅建築のような業種がわかりやすいだろうと思います。

先ほどの例のように1ヶ月で10件の成約を目標にするとして、
がむしゃらにこの「10件」という数値を目指しても、
おそらく目標達成は難しいだろうと思います。
なぜなら、その目標を到達するまでの過程が設計・計画されていないからです。

見込み顧客をいかにして成約につなげるのか。
ここの「手段」の部分を計画し、
これを実行することで成約率は高まっていきます。

またこの「手段」の部分を計画実行して、その結果をデータとして収集することで、
その後目標達成に向けての「改善」が可能になるのです。

「頑張る!」といったフワッとしたものではなく、
「理詰め」で設計・管理していくのです。

それではまずは、
最初の顧客接点があってから、最終成約にいたるまでの
「ステージ」
を設定しましょう。

例えば最初にTELやメールでの問い合わせがあったとします。
これが最初のステージ
「アプローチ」
です。
次にこの見込み顧客に対して、ヒアリングを行うとします。
これが第二ステージ
「ヒアリング」。
次にそのヒアリング内容を持ち帰り、プレゼンテーションの場を持つとします。
これが第三ステージ
「プレゼン」。
そして最後、そのプレゼンを行った後に、
最後の一押しとしてクロージングの場を設定するとしましょう。
これが第四ステージ
「クロージング」。
その後ようやく、「成約」につながります。

まずはこのように、それぞれの会社ごとで、
自社がどのような段階を踏んで見込み顧客を成約へと導いていくのか、
そのステージ設定を行うことから始めます。

どこのステージで取りこぼしているのか。

このステージ設定をなぜ行っているかというと、
もちろん前述した「過程」の設定が目的なわけですが、
これを設定することで、
どこで取りこぼしが発生しているかということがハッキリさせることが目的です。

まず計画する前に現状分析をしてみましょう。
現状、最終的に1ヶ月で5件しか成約しなかったとして、
それぞれのステージにどれだけの件数(または人数)が到達したのかというデータ収集を行います。
その結果、
・アプローチ:50件
・ヒアリング:30件(60%)
・プレゼン:15件(50%)
・クロージング:5件(33%)
・成約:5件(100%)
という数値がデータとして収集できました。
括弧内の%は、
その一つ前のステージからどれだけの顧客が次のステージに上がってきてくださったか、
という率です。

最初50件もの見込み顧客が、
過程の中で取りこぼされていって最終的に5件になっているのです。
このことから、最終的な成約数である「5件」というのは、
単なる結果に過ぎないことがよくわかります。

そして、どこのステージでどれだけの取りこぼしがあるか、ということも
非常によくわかります。

見込み顧客として問い合わせいただいたうち40%は
次のヒアリングに到達していません。
つまりこの40%はこの時点でとりこぼしています。
次のプレゼンに至るまでの間でも50%のとりこぼしがあります。

このように数値で明らかにすることで、
どこに問題があるのかが一目瞭然となるのです。

目標売上や契約数に到達するために。

さてそれでは目標成約数を達成するためには、
どのようにすれば良いのでしょう?

前述の結果が毎回必ずこの割合で進行するわけではないでしょうが、
ここは仮にそうだとすれば、
何も改善せずこのまま成約目標の10件を達成しようとすると、
アプローチは100件必要ということになります。

しかし見込み顧客を倍にするというのはとても大変なことですから、
もっと少ない見込顧客数で成約数をあげるには、
各ステージごとの繰り上げ率(%)を高めることが
必要であることがわかります。

つまり目標達成は、
この「件数」と「繰り上げ率(%)」の管理で制御していくのです。

例えば、各ステージの繰り上げ率を改善して
アプローチからヒアリングを80%、
ヒアリングからプレゼンを60%
プレゼンからクロージングを50%
クリージングから成約を100%と設定すると、
50件→40件(80%)→24件(60%)→12件(50%)→12件(100%)と、
目標成約数を達成することができます。

あとは、それらの率を達成するために
具体的にどのような取り組みを各ステージで行っていくのか考えて計画し、
それを実行する、ということになってきます。

この実行計画もあくまで仮説ですから、
この設計をしたからといって必ず達成されるわけではありません。
しかし、何がしかの結果は現れますから、
その結果を受けてまた新たな実行計画を立てていけばいいのです。

このようにして、少しずつ目標とする成約数に近づいていくことができます。

このようなセールスプロセスの管理を行っていくことで、
何が大きく違うかというと、
目標を達成するために具体的に何を実行するかということが明確になる、
ということです。

これは極めて大きな違いです。

成約数だけを求めていたときには、
「いかに成約するか」しか考えられなかったところが、
「いかに、決めたことを実行するか」
に変化します。

そしてその行動計画を全て実行して、結果として達成されなかった場合には、
それは営業担当が悪いのではなく、
ただ単に当初の取り組み計画設定に問題があった、
ということになるのです。

営業担当に対して、
「お前の業績が悪いんやから、もっと契約とってこんかい!!」
という根性論と顧客無視の世界から脱却できるのです。

ぜひ一度、皆さんの会社のセールスプロセスを描いてみてください。
そしてまずは現状のデータを収集してみてください。
それにより、どこに問題があるかがハッキリします。

これが「ロジカルな営業」に向けての出発点なのです。

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