売上高と販売数量は、もちろんある程度意識をしないといけないですが、
効率化と中身の充実を図る場面においては、振り回されないことが大切です。
売上至上主義は問題
まず最初にお伝えすべきは、
売上があがっても、利益が減るということは、
当たり前のように発生します。
売上を伸ばすことは当然ながらとても大切なことです。
売上があがるということは、
売っているものがたくさん売れているということですし、
たくさん売れているということは、
顧客が増えている、または、
買ってくださっている量が増えている、
ということですから。
しかしここで注意いただきたいことは
売上が増えればそれでいい、ということではない、
ということです。
ちゃんと損益計算のわかっている方からすれば当然のことですが。
場合によっては、会社のためにならない売上増もありえるのです。
言うまでもなく会社にとって必要なものは、
売上ではなく「利益」です。
利益を上げるためには一定の売上は当然必要ですが、
売上があがっても、利益があがらないのであれば、
それは意味がありません。
たまに会社の数値に無頓着な経営者の方がおられますが、
こういった方は手持ちの現預金残と売上金額くらいしか
認識していないケースがあります。
売上があがるだけで喜んではいけません。
冒頭に書きましたとおり、
売上があがっても、利益が減るということは、
当たり前のように発生するのです。
ですから売上そのものよりも、
「どれだけの利益をあげるのか」
「どれだけの粗利益(限界利益)をあげるのか」
こちらのほうにこそ、
意識を向けていただく必要があります。
値上げの効果
儲かっていない会社によく見られるケースとしては、
やたらと安い値段で自社の商品を販売している、というものです。
一昨日のブログでも少し触れましたように、
とてもいい商品を提供されている会社でも自社の商品に自信が持てなくて、
適切に値付けが出来ていないことがよくあります。
こういった会社は、もれなく儲かっていません。
「値上げをして、売れなくなったら怖いから」というのが、
値上げができない主な理由です。
値上げをできない
→儲からない
→儲かっていないから値上げをする勇気を持てない
→値上げをできない
こんな負のスパイラルですね。
売上の金額と販売数量が減ってしまうことを
極端に恐れているのです。
しかしここは一度冷静に計算をしてみてください
例えば原価500円のものを800円で1000個売っていたとします。
売上は800円×1000個=80万円。
原価は500円×1000個=50万円、
トータルの粗利益は80万円ー50万円=30万円ということになります。
少し極端な例としまして、
この販売価格を1000円にしたとします。
原価は1円たりとも変わりませんから、
値上げした200円はそのまま全部利益になります。
1個当たりの粗利益は300円だったものが500円になるということです。
ですから、値上げ前と同じだけの粗利益をあげようと思うと、
30万円÷500円=600個、となって、
たった600個売ればいいという計算になります。
売上は1000円×600個=60万円に減少し、
販売数も600個に減ります。
しかし、粗利益は同じなのです。
これってスゴイことですよね。
利益は同じでも、とても大切なポイントは、
「時間」です。
物を作るにも販売するにも、
そこには「時間」がかかりますから、
販売数が600個になって同じだけの粗利益が稼げているというのは、
製造と販売にかける労力は以前の6割でいいということになるのです。
売上と販売数量に囚われてしまっている方は、
80万の売上が60万に下がったという事実と、
1000個売れていたものが600個しか売れなくなったという事実に
恐れをいだきます。
でも、違いますよね。
たった6割の労力で、同じだけの利益を稼げているのですから、
めちゃ前向きな話しです。
これは少し極端な例ですし、
実際価格をあげることで顧客が大きく離れてしまうことも考えられます。
ですから今の価格が「安すぎる」ということが大前提にはなります。
しかし、値段をあげることで、どれだけの売り上げ減少が許容されるのか、
ということは冷静に計算いただきたいと思います。
そしてそれによって時間を得られるということに
もっと価値を見出していただきたいと思います。
少しでも高い値段を!
案外、これまで値上げをされたことがないという経営者の方は、
多くいらっしゃいます。
値下げと値引きはしょっちゅうされてるんですが(笑)。
値上げをした経験があったとしても、
仕入れ値があがったからという理由での価格転嫁、
ということがほとんどじゃないでしょうか。
しかし、価格というものは原価がいくらだから、
というものだけで決定されるものではありません。
「その商品の価値はいくらなんだろう?」ということから考える方が、
よっぽど大切です。
確かに相場も大切ですが、
その「相場」と同じ価値の商品を売っているのでしょうか?
「いやうちの方が、いいもの売っているよ」ということなのであれば、
相場と同等というのは違うと思うのです。
ですからもっと、
自社の商品の値付けに真剣になってください。
簡単なことではないことはよくわかっていますが、
「お客さんが喜んで買ってくれる、ギリギリの値段っていくらなんだろう」
ということにもっと強く意識をもっていただきたいのです。
もちろんその意識をもって値付けすることで、
「高い」という声を聞く機会は増えるかと思います。
その声に全く耳を貸さないというのは問題ですが、
その声を必要以上に恐れるのもまた問題です。
お金をもらうのが苦手な人は、
経営者としての大切な資質が欠落していると考えましょう。
実は私も結構そのタイプです。
しかし、それをちゃんと認識しているからこそ、
経営者なのだから、値引きは絶対しない、安売りは絶対しない、
と自分に強く言い聞かせています。
逃げた結果の値引きは、
結果として自分の首を絞めます。
自分の首を絞めた結果は、商品力・サービス力の低下という形で
最終的にお客様にも跳ね返ってしまいます。
そして商品力・サービス力が低下すると
さらに顧客の離反につながります。
お金をもらうのが苦手な人は、ここを逃げずに、
まず自分自身と戦っていただきたいと思います。
「高い!」と言われたら、折れて値段を下げる前に、
「自分の提供している価値が、相手に伝わっていない」
という部分を反省するのが、正しい順番かと思います。
もちろん、ちゃんと価値のある商品を提供しているのが大前提です。