先日は事業承継の「引き際」について書きましたが、
承継すべきものは、何も経営者に限りません。
経理業務の承継
小零細企業の場合、
その会社の経理は誰がやっていることが多いでしょう?
最初の段階から第三者の経理社員さんや
パートさんにお願いしている方もいらっしゃると思いますが、
そのほとんどは自分、
もしくは親族がやっているだろうと思います。
特に経営者の配偶者がやっているケースが
最も多いんじゃないかと思います。
うちの会社はというと、
基本私がやっていて、
本当に部分的に私の妻がやってくれています。
そして少しずつ引継ぎしていけたらと思っていますので、
まさにこのケースに当てはまるわけです。
そして経理業務は何も、
請求書や領収書を整理して、
会計ソフトに入力するばかりが仕事ではありません。
むしろ最も重要なのは「支払」です。
実際にお金を取り扱う瞬間ですから、
ここをなかなか第三者に依頼するのに抵抗があって、
結果として配偶者がやっていることが多いのです。
そして会社によってはそれほど必要ないかもですが、
必要な会社にとってはもっと大切な「資金繰り」。
どの通帳にどれだけの残高があって、
どれだけの入金があって、
どれだけの支払いをするので、
この通帳からあの通帳にお金を移動しなければ、とか、
実際にひっ迫したときには、どのように工面するのかということを
経営者と一緒に考えていく必要があります。
ですから経理業務と言うのは
単に記帳をしてお金を取り扱うだけでなく、
経営の中枢に近い部分に携わっている、
ということなのです。
そしてこの大切な業務の承継に
意外と手抜かりがあったりするのです。
いつまでもできると思わない。
経営者の配偶者がやっている場合、
たいていは、経営者と年齢が近いものです。
ですから経営者の引退のタイミングは、
経理をやっている配偶者の引退のタイミングでもあるのです。
しかしそこの部分の方向性がイマイチ定まっていなくて、
ずるずると後回しになっているケースをよく見かけます。
うちの顧問先でも3件くらい、
「どうするんですか?そろそろ方針定めませんか!」
と定期的に声をかけている先があります。
経営者自身の承継に手を取られて、
経理の承継にまで思考がまわっていない、
というか後回しになっている、
というのが現実のようです。
しかし、経営者ほどではないとはいえ、
経理の業務もいつまでもできるわけではありません。
数字とお金を扱う仕事なだけに、
やはり早いうちに承継するに越したことはないのです。
経理や総務などの事務周辺の業務は
ITの進歩も早いですから、
世代交代を進めることで大きく効率化も進みます。
これを機会に第三者に。
問題は、誰に承継するか、
ということ。
経営者の承継と、全く同じ問題です。
経営は息子が承継してくれたとしても、
その奥さんが、経理をしてくれるとは限りません。
嫁姑問題がこんなところに影響を及ぼすことすらあります。
もっと息子の妻を信じてあげればいいのに、
と思うのですが、
「うちの嫁は、なんたらかんたら」
ということで、
貴重な引き継ぎ手にNGが出るなんてことも、
実際にありました。
もちろん後継者にとっても、
自分の配偶者がやってくれると、
これほど心強いこともないのですが、
逆に「同じ職場で働きたくない」
というケースも、ままあります。
こんなときは、これを機会に
第三者に経理を託すのも有効な手段です。
これまで親族に託していた会社は、
それを第三者に、というのはどうやら抵抗があるようですが、
最悪現金の取り扱いの部分だけ経営者一族が握っておくということも
可能でしょう。
理想は信頼できる人を雇用して、
すべてを任せるというのがベストですが。
ただ、第三者に任せる場合、どうしても残るリスクが、
突然やめてしまう、ということです。
これが経営者の配偶者であれば、そんなこともないのですが、
第三者ですから、家庭の都合(特にご主人の転勤など)で
辞めてしまうのを引き留めることはできません。
小さい会社でそのリスクヘッジのために
経理をもう一人雇用する余裕もありませんし。
しかし今はITの進歩で、
リモートワークを進めることもできます。
幸いなことに経理は、比較的リモートワークに親和性のある業務です。
うちの顧問先でも、
まさにご主人の転勤で、
優秀な経理のパートさんの退職の危機がありました。
しかしここでリモートワークの仕組みを整えて、
本人はずいぶん遠くに行ってしまいましたが、
これまでと遜色ない状態で
経理を引き続きやってくださってます。
経営者はもちろん助かりますし、
そのパート社員さんにとっても、
見知らぬ場所でまた一から仕事を探して、
慣れぬ職場で慣れぬ仕事を始めることを思うと、
とてもメリットが大きいものです。
工夫次第でいろんなことが解決できる世の中。
「ムリ」という発想で思考停止になるのではなく、
どうやったら解決できるかな、
ということを考えてみてください。
クリアしなければいけない課題を一つ一つ洗い出して
それを一つ一つ解決していくことで、
多少の妥協をすれば実現できることは、
結構たくさんあるものです。