そのままマネしてもうまく行かない理由。

よく「他社の成功はマネしてもうまくいかない」といいます。
失敗は同じことをしたら、だいたい失敗するのですがw
それではなぜ、そのままマネしてもうまくいかないのでしょう?

強みが違う

成功している、儲かっている、うまくいっている会社は、
きっとそのためにいろんなことを考え、
いろんなことにチャレンジしています。

やってみたことが偶然当たった、という会社もあるでしょうが、
だいたいそういうものは長続きはしません。

ですからちゃんと継続的に利益を出している会社は、
しっかりとした戦略・戦術のもと、その結果を作り出しています。
そしてその事業戦略の最も基本となるところが、
「強み」です。

起業したの会社であれば、その強みは
おそらく経営者に帰属・起因したものでしょう。

「いやいや、社外だけれど周囲に優れた人がいるからだよ」
とこともあるかもですが、そういった人との関係をつないでいることも
その経営者自身の強みです。
小零細企業であれば、創業から何年経っても
その強みは経営者によるところが大きいはずです。

しかし、ある程度歴史を刻んでくると、経営者に起因するものだけではなく、
その会社のこれまでの歩みの中から、生まれたもの、滲み出てきたもの、
となっているはずです。

事業が成功するには、その事業内容や戦略等が
その強みの上に構築されたものであることが必須条件です。
そして強みがその会社の経営者と歴史から生み出される以上、
会社ごとに強みの有り様は絶対に違うはず。

つまり人マネをしてその戦略・戦術等を自分の強みの上にそのまま乗っけても
うまく機能するはずがないのです。

文化が違う

「文化」というと非常にあいまいなものですが、
歴史のある会社にも、若い会社にも、
それなりにその会社なりの文化や風土という物は必ず存在します。
確かに歴史が長ければ長いほど、
確実に根付いているものではありますが。

小零細企業であればそれがどのように作り上げられていくかというと、
そこは強みとだいたい同じで、
まずは経営者の考え方が大きく影響します。

どんな思いで創業したのか。
何を目的に事業を行っているのか。
どんなことを良しとして、どんな考え方を嫌うのか。
そしてその経営者自身がどんな性質・資質をもっているのか。

こういったものが会社の隅々に行き届き、広がっていって
企業文化ができあがっていきます。
その後社員の人数が増えて、経営者が会社に及ぼす影響力が薄れてくると、
少しずつ変質して、文化・風土として根付いていきます。

そしてこの文化・風土というものは、
全くバカにできません。
これによってそれぞれの組織にはまるもの、受け入れられるものが
全く異なってくるのです。

私の会社の税理士部門である「税理士法人トレイス」は
元々3つの税理士事務所が一つになったもの(今は4つになりました)。
しかしそれぞれにすでに企業文化ができあがっていたので、
今でも独立採算で、それぞれの運営方法に互いに口を挟むことはありません。

ある意味「一つの組織」と呼べるものではないかもしれませんが、
この状態でも一つの法人でやることの目的はある程度達成されているので、
今のあり方を継続しています。

つまり何が言いたいかというと、
他の会社の取り組みでうまくいったものを
そのまま会社に持ち込んでも、うまく行くとは限りませんよ、
ということ。

例えば、全社員に社内改善アイデアを求めるにあたって、
「どんなアイデアでも、たとえそれが採用されなくても、アイデア一つにつき500円支払います」
という形で日々ものすごい量の改善アイデアを集め、
成果を上げている会社があります。
それを聞いて「これはいい!」と思って自社に導入したとて、
誰も何一つアイデアを出してこない、なんてこともあります。

そしてそういう事態になったときに
「なんでお前ら、何のアイデアも持ってこないんだ!」
と憤慨してもしかたありません。
良い悪いではなく、そういう手段ではアイデアが集まってこない、
そういう風土の会社である、ということです。

やりたいことが違う

小零細企業においては、いつもお話ししていることではありますが、
その事業展開・事業領域を考えるときに、
それが経営者自身がやりたいことであることが
とても大切です。

他の会社がある事業を展開して、とても儲かっているので、
それを見て自分の会社でもやってみよう!と
短絡的に考える経営者がたまにいます。

しかし多くの場合失敗します。

もちろんこの失敗の理由は、前述の
「強みが活かされない」
「企業文化に合わない」
ということでもありますが、
実は経営者自身がその事業を心からやりたいわけではない、
ということも大きく影響します。

「いや、本当にやりたいんだよ」とおっしゃるかもしれませんが、それは
「(いや、儲けたいんだよ)」という本音が美しい形で表出しているだけです。

「その事業をやりたい」というのは、そんな金銭的な意味ではなく、
その事業を行うこと自体が楽しいんだ、とか、
その事業を通して社会を変えたいんだ、とか
その事業を行うことで喜んでもらいたいんだ、とか
そういったことです。

事業には当然のようにそこには競合というものが存在しますし、
競合とは関係なく、思わぬ形でうまくいかないことがたくさんあるものです。
ですからどんな事業でも成果をあげるには、
自社なりの独自性が必要ですし、
粘り強さが必要です。

心の底から楽しめるものであれば、
それを突き詰めることができます。
しかし人間、「儲けたい」という思いだけで、
なかなかそこまで力を注ぐことができません。
結果非常に中途半端な事業となり、失敗に終わってしまうのです。

他社の成功をマネしてもうまくいかない理由を述べてきましたが、
とはいえ、他人・他社の成功や成果から学ぶことは大切なことです。
まずは実現するスピード感が大切ですから、その意味で
まずはそのまま受け入れてパクってしまうこともありでしょう。
しかし問題はその先です。

どのように変換したら自社でうまく機能するのだろう?と考え、
自社なりのカスタマイズを積み重ねていくことによってはじめて、
その人マネは自社の成果につながるのだろうと思います。

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