ピーター・ドラッカーが「事業の目的は、顧客の創造」と言った通り、
顧客を創出することは事業の根幹です。
売り上げがなければ事業継続はできませんから。
だから常に企業は、顧客を求めて活動するわけですが、
新規の顧客を獲得するために努力をするものの、
優良顧客を育てることにはあまり力を注げていないように思います。
しかし、本当に会社に利益をもたらしてくれるのは、優良顧客です。
優良顧客とは?
それでは優良顧客の定義とはなんでしょう?
顧客について、
縦軸に忠誠心、横軸に満足度とした
マトリックスを作成してみましょう。
このとき、ロイヤルティが非常に高く、かつ満足度が非常に高い
という位置にいる顧客が
一般的に「優良顧客」と呼ばれるものと考えていいでしょう。
ここでいう「ロイヤルティ」とは、
よその会社やお店に浮気せず、
自分の会社から商品を買い続けてくれることを示します。
そして「満足度」は、そのままですが、
顧客が実際に商品サービスを購入したときに感じている
満足度の高さを示しています。
この両者が極めて高い人。
それが一般的な優良顧客です。
ただそれだけで優良顧客という風に決めつけることができるかというと、
決してそうではありません。
例えば私の会社(税理士事務所)では、
どれだけ離反をしなくて満足度が高いとしても、
納税意識が低い顧客を優良顧客とは呼んでいません。
つまり、業界によって、
もっというと会社によって、
「優良顧客」の定義は、それぞれ全くことなるのです。
今回のテーマは
「優良顧客を大切にして、増やす努力をする」
ということですが、
これを考えるためには、まず
「自社にとっての優良顧客とはどういった顧客を指すのか」
ということが定義づけられていなければ、
何も始まらないのです。
本当に自分の求めているものがわかっていないと
それを得ることが出来ないのと同じこと。
まずは自社の「優良顧客」というものを、
できるだけ具体的に定義付けましょう。
なぜ優良顧客が大切か。
それではなぜ優良顧客が大切なのか、
ということを改めて考えてみましょう。
顧客は基本的に、
いきなり自社の顧客になるわけではありません。
まずこの世界で生活しているすべての人、
これを「生活者」と呼びます。
そしてこの「生活者」のうち、
自社の商品・サービスを求める人を「消費者」と言います。
さらにこの「消費者」のうち、
自社が商品を売りたいと思っている人、
これが「ターゲット」です。
さて、問題はここから。
このターゲットに、まずは
「見込み顧客」になってもらう必要があります。
簡単に二行で表わしてしまいましたが、
これがなかなかに大変なことです。
そして見込み顧客になってもらった方が、
最終的に自社の商品を選んでくださったとき始めて、
その見込み顧客は「顧客」となります。
こうやって考えていただいたらわかる通り、
一人の顧客を得るためには、
そこに至るまでに様々なハードルを越えていただく必要があって、
そのために会社は
様々なプロモーションや販促活動を繰り広げる必要があるのです。
もちろんそこには手間暇も、労力も、時間も、お金もかかります。
ですから常に新規顧客だけを求め続ける会社は、
永遠に労力と時間とお金をかけ続けないといけないのです。
そこで「優良顧客」の登場です。
優良顧客はまず、自社に対するロイヤルティが高い、
つまりリピーターであり続けてくれるのです。
リピーターは、さほど労力をかけずともまた購買してくださる顧客ですので、
常に「顧客」であり続けてくれます。
そして満足度も高いため、
自社の提供する商品に対して、
きちんとその価値に見合う対価を支払ってくれます。
ヨソとの比較、という世界ではありませんので、
値切られることも少ないでしょう。
またロイヤルティも満足度も高い人は、
自分だけが購買するのではなく、
口コミで自社の存在を広めてくれたり、
直接新規の顧客を連れて来てくれたりします。
つまり「ターゲット」→「見込み顧客」→「顧客」というハードルを軽々と超えて、
いきなり「顧客」に到達する人との接点を生み出してくれるのです。
ですから、優良顧客は、常に新規顧客を求め続けるのに比べて、
格段に労力・時間・お金をかけず、顧客を創出し続けてくれる存在なのです。
めちゃありがたいですよね。
優良顧客を増やすために。
さて優良顧客の大切さがわかったところで、次は、
優良顧客を増やすには、どのような考え方で戦略を立てるか、
ということです。
具体的にどのような行動をするか、というのは
業界ごと、会社の方針ごとで様々ですので、
ここではそこに至るまでの考え方をお話しします。
このときに、先ほどのマトリックスが生きてきます。
縦軸にロイヤルティ、横軸に満足度、でしたね。
するとマトリクスですからこれで4つの象限が生まれます。
①ロイヤルティが低く、満足度も低い顧客
②ロイヤルティが高いが、満足度が低い顧客
③ロイヤルティは低いが、満足度は高い顧客
④ロイヤルティも満足度も高い顧客
この4つに区分して、このうち①~③のそれぞれが、
④に辿り着いてくださるために、どのような取り組みができるのだろうか、
ということをそれぞれで別個に考えるのです。
例えば②を④にひきあげるためには、
満足度をあげる必要があります。
そこで②はなぜ満足度が低いのか、という現状を分析し、
「その満足度を高めるために、どんな取り組みを実行しようか」
ということを立案し、実際に行動するのです。
そして④にいる顧客はもともと優良顧客である可能性が高いのですが、
だからといってこのまま放置はいけません。
いまよりもっとロイヤルティを高めるには、もっと満足度を高めるには
どうすればいいのか。
これを考えるのです。
④のこの2つの要素がもっと高まれば、さらに優良顧客として
自社に貢献してくださる度合いは高まっていくわけですから。
これが優良顧客を創出する戦略、
「ロイヤルカスタマー戦略」
です。
ぜひ、新規顧客ばかりをもとめるのではなく、
既存顧客に目を向けてみて、
一人でも多くの優良顧客を、
そして今よりもよりコアな優良顧客を、
作り上げていきましょう。
それが会社をより安定した状態へと導いてくれるのです。