今日は、資金調達に関するバックナンバーを。
税理士・コンサルとして現場にいるとよく耳にする、
「どんな方法で、買ったらいい?」というお話しです。
--- 以下、2021/10/11の記事より ---
よく顧問先に、「設備投資するけど、リースがいいの?購入がいいの?」と尋ねられます。
その辺りを今回はお話しいたします。
目次
資金調達は大きく分けて3種類
設備投資の資金調達の方法として、3種類が考えられます。
①自己資金
②銀行借入
③リース
です。
このうち①と②は購入、ということになります。
ここでたまに聞く勘違いが、
「購入するとなかなか経費に落ちていかないから、リースがいいんじゃないかと思うのですが・・」
というお話しです。
結論からいいますと、完全なる勘違いです。
むしろ基本的には購入の方がさっさと経費に落ちてくれます。
実際に支払っているわけですから、それが経費にならないなどということはありません。
その仕組みについてはこの後お話しするとしまして、
これらをどのような基準で選択するか、ということです。
総支払額で判断する
「購入すると経費に落ちにくくて、リースは落ちやすい」
というのは大いなる勘違いであって、
支払った金額はすべて経費に落ちます。
つまり、長い目で見れば、経費に落ちる落ちないでの損得は同じということです。
ということはどこで判断するかというと、
ずばり「総支払額」です。
リースは、資産をリース会社が購入し、これを貸し出すという仕組みですから、
リース会社の利益が乗っかっています。
そしてリースの利率というのは通常結構高めに設定されています。
という考えからすると、最も支出額が少ないのは当然、
①の「自己資金」ということになります。
設備を購入するときに妙に販売会社がリースを進めてくることがあります。
ですのでリースがお得なのか?!
と一瞬思えてしまうのですが、
おそらくこれはリース会社から販売会社に
一定の手数料が入る仕組みになっているんじゃないかと思います。
「総支払額」だけで判断するのであれば、
「自己資金での購入」一択です。
一度ちゃんと双方でどれだけの差が出るのか確認してみてください。
リース期間が長いほど、思った以上の金額差であることがわかると思います。
資金繰りで判断する。
次の判断基準は「資金繰り」。
つまりキャッシュフローですね。
自己資金での一括購入が支払額が少ないのはわかるけど、
支払うお金がない、
またはお金があるとしてもそれだけの支出をしてしまうと
資金残高的にちょっと不安、
という場合です。
この場合は残りの、
②銀行借入と③リースのいずれか、
ということになるのですが、
実はこの場合でも②銀行借入を選択されるのが
総支出額としては有利になることが多いのです。
もちろん銀行と折衝してみてどんな利率が出てくるかによるのですが、
通常は銀行利率よりもリースの利率の方が高く設定されています。
さて、それはなぜでしょう?
よく考えたらわかることですが、
それは「貸出側のリスク」が違うからです。
銀行借入の場合は、信用保証協会の利用であったり、
そもそも代表者が保証人になっていたり、
不動産が担保に入っていたり・・・という形で、
返済ができなくなった場合に銀行が取りっぱぐれないよう、
いろいろなリスクヘッジが施されています。
その分低い利率で設定することが可能となります。
一方リース会社はどうでしょう?
もし途中で資産を貸している会社が倒産してしまったら、
リース会社は貸していた資産を引き上げて
それを資金化することしかできないのです。
銀行借入に置き換えると、
「貸し出す資産だけを担保にいれている」
ような状態なのです。
非常にリスクが高いことがよくわかりますよね。
したがって、リースは銀行借入よりも比較的高い利率が設定されているのが通常なのです。
これも実際に双方見積りを出してもらって判断していただけたら
比較的簡単にわかります。
遠慮なく見積を要求して、冷静に総支出金額で判断しましょう。
それでは、なぜリースが存在するのか
それでもリースが存在するというのは、
それが有利だからという局面があるからですよね。
これには2つほど理由があります。
一つは、「お金もないし、銀行もお金を貸してくれない」という場合です。
そんな場合でも、案外リースであれば通ります。
つまりリースというのは、最終手段なんですよね(笑)
そしてもう一つは、
リースにいろいろな特典がついている場合です。
リースで借りる資産の種類によっては、
そのリース料の中に一定の修理代が込まれていたり、
保険料が込みになっているケースがあります。
その資産を使い続けている間にどの程度修理代がかかるのか、
保険に入る必要がある場合にはその保険料はいくらくらいになるのか。
その辺りをざっくり見積もってみて、総額でリースの方が有利となる場合には、
リースを選択されるのがいいでしょう。
私の経験上そのようになるケースはあまりないですが。
だって結局リース会社が儲けないといけない仕組みになっているわけですから。
その儲けはどこから出ているのか、ってことですよね。
結局はどこまでいっても「支払総額」が基準となります。
会計の仕組み
少し難しい話しになりますが、
購入(自己資金・銀行借入)の場合と、リースの場合で、
会計の仕方と経費の落ち方に違いがあります。
自己資金での購入の場合
まず自己資金で購入の場合は、購入した金額で貸借対照表に資産として計上され、
そこから減価償却という形で少しずつ経費に落ちていきます。
その期間は「耐用年数」として税法で定められているわけですが、
機械装置や車両や器具備品は「定率法」という計算方法で減価償却費が計算され、
この方法による計算だと、最初の方にたくさんの金額が経費に落ちて、
年々減価償却費が減少していく、という仕組みになっています。
そして償却年数が完了したときにはほぼ全額が経費に落ちています。
※自己資金での購入の場合の具体例
車両の金額 150万
耐用年数 5年 の場合
償却費 支出額
1年目 60万円 150万円
2年目 36万円
3年目 21.6万円
4年目 16.2万円
5年目 16.2万円 支出総額 150万円
資金を借入して購入の場合
次に借入の場合ですが、この場合でも購入に変わりはありませんから、
先ほどの購入の場合と同じように「減価償却」という形で経費に落ちていきます。
したがって、いつどれだけ経費に落ちるか、は全く変わりません。
違うのはお金の支払いのタイミングです。
購入の段階では借入したお金で支払っていますから、
その支払いが借入期間で分割払いになっている、という違いですね。
※ 借入で購入の場合の具体例
車両の金額 150万円
耐用年数 5年
借入金 車両金額全額 5年返済
償却費 支出額(返済額)
1年目 60万円 30万円
2年目 36万円 30万円
3年目 21.6万円 30万円
4年目 16.2万円 30万円
5年目 16.2万円 30万円 支出総額150万円+利息
※上記に加えて信用保証料が必要になる場合もあります。
リースの場合
最後にリースですが、これも支払総額が貸借対照表に資産として計上され、
同じ金額が負債に「リース債務」という名称で計上されます。
お金を借りて購入した場合も、購入した金額が資産に計上され、
借り入れた金額が負債に計上されますから、
結果それと同じ形になるんですね。
そしてその後減価償却という形で経費に落ちていきますが、
ここで違うのは、リースで購入した資産については、
そのリース期間に応じて定額に分割した金額が減価償却されるということです。
※ リースの場合の具体例
150万円の車両に対し、リース料総額が160万円
リース期間 5年
償却費 支出額(リース支払額)
1年目 32万円 32万円
2年目 32万円 32万円
3年目 32万円 32万円
4年目 32万円 32万円
5年目 32万円 32万円 支出総額160万円
まとめ
さて、だいたいご理解いただけましたでしょうか。
整理しますと、
・お金があるなら、全額自己資金で一括払いで購入
・一括払いすると手元資金に不安があるなら、銀行借入して一括払い購入
・銀行借入が難しい場合に、ようやくリース。
ただし、リース契約に一定の修理代と保険料が込みになっている場合は、支払総額で冷静に判断
ということになります。
リースは中途解約できませんから、
事実上お金を高めの利率で借りて買っているのと変わりません。
なんだか得っぽいからリース、というのはやめましょうね。
ただし借入の場合は審査がリースよりも時間がかかる場合が多いので、
購入予定の日よりも早めに銀行担当者に相談するようにしましょう。