繁忙期をできるだけ作らない理由

今年も年末の足音が聞こえてきました。
我々税理士は、ここから「繁忙期」に入ります。
しかし私は極力「繁忙期」を作らないような意識をもって事務所運営しています。

せっせと働くアリたち。よく言われる「下2割」はサボっているのではなく、休憩している。

税理士事務所の繁忙期

税理士事務所は
 12月に年末調整
 1月は年末調整の残務からの法定調書
 2月3月は個人の確定申告
 4月はそのしわ寄せがきて、
 5月には3月決算法人の決算申告
ということで、
事実上半年間繁忙期です。
これを「繁忙期」と呼んでいいのかわかりませんが。

お客さんに迷惑がかかる

繁忙期をつくらない、つくりたくない理由はいろいろあるわけですが、
その中で一番大きいのはこれ。

この仕事をしていると、
どうしても顧問先から突発的かつ大切な依頼を
受けたりすることがあります。
繁忙期があると、顧問先もそれを理解してくれていて、
「今、忙しいだろうから、申し訳ない」
と思って気を遣ってくださることになってしまいます。

たまたまいろんな仕事が重なって、タイトになっているときに
お気遣いいただけるのは非常に助かりますし
とてもありがたいことですが、
繁忙期があることで
お客様である顧問先から気を遣っていただくということは
極力減らしていきたいところです。

さらには、やはり3月決算法人というのは
他の月に比べて多少多くなるわけですが、
3月決算法人が決算対策や次年度の経営計画を策定するのに
最も大切な時期が2月~3月となります。
しかしこれは税理士事務所最大の繁忙期「確定申告」と
完全に重なります。
この顧問先にとって最も大切な時期を
自らの繁忙期で顧問先にちゃんと関われないのは、なんだかなぁ、
と思います。

だから、個人事業の顧問先はこれ以上増やさないようにしています。

ルーチンが乱れる

私には毎日のルーチンがあります。
朝4時に起きて(どれだけ遅くても4時台)
まずは顔を洗うなどの朝の営みをして、
今日のスケジュールとこの先一週間の仕事のスケジュール調整、
「やらないことリスト」を確認、
昨日の分の経理をして、
ブログを書きます。

これら一連の流れがあると、
その日の仕事にスムーズに入っていけます。
これが繁忙期を作ると、
なかなかに維持することが困難になるのです。

繁忙期は、日常の仕事に
その季節ならではの別の仕事が乗っかってくることで生じます。
日常もそんなにヒマしてるわけではありませんから、
その上に季節性の仕事が乗っかると必然的に
スケジュールに追い立てられるのようになってしまい、
ルーチンがおろそかになってしまうのです。
結果として徐々にペースが乱されることとなってしまします。

だから、毎日のルーチンと仕事のリズムを維持するために、
繁忙期は極力抑え込みたいのです。

チャレンジできない期間が生じる。

仕事の時間は
①徹底的に効率化して無駄を省き、
 稼ぐべき収益をさっさと稼いでしまう時間
②投資に充てる、成長のための時前向きな時間
③将来新しいものを生み出すための空想妄想にあてる無駄な時間
で構成されていると思っています。

このうち経営者でもある私にとって②と③は非常に大切で、
一日が①だけで満たされるととても儲かるわけですが、
将来への成長は削がれてしまうわけです。
とくにこの③の時間は大切で、
この一見「無駄な時間」が実は新たなチャレンジの時間でもあり、
イノベーションが生まれる時間でもあるのです。
繁忙期が半年もあると、
半年間②と③ができないということになり、
これはありえないと考えています。

「無駄」が将来への種をまき、将来の効率化を生み出してくれる。
「無駄」という言葉は、非常に深いものがあります。

自分がしんどい

そして、やっぱりこれです。
自分がしんどい。

仕事は好きではありますが、
私はプライベートとのバランスをとても重視する人間ですので、
ずっと仕事ばっかり、特に先ほどの①ばかりだと、
気持ちに余裕がなくなっていくのがわかります。
自分自身が削られていくのを感じるのです。
こんな状態にはしたくないので、繁忙期はつくりません。

また顧問先から突発的に依頼される仕事は、
それがどんなタイミングであっても
顧問先のことを考えると、果たさないといけませんから、
繁忙期があると、突発的な仕事が飛び込んでくること自体が
強烈なストレスを生みます。
これは「突発的な仕事」のせいでストレスになっているのではなく、
「繁忙期」がストレスを生み出すもとになっている、
と考えるべきです。
したがって除外すべきは「繁忙期」、ということになります。

繁忙期を作らないために

税理士事務所にとっての繁忙期は先に述べたとおりです。
したがって、繁忙期ををなくすためには、
・個人の確定申告の仕事を極力受けないこと
・3月決算を少なくするということ
・年末調整を減らすこと
がポイントとなります。

前二つはまだコントロール可能ですが、
年末調整を減らすのは、なかなか難しいところです。
顧問契約にはほとんどセットになってきますので。
しかし個人の確定申告は引き受けなければ済むことですし、
今後の取り組みである、
「単価を上げて、顧問件数を減らす」
ということが3月決算を少なくすることにもつながるだろうと思います。

あとは
「税務以外の仕事を増やす」
ということです。
経営コンサルタントとしての仕事や、
セミナーの仕事などがこれにあたります。
税務に関わりませんから、年末調整は発生しませんし、
法人の決算も関係ないですし、
税務調査にも関わる必要がありません(これは繁忙期とは関係ありませんが)。

このように、極力繁忙期をつくらない方向でやっています。
今後さらに均等化できるようにしていく予定です。

税理士ですから、税務から完全に離れていくようなことはしません。
これが顧問先の求めているものでもありますから。
しかしそこだけに頼らない仕事のありかたを、
さらに押し広げていければと思っています。
あくまでこれは私の意見ですから、
繁忙期を作ることが必ずしも悪いことではありません。
業界によってはどうしようもないこともありますし。

しかし税理士が「税理士業」の範疇だけで物事を考えていると
そこから絶対に脱却できないのと同じように、
ほかのどんな業種でも、
「その業種の当たり前」から離れられないと
変革は起こりません。
自らの業界にしっかりと根ざしながらも、
業界の常識にとらわれない考え方で事業を展開していきたいものです。

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