社会問題はビジネスになるのか。

いわゆる「ソーシャルビジネス」と言われるものがあります。
皆さんご存じでしょうが、これは、
世の中の社会問題を解決するビジネスのことをいいます。
しかし、なかなか事業を維持できなくて消えていくこともしばしば。

社会的ニーズがあれば、それはビジネスになるのか。
そのための条件はなんなのか。
この辺りを考えてみたいと思います。

社会問題はビジネスになりえる。

事業(ビジネス)というものは、いつもこのブログでお話ししている通り、
求められること(使命)、やりたいこと(ビジョン)、出来ること(能力)
の接点に生まれます。

やりたくても、できなければ事業にはなりませんし、
できることでもそれを社会が求めていなければ事業として成立しません。
また社会的ニーズがあって、それができることであったとしても、
やりたいことでなければ事業として深まっていきませんし、継続できません。

しかし、事業領域がまずは
「社会が求めていること」
を基軸にしていることからすると、
社会が抱える問題は、その解決が望まれていますから、
基本的にはビジネスになりえます。

逆に言うと、社会が求めていないものはビジネスにならないわけですから、
あらゆるビジネスというものは基本的にソーシャルビジネスであると
いうこともできます。
個人が求めているものであるとしても、
その個人の欲求を満たすことが社会的に問題があることであれば、
それは儲かることかもしれませんが、事業と呼ぶにふさわしいものではないのです。
(極端な例としては、非合法の高利貸しや、麻薬の売人など)

そんな意味ではやはり、
個人消費者がそれを求めているということも大切ですが、
同時に社会的にも意味がある、ということが、
ビジネスにおいては大切なのだろと思います。

近江商人の「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」などは、
まさにそれを端的に言い表した言葉です。

なぜビジネスになりにくい社会問題があるのか


そんな世の中の社会問題、これを解決しようと立ち上げるも、
なかなか軌道に乗らず、そのまま消えていくようなビジネスを
私はこれまで、たくさん見てきました。

このような事例は、本当にたくさんあることだろうと思います。

間違いなく社会問題であり、その問題を解決すること自体が、
社会に対して大きな意味を持つ、そんな事業であっても、
消滅していってしまうのです。

それではなぜそんなことになってしまうかというと、
もちろんそれは、収益性の問題です。

社会問題の解決として価値があることだとしても、
それによって利益を享受する人たちが、お金を支払うことが
できない場合に、こういったことが生じます。

例えば、大学生と企業のベストマッチングの就労を支援する会社があるとします。
その便益を受けるのは、もちろんまずは支援を受けた大学生ですが、
大学生はそのサービスに対して支払いをする能力は乏しいものです。
世の中の「ボランティア」という形で成立しているものはほとんどが、
こういったものであると考えて差支えないだろうと思います。

社会問題の解決だけれども、それに対して対価が発生しにくいため、
収益を得ることができないので、
ボランティアという形でしか成立しえないのです。

長期にわたって維持継続できているボランティアは、
その活動のための収益を、
そのサービスを提供する相手とは別のところから得て運営しています。

それが国や地方公共団体などの公からの補助金であったり、
私人からの寄付であったり。

社会問題を解決しようとしても、
結局これらの支援を得ることができなければ、
その活動を維持することができず、消えていくのです。

社会問題解決がビジネスになる条件

かといって、補助金に頼ってビジネスをしていくというのはどうでしょう?
それが社会福祉法人など、継続的に公から収入をもらえることが
確定しているものでしたら問題ありませんが、
そうでない補助金事業であれば、
それは来年以降も継続することができる収益とは限りませんので、
非常にリスクが高いものです。

特にそれを人件費に充てるような計算をしている場合には、
その補助金が終了してしまった段階で、
あっというまにthe Endです。

ですから社会問題解決が事業として成立するためには、
その対価の支払い、またはその活動資金の資金が、
確実に見込まれるようなビジネスモデルとして構築される必要があります。

先ほどの大学生の就労支援を例にあげると、
これを学生からの支払いと、公からの補助金で賄うイメージだと、
決して長続きはしません。
その理由はこれまでお話ししてきたことで、ご理解いただけることかと思います。

となると別の方向から対価を得る必要があります。
このビジネスモデルで考えるならば、
マッチングで大学生を雇用することのできた会社でしょう。
会社自身が求人活動をすることよりも、的確な人材雇用が実現できるならば、
そこに一定の対価を発生させることが可能かもしれません。

とある経営者が、公からも生徒からも一切お金をもらわない学校を作る、
という計画をされているのを聞いたことがあります。
日本は子供の教育にお金がかかり過ぎるということで、
その社会問題の解決の手段として、
教育にお金がかからない社会をつくるという志のもと、
このようなプランを立てておられました。
それではその収益はどこから得るかというと、
その学校を卒業した生徒を雇用する企業からお金をもらう、
というビジネスモデルでした。

学校では、本当に社会に出たときに必要となる能力を身につける人材を育成し、
その卒業生を雇用する企業は、そんな即戦力を得るために対価を支払う、
ということです。
この企画が現在どのようになっているかはわかりませんが、
実現できれば素晴らしいことでしょう。

このように、確かな収益を得ることができる算段が立ってこそ、
社会問題解決事業は、ビジネスとして成立するのです。

特にソーシャルビジネスの起業家は、
その社会問題を解決するという高い志ばかりが先行し、
収益性がないがしろになっていることが多いように思います。

そしてこれはソーシャルビジネスでなくても同じこと。
自分の思いが強いばかりに、
事業を立ち上げたくて立ち上げたものの、
その収益の読みが甘い、ということは、結構見受けられます。

どれだけ志が高かろうと、ビジネスは継続できてこそ。
そのためには、どのようにして収益を継続的に確保するか、
そのビジネスモデルが明確にできあがっていてこそです。

崇高な理念を掲げることは大切ですが、
そこばかりに囚われず、
具体的にどのようにしてどれだけの収益と利益を生み出すのか。
それを説得力のある形で、他人を納得させられる形で
説明できるようになった状態で、ビジネスをはじめましょう。

それが今自分に欠けているな、と感じたならば、
早急にこれを構築しましょう。

まずは売り上げてこそ、儲かってこそ、です。
社会から評価される「良い会社」というのは、
その先に広がっているものなのですから。

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