「忙しい」は経営資産の消耗である。

経営者は、忙しいものです。
基本的に経営者の仕事に際限はありませんから。
しかしその「仕事」の内容によって、それは「消耗」へとつながっていきます。

その「忙しい」は何なのか。

他の経営者とかから「忙しくしてますか?」と聞かれることが
結構あります。
そんなときには、「まぁ、ぼちぼちです」と答えるようにしています。

「忙しいです」というのは、結局自分自身が時間管理をミスっているわけで、
そう答えること自体が恥なんじゃないかと考えているからです。

その回答次第で相手に時間を奪われそうになるときは敢えて
「忙しいです」と答えることもありますが(笑)。

経営者は、忙しい生き物です。
自分自身でやりたいこと事業があって経営をしているわけですから。
もし承継者で「やりたいことやってるわけじゃないよ」
ということでしたら、それはそれで別の問題があると思ってください。

そして「やりたいこと」がある以上、
仕事の広がりは無限です。
時間が空いたら次のことを考えたくなりますし、
実際に考えますし、
そして実際に行動することになります。

このように経営者は、常に忙しいわけですが、
問題はこの「忙しい」の中身です。

果たしてそれが前述のように、
「やりたいこと」の翼を広げている時間なのか、
ひたすら業務に飲み込まれている時間なのか。
この違いが、大きな違いを生み出します。

経営資産の消耗

残念ながら、私にも繁忙期はあります。
いちおう税理士なので、
忙しさは人並み以下かもしれませんが、
12月~3月、あと5月も繁忙期です。

そして難解かつ手間のかかるスポットが飛び込んでくると、
急にえらいことになったりします。

ただそこは、自分で引き受けるかどうかを基本的には決められますから
裁量権は自分にあります。
それでもどうしても「これは私がやらねば誰がやる!」
という仕事があったりします。
これが先ほどの時期と重なると、本当にえらいことになるわけですね。

「仕事があっていいじゃないか」
と言う方もおられます。
確かにありがたい話しではあるのですが、
そんな単純なものではありませんよね。

同じ「忙しい」と言っても、
経営者自身が業務に追われるだけの忙しさであってはならないのです。
余裕をもって業務をしている間はまだしも、
追われている状態になるとそれは、
ただひたすら目の前のものをこなしているだけ。
経営者としての仕事や思考が挟まれる余地はありません。

すると、経営はまったく前に進みません。
「今、提供できる価値」をひたすらに提供しているだけ。

経営とは、経営課題を解決することで
経営資源を資産化していく活動とも言えます。
しかし目の前の業務をこなすことは、
現在の経営資産をただ単に消耗している状態。

新たな価値が生み出されず、消耗してやがて細っていきます。

時間が次の付加価値を生む

この「業務で忙しい」という状況は、なんとか打破しなければいけないのですが、
現状しっかり利益が確保されていて、
それでも欲張って仕事を受けてしまった結果ということであれば、
答えは簡単で、仕事を引き受けなければいいのです。

「断ると仕事を失ってしまう!」という危機感があるかもしれませんが、
ちゃんと価値ある仕事を提供できているのであれば、ちゃんと次もあります。

問題は足りない利益を補わんとして忙殺されているとき。

これは「忙しいのに利益が足りない」ということで、
そもそも収益性の低いビジネスモデルになってしまっている、
ということ。
つまり「貧乏ヒマなし」状態です。

ここから抜け出すのは、なかなか大変です。

この状態で利益を落とさず時間を作るには、
付加価値を高めるか、効率をあげるか、
この2つしかありません。

それをやってる時間がないんだよ、ということかもしれませんが、
あるとき時間が降って湧くことはないわけですから、
とにかく踏ん張って、
このいずれかもしくは両方を実現するしかありません。

そしてよくあるのが、
その、なんとか無理して作り出した少しの隙間を、
利益が欲しいあまりにこれまでと同じ仕事で埋めてしまうこと。

しかしこれでは、せっかくの時間を
収益性の低いもので埋めてしまうことになってしまいます。
そんなもったいない時間の使い方をしてはいけませんよね。

せっかく空いた、ほんの少しの大切な時間。
これは、
いかにより高付加価値なものを生み出すか、
いかに効率性を高めるか、
ここに投下しましょう。

それによってさらに時間が生み出され、
そしてその時間をさらなる収益性の確保のために
充てることができるのです。

ここからは無限上昇スパイラル。
「貧乏ヒマなし」状態の経営者と、どんどん差が開いていきます。

ですから、まずは一瞬無理して、
なんとか時間の隙間を作りましょう。
そしてその、ほんの小さな隙間を
収益性向上のために充てることが
消耗戦からの脱却の糸口となるのです。

経営者自身が業務に忙殺されているときは、
確かに稼げている気持ちになりますが、
経営資産を消耗している瞬間でもあります。
ぜひとも
「稼いでいる!」ではなく
「ああ、体が細っていく・・」
という感覚を持っていただけたらと思います。

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