私には2つの座右の銘があります。そのうちの一つが「一燈照隅」です。
修業時代に働いていた税理士事務所の所長に教えていただいて、「ああ、これは真理だなぁ」と感じたものです。
ちなみにタイトルは、最澄伝教大師の「山家学生式」からの言葉です。
全部を救えない
私たち一人ひとりでできることは限られています。
どれだけ崇高な理念を掲げたとしても、それを世の中全体にいきわたらせる力など私たちにはありません。
小零細企業であればなおのことでしょう。
だからといって、そんな理念を掲げることは無駄なことなのでしょうか?
あの比叡山延暦寺を開山した、最澄伝教大師はその著書「山家学生式」の中でこう記しているそうです。
「一隅を照らす。これ即ち国の宝なり」
また、安岡正篤氏はこのように言っています。
「一燈照隅 万燈照国」
一人ひとりでできることは、自分の明かりをもって一つの隅を照らすこと。
この程度のことしかできません。
しかし一人ひとりが自分自身の使命を認識して自身の領分を果たすことで、
結果として国全体を照らすことができるのだということです。
だから、ちゃんと使命感を持って自分のやるべきことをしっかり行う人は、
ただそれだけで国の宝となり得る、ということなんですね。
理念に納得感を
事業を行うにあたっては、理念の存在が大切です。
少なくとも私はそう考えています。
社会的な価値がない事業は、「自分一人を稼がせてくれ」ということですので、
そんなあなたを稼がせてくれる人などいないからです。
理念の細かい話しはまた別の機会に譲るとしますが、そんな必要と思われる「理念」もその内容は、
「〇〇を通して世の中の〇〇に貢献します」といった内容です。
正直これが世界に大きな影響を与えるような会社であれば別ですが、
周囲からは「社員1人の零細企業に何かできるんだ」、という突っ込みが入ります。
こんな風に突っ込まれたときに心の中で、「あれ?」と思ったりもするだろうと思います。
しかし、こんなときに思い起こすのが、この言葉です。
まずは自分自身が一隅を照らすこと。
自分にはこれだけのことしかできないが、それだけでいいのだということを認識できます。
『自分がやっていることなんて、たいしたことじゃないんじゃないか』
そんな風に感じたときには、この言葉を思い出してください。
そして自信をもって、「これこそが私の使命だ!」と感じたものに
一生懸命取り組んでいただけたらと思います。
あれやこれやできない
人間はなかなかに無力です。
何度も言うようですが人一人でできることは限られています。
それでも、いろんなことに目移りしてしまいます。
自分のやっていることより、人のやっていることの方が気になってしまいます。
「あんなすごいことやってる」
「あの方が儲かりそう」
「あの方が楽しそう」
ただ人間は無力ですし、時間も能力も限られていますから、
あれやこれややろうとすると全てが中途半端になります。
「一隅を照らす」照度が弱くなってしまうのです。
これには2つの悪い要素があって、
一つは、ちゃんと一隅を照らせていないから、社会貢献度が薄くなってしまうこと。
もう一つは、薄まった結果サービス力・商品力が落ちて事業としての力が弱まってしまうということです。
小零細はこれではやっていけません。
だからこそ、選択と集中。
「一隅を照らす」思いで、一心に一部分を照らし続けましょう。
それがきっとあなたの商品やサービスを際立たせます。
「純潔のマリア」
私のオススメマンガの一つです。
イギリスとフランスの百年戦争の時代の、一人の魔女のお話しです。
戦争が嫌いで、自分の身近に起きる局地戦や村の蹂躙などに対して、それを目にすると魔女の力を発揮してそれを止めたり無力化したりします。
それに対して「神」は「世の理を捻じ曲げる」として主人公の魔女を罰します。
魔女はこういいます「何が悪いのよ!」と。
そしてこの「見守るだけで手をくださない」神と、「自分自身の身の回りの争いをとめているのは、単なる自己満足に過ぎないではないか」と思ったりする自分の間で心が揺れ動きます。
結論まで話してしまうとネタバレになりますのでこの辺でとどめておきますが、
結局これが「一燈照隅」の精神なのではないかと思います。
神と人(ここでは魔女)では役割が違います。
社会全体を幸せにするためには、まず自分自身の手の届く範囲を幸せにすること。
そして手の届く範囲を幸せにするためには、まず自分自身が幸せであること。
こんなことに改めて気が付かされるマンガです。
興味があって、マンガが好きな方はぜひ一度。
ちなみに著者は「もやしもん」で有名な石川雅之さんです。
人は気が付けば自分のことを横に置いといて他人のことを大切にしてしまいます。
もちろんこれはすごく大事なことなのですが、
自分のことを横に置いておく、というのはとても問題です。
自分の不幸のうえに、周囲の幸せは成り立たない、と私は思います。
自分が幸せを感じて、その幸せパワーを元に周囲を輝かせる。
これが長続きする秘訣だと思うのです。