最も幸せな、「会社の出口」を考える。

私の顧問先で15年以上のお付き合いのある、
110年以上の歴史をもつ一つの企業が、
明日、その長い歴史に幕を下ろします。

いろんな複雑な思いがあるわけですが、
そこから考える、会社の「出口」について。

上記会社の主力商品。

会社の「出口」

「会社」と書きましたが、
会社であろうと個人事業であろうと、
事業を開始したからには、その終わりは必ず来ます。

少なくとも現経営者にとっての終わりは、
経営者自身が不老不死でない限り、必ず来ます。

現経営者が事業を始めたり、
事業を引き継いだときを「入口」と考えるならば、
その「終わり」は「出口」となります。

そしてその「出口」は1種類ではなく、
次のような選択肢(?)があります。
・事業承継
・廃業
・倒産
・株式公開
・M&A
このうち、3つ目の「倒産」は事実上選択肢とは呼びませんが、
出口としてはこの5種類があるのです。

さて、あなたの会社はこのうち、どれを選ぶのでしょう?
これが大切です。

会社の存続と、新陳代謝。

先に挙げた通り、会社の出口には5種類あるわけですが、
「倒産」は絶対に回避しなければならない道ですから、
基本的にはそれ以外の4つの道を辿ることになります。

事業承継は、その事業を承継してくれる子供や社員さんが
いてくれることが大前提となります。

株式公開は、上場ということですので、
この道を選択できる会社はほとんどありません。

そしてM&Aはその事業を買ってくれる会社が
現れることが必要ですから、
事業がそれだけ魅力あるものになっている必要があります。

そしてこれらのどれも実現できなかった場合、
または意図して実現しようとしない場合、
「廃業」という道を突き進む、
または選択することになるのです。

そして今、この日本で「廃業」が大きな問題となっています。
経営者の高齢化によりとてつもない数の会社が、
この数年の間に消え去ろうとしているのです。

もちろんその全てが残る必要のある事業ではありませんし、
新しく設立されるベンチャービジネスなどの登場により
一定の新陳代謝も必要です。

しかし会社が消えることで消え去る技術があったり、
また、そこにいる社員が雇用を失うことを考えると、
やはり残るべきところは出来る限り廃業ではなく、
何らかの形で残っていくべきでしょう。

出口を選び、備える。

経営者自ら、
「この事業は私で終わりですよ」
という意思をもって廃業の道を選ぶのであれば、
廃業に備えた準備もできるでしょうし、
その影響を出来る限り少なくすることも可能でしょうから、
それは尊重すべき一つの道です。

それがその会社にとっての「正解」であることも
充分に考えられます。

しかし、廃業以外にも複数の出口が考えられるにも関わらず、
最終的に廃業せざるを得ないことになってしまうのは、
残念と言うほかありません。

経営者は、倒産を除き、
自身の意志でそれ以外の道を選択することができます。

しかしそのためには、
事前に備えておく必要があります。

事業承継の道を選ぶのであれば、
「なんとなく自分が歳をとったから、なんとなく息子が跡を継いだ」
ということではなく、
いつ、誰に承継するのかを出来るだけ早く決定し、
そこに向けて何を承継していくのか、
それを計画して、来るべき日に向けて着実に実行していくことが
求められます。

「なんとなく、継いでくれるだろう」という甘い期待をしているから
いざとなったときに承継者がおらず、
廃業、ということになってしまうのです。

M&Aも「さぁ、M&Aをしよう!」といって
すぐにそうなるものでもありません。
価値なき会社は誰も買ってはくれませんし、
コンプライアンスがぐちゃぐちゃな会社を買ってくれるような
まっとうな会社はありません。

理想的な買い手に引き継いでもらえるよう、
「良い会社づくり」を日々心掛けたその積み重ねの先に、
幸せなM&Aがあるのだと認識して、
備えていただけたらと思います。

冒頭の企業は、どうであったか。

それでは冒頭に述べた、私の顧問先企業はどのようであったかというと、
最終的には廃業、という形をとることになってしまったわけですが、
結果としてこれが全員にとって幸せな形だったんじゃないかな
とも思っています。

これまで、事業承継の道も、M&Aの道も
たくさん探ってきました。

実際、本当に理想的と思える買い手が現れて、
M&Aの実現一歩手前まで行ったこともありました。

しかし最終的に、
社長さえも知らなかった致命的な問題が明らかになり、
その解決のためには多額の資金が必要ということが発覚して、
成立直前で流れてしまいました。

多額の借入があったことから、
通常では「倒産」もやむなしという状態でしたが、
「経営者保証ガイドライン」という、
会社の保証人である経営者を保護するガイドラインに則って進めており、
無事、倒産ではなく廃業へと進むことができています。
もちろん最終的に清算に至るまで、予断を許しませんが。

明日の「事業廃止」の日まで、
取引先や仕入れ先には感謝の言葉をかけられ、
ギリギリまで売り上げが減少することがありませんでした。

従業員も最後まで誰一人かけることなく、
これまでと何も変わりないかのように、
仕事をしてくれています。

そして一部債務免除を求められる金融機関も、
経営者を責めたり、つらく当たることはなく、
この判断に対して理解を示してくださっています。

それもこれも、
社長がこれまで真摯に仕事に向き合ってこられたからこそ。

M&Aになっても、
今の社員の雇用が継続して守られるとは限りませんし、
特に、今、工場長が徹底したこだわりを見せて作っている商品のクオリティを
適切に維持してくれるとは限りません。

『M&Aをしたことで、のちのち「うちの商品、こんなことになってしまってるわ」という日が来たら、それはそれで、めちゃ後悔することになってたかも』
という経営者・工場長の言葉を聞き、
この廃業という選択が結果として間違いでなかったんだな、ということを
再認識しています。

企業には始まりもあれば、終わりもある。
その「終わり」の大切さを今改めて感じている、そんな毎日を過ごしています。

タイトルとURLをコピーしました