これまで、「中小企業の経営者が集まって、新しい事業をしよう!」
というのが成功しているのを、
ほとんど見たことがありません。
少なくとも私の周りでは。
この辺りの問題点を考えたいと思います。
なお、この事業形態をこのブログ内では便宜上、
「組合形態事業」と呼ぶことにします。
目次
経営者が集まって行うプロジェクトが機能しない
中小零細企業は、その持っている経営資源が極めて限定的ですので、
その得意なところを持ち寄って、単独では不可能な新しい事業を起こそう!
という動きをよく見かけます。
その趣旨は正しいと思いますし、
それで中小企業の力が生かされてそれぞれの収益力につながるのであれば、
それは本当に素晴らしいことですので、
ぜひたくさん生まれてたくさん成功してほしいと思っています。
LLP(Limited Liability Pertnership)という組織形態があります。
これはまさにそのために存在するような制度です。
簡単に説明すると、
いろんな人や組織が自分自身の特技を持ち寄って事業をなし、
その分配は出資割合に対応するのではなく、自由に設計できる、
という仕組みです。
しかし私の周囲でもこれまで、こういった活動を数多く見てまいりましたが、
これがうまくいった例をほとんど知りません。
それぞれの強みを持ち寄ることで新しいビジネスが生まれる。
これほど理にかなった素晴らしいことが、なぜうまくいかないのでしょう?
なぜ山を登ってしまうのか
日本には
「船頭多くして 船 山を登る」
ということわざがあります。
これが実に的を射ていて、ここにその回答があるのではないかと思います。
なぜ船頭が多いと、船は山を登ってしまうのか。
私の思いつく原因は次のようなものです。
明確なリーダーシップを取る人がいない
ビジネスを行うには、そこに明確なビジョンと理念が必要です。
こんな社会問題があるから、なんとかそれを解決したい。
そしてその社会問題の解決をビジネスとして行って持続性のあるものとし、
かつ自分たちの収益力へとつなげよう!
そんなことに対する、極めて具体的なビジョンです。
実はそれがそもそも明確でなかったりするのですが、
もし明確であったとしても、
「絶対にこれをやりとげるんだ!!」
という信念をもった一人のリーダーが絶対的に必要です。
ただ組合形態事業では決定的にこれが不足していることが多いのです。
そのビジョンを最初に掲げた人が、
「自分だけではそれが実現できないから、みんな力を貸してよ」
という負い目があるのでしょうか?
負い目に感じる必要なんかないわけですが。
それとも自分自身が最終責任を取るという覚悟が不足しているのでしょうか。
どうにも全体に気を遣い、
事業を通してビジョンや理念を実現することよりも、
メンバー全体の調和を優先し過ぎてしまうきらいがあります。
同じビジョンを実現するにも、その手段・方法は無数にあります。
集まってくる経営者メンバーなんてみんな基本自己主張が強いですから、
それを自分のやり方が正しいと思いこんでいます。
全員の意見を聞くことは大切ですが、
最終的にどれを採用するのか決断するのは、
一人の「長」が責任をもって行うべきなのです。
こうした明確なリーダーシップが存在しないと全体のモチベーションがあがらず、
当然のように空中分解をしてしまいます。
会議をしていても、段々参加者が減っていっていつの間にかフェイドアウトする。
そんな事例が多いように思います。
誰とやるのか、が明確でない
「何をするか、よりも誰とするか」
という言葉を聞かれたことがあろうかと思います。
「誰をバスに乗せるか」と表現されることもあります。
同じ船に乗って共にビジネスを進める人がどんな人なのか、
どんな人と一緒にビジネスを行うべきか、ということが一番大切だ、
ということです。
組合形態事業を行うときに、これが全く意識されていない。
「あの人は能力が高いから」
「あの人はいい人だから」
「あの人と仲がいいから」
そんな理由だけで共に事業を進める相手を選んでいないでしょうか?
いかに能力が高くとも、いかにいい人であったとしても、
そのビジョンを正しく共有できて、かつ、
それを絶対に実現しようという思いをもっている人である必要があるのです。
そうでない人が増えるたびに
事業の推進度は落ちていきます。
どれほど能力が高くとも、
批判ばかりで対案を出さない、行動を伴わない人は不要です。
どれだけいい人であっても、責任感のない人は不要です。
どれほど仲がいい人であっても、組織を混乱に陥れる人は不要です。
もちろんこれらは、TOPのリーダーシップにかかっているわけですが。
このビジネスを成功させるには、誰の力が必要なのか。
これを極めて慎重に考えながら進めていくべきなのです。
一度加入したメンバーを排除することは極めて困難です。
痛みも伴います。
だからこそ、
「この人となら絶対にうまくいく!」
という人とだけ、同じ船に乗りましょう。
自分の利益誘導
これは「誰とやるのか」という問題ともかかわってくるのですが、
組合形態事業を進めていくにあたって、
自身の利益や損得ばかりを優先させるような人がいます。
そんな人がメンバーに入ってしまうと、非常にやっかいです。
それを自分の利得のためではないという、
もっともらしい言葉と共に進めていったりします。
これは恐ろしく全体のモチベーションを下げてしまいます。
もちろん最終的にそれぞれのビジネスにつなげるために行うわけですから、
それぞれの収益性をないがしろにするわけにはいかないのですが、
そこに到達するまでに考えなければいけないことが先にあるわけです。
それが「利益誘導」というほどのものでないとしても、
「自分の都合」ばかり押し付けてくる人もいます。
『それ以前に、ビジョンの実現でしょ!』
そんな声にならない叫びがいろんな人の顔色からうかがえます。
利益誘導を優先して考える人は、残念ながら排除する。
それくらいの気概が必要です。
そもそもまず、船に乗せないことが一番ですが。
役割が明確でない
組合形態事業は、
「それぞれの得意分野を結集する」
ということがその組織の強みですから、
そこに関わるメンバーの役割は、
そのメンバーの強みが最大限生かされる形で、
明確にされている必要があります。
この事業を成功させるには、どんな活動が必要となるのか。
それを細分化して、
それぞれに相応しい役割を果たしてもらうのです。
ちゃんと役割を明確にし、
その役割を強みとして保有している人に任せ、
ちゃんと責任感をもって成果をあげてもらう。
会社組織と同じことですね。
それぞれの為すべきことがはっきりしていないと、
これまたそれぞれが
『自分は何をしたらいいのだろう?』
と「待ち」の姿勢になり、
事業全体のスピード感が極めて遅くなります。
そしてあげく、そのスピードはゼロになって、事業全体が止まります。
ここでも結局必要なことは、リーダーシップです。
それぞれが活躍できる役割を与え、
それが正しく行われているのか、目を配りましょう。
人数は多ければ多いほど、変なところへ。
以上のことから、基本的な私の考えは、
「関わる人が多ければ多いほど、事業は変な方向へ向かう」
ということです。
もちろんその全員が先の条件を満たしてくるのであればいいのですが、
多ければ多いほど、そうでない人が入り込んできます。
少なくとも方針を決めるメンバーは、
ちゃんとビジョンを理解し、
その実現に向けた強い意志をもった人たちだけで構成すべきです。
リーダーとなる人の器の大きさによって、もちろん変わってきますが、
組合形態事業に関わる人数は必要最小限であることが望ましいかと思います。
「最小限」ではありません。
「必要」最小限です。
そのビジョンを実現するには、
どんな人材や会社が必要なのか。
そしてその役割に応じた、ふさわしい人と共に、
事業を始めていただけたらと思います。