経営者は仕事を増やしてはいけない。

経営者は、忙しい人種です。
そうでない人もいてますが、
基本、忙しい人です。
ただ、忙しすぎていいことは、何一つありません。

実は私自身の課題でもありますが、今日は敢えて、
それをテーマに。

時間と能力に限りがあることを知る。

経営者がなぜ一番忙しいかというと、
もちろん会社内には責任ある仕事がたくさんあって、
それを経営者自身が抱えないといけないから。

特に、小零細企業においてはそうだろうと思います。

そして多くの場合、その会社で最も能力の高い存在だからです。
仕事にもいろんなカタチの業務がありますから、
その全てにおいて誰よりも能力が高いわけではありません。
そして、そうある必要もありません。

しかし、小零細企業の経営者は、社内のどの業務についても、
ある程度人よりできるスーパーマンに近い存在であるべきだと考えています。

能力が高いから存在だからこそ、
多くの仕事をやることになります。
本来の経営者としての仕事である、マネジメントも当然ですが、
小零細企業だと、
現場の日常業務にも関わらざるを得ない局面が
多々あります。

そしてそんな存在だからこそ、
経営者自身がつい仕事を抱えてしまうことになりがちです。

よくないことですが、
「自分がやった方が早い」ということで業務を任せられないケースもあれば、
人に仕事をふるのを遠慮して、自分自身で抱えてしまうというケースもあります。

こういった考え方で進めている以上、
経営者の仕事は増えていきこそすれで、
減っていくことは決してありません。

しかし、どれだけ仕事のできる人であったとしても、
時間と能力には限界があります。
時間はもちろん全員に24時間。
そして能力的な意味でも、それぞれ抱えることのできるキャパがあります。
そしてそのキャパに近づいてくると仕事の精度が落ちてきますし、
キャパを超えてしまうと、会社運営にも影を落としてしまいます。

だからこそ、経営者は「時間を空けておく」ということを
誰よりも意識しなければならないのです。

いかにして自分がやらないようにするか、考える。

超短期的な思考に基づくと、
自分がやってしまった方が楽チンなのは当たり前です。

自分の方が早くできるし、説明する必要がないし、
そのうえ出来てきたものを指摘する必要もありませんから。

しかし新しく生まれた仕事をその都度経営者が抱えていけば、
それはそれはキリのないこととなってしまいます。

経営者は残業代という発想がないですから、
自分がやってしまうことが一番効率がいい、
という風に考えがちですが、
それは全く違って、
時間には限界があるわけですから、
最も人件費の高い人なのです。

ですから仕事を自分でやることを前提とするのではなく、
「自分が時間をかけてやるのではなく、お金を払ってやってもらう」
という方向で考える必要があります。

経営者自身が犠牲になって出た利益は、本物の利益ではありません。
お金を払って、社員さんや外注に任せて、
それでもちゃんと利益がでる。
事業自体をそんな仕組みで作り込まないといけないのです。

語弊を生む表現かもしれませんが、
経営者は、
「どうやったら、限りなく自分が楽になるんだろう」
「どうやったら、自分がやらなくて済むのだろう」
ということを常に意識し、
実際にその手段・方策を考えて、実行することが求められるのです。

重要性の低いものを捨てる。

本当に、経営者の仕事の種類は幅広いです。
その中には経営者しかできない仕事もあれば、
経営者以外でもできる仕事もあります。
同業者団体や経営者団体との関係が出てくるのも、経営者ならではです。

しかしこれらすべてを経営者自身が抱えてしまうと、
経営そのものにかけることの時間がなくなってしまい、
本来経営者がやるべき仕事である、
会社の将来のことを考えたり、社員さんとコミュニケーションしたり、
ということができなくなってしまうのです。

それはその会社にとって、大きな大きな問題です。

能力が高くて人のいい経営者ほど、
いろんなことを周囲から頼まれて、
その頼まれたこと一つ一つを抱え込んでしまいます。

これではいくら身体があっても足りません。
あっというまにキャパオーバーとなってしまい、
自分もしんどいですし、
結果として、会社や社員をはじめ、
いろんな人に迷惑をかけてしまうことになってしまうのです。
ですから、今、やるべきことでいっぱいいっぱいになってしまっている方は
まず、現状把握するところからはじめましょう。

よく
「忙しすぎて、もう何をしてるんかよくわからんわ」
とおっしゃる経営者さんがおられますが、
大いに問題ありです。

まず、自分は時間的・精神的に
どんな仕事や負担を抱えているのかということを整理し、
そのうえで、重要度と優先順位から、
絶対にやるべきものと、捨ててもよいものを明確にしましょう。

やらなければならないと考えているものでも、
よく考えてみたら、
「別に今する必要があるものではないな」
ということであったり、
他のもっと重要なことを犠牲にするくらいなら、
ちょっとリスクや損失があるかもしれないけれど、
放置するというのも一つの判断です。

「全部できないわ」と思ったら、
思い切って人に任せるか、捨てる勇気をもちましょう。

可能であれば、「全部できない」とかいうことになる前に、
人に任せるか捨てるかすることが大切なのです。

「判断」という仕事を舐めではいけない。

経営者を忙しくするのは、
時間的な業務だけではありません。
精神的に負荷をかけるものは、
それ自体たいした時間を要しない業務であったとしても、
常に頭の片隅に引っかかっていますから、
そんなものが複数引っかかったままになっていると、
それだけで心の余裕がなくなり、
とても忙しい、という錯覚を生み出します。

錯覚ではない場合もありますが。

時間的に忙しい中に、精神的負荷の高いものが複数重なってくると、
それはそれはもう、大変なことになります。

経営者の大切な仕事である「判断」というものが、
この「精神的負荷」に該当します。

経営判断の経験がない人からしたら、
「そんなん、その場でパッと決めたら終わることやん」
と思うかもしれませんが、
「決断する」ということは何かを捨てることと同義で、
精神病理学上、ストレスに分類されるそうです。

ですからこれを多く抱える、ということは
多大なる精神的負荷になるのです。

時間がかかる業務ではないからといって、舐めてはいかんのです。

かつてある経営者が、
「私は社員が相談事をしてきたら、
『頼むからワシに判断させんといてくれ』
といっている」
と言っていました。

これは無責任なことではなく、
「権限委譲であなたに任せたのだから、
 責任はこちらで取るからあなたが判断してくれ」
という意味です。

こういった「判断」という業務すら、
できるだけ自分から切り離していくということが大切です。

このようにして、経営者に時間が生まれると、
まず余裕が生まれて、
本当に経営者が決断しなければいけない重大局面で
正しい判断ができるようになります。

そしてその生まれた時間で、
さらに自社を成長させるための妄想をすることができます。

この妄想がさらに会社の収益性を高め、
会社をより良い方向へと導いていくのです。

くれぐれも経営者は、
時間ができたからといって
安易に、その時間を業務で埋めてはいけません。

会社の将来を考え、それを実行に移すことは、
経営者にしかできません。

こんな「経営者にしかできないこと」に時間を注ぐため、
仕事を抱え込みすぎず、
他人に仕事を任せ、
時には仕事を捨てる必要があるということを、
経営者は肝に銘じておきましょう。

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