経営者の仕事は、経営をすること。
現場仕事に追われてもいいことは何もありません。
確かに利益は稼げるが・・
小零細企業において、経営者が現場仕事から完全に離れることは
難しいのが現実です。
かく言う私も、バリバリ現場で働いています。
人的資産に乏しい小零細企業だからこそ、しかたのないことではありますが、
現場にずっぽり入り込んで本来の経営に手が回らないのは、
よくありません。
会社が儲かっていなくて、
日々の仕事に追われて忙しいかもしれません。
逆に会社が引く手あまたで、
求められる仕事を全部引き受けているために、
忙しくて仕方ないのかもしれません。
いずれにしても、会社の利益を最大限稼ぐために、
経営者自身が現場に入っているということ。
確かに今この瞬間の目の前の利益を追いかけるならば、
そういうことになるのでしょう。
しかしやはりそれは、あくまで「目の前」。
今の仕事に追われている、ということは、
将来に向けて会社を成長させる、
ということや、
組織の抱えている問題課題に対して将来を見据えて改善する、
ということが
手つかずになります。
未来の利益を犠牲にして、今の利益を追い求める姿は、
自分の脚を喰って生きながらえているようなものです。
社員さんの不満の温床に。
経営者が現場の仕事に追われている環境は、
基本的に社内で、経営者がもっとも忙しい状態を作り上げます。
すると小零細企業でよくある姿が、
「会社の決まり事を経営者が最も守れていない」
というものです。
社員さんとの人間関係が「普通~良好」であるならば、
「社長は忙しいからしょうがないな」
と、みんな暖かい目で見過ごしてくれます。
しかしひとたび、社員さんと経営者の人間関係が崩れ始めると、
それはたちまち、生暖かい目へと変化します。
特にそのルールを経営者自身が作ったものであったり、
「会社のルールは当然守るもの」といういったような教育を
経営者自らがしている場合には、
「社長は、言っていることとやっていることが違う!」
ということで、社員さんの不満の温床となります。
さらに、社長が仕事に追われているということは、
組織の状況に目を配れているとは思えませんから、
社員さんの仕事に対するケアはできません。
逆に「ルールを守らない」ことで、
社員さんの仕事をかき乱すことになってしまいます。
そして経営者自身はずっと外出してばかりですから、
その間に社員さんたちはお互いの中で
経営者に対する不満を醸成させていきます。
自分一人が不満を持っている間は表面化しにくいことが、
他人も同様に不満を持っていることを知ると、
自分の考えに確信をするのでしょう、
その不満は表面化し、爆発します。
ですから経営者は、
もちろん不満の種になるものを自ら生み出さないことも大切ですが、
社員さんとのコミュニケーションを図ること、
特に組織幹部とのコミュニケーションを
絶やさないようにしなければならないのです。
仕事を手放す
ですから経営者は、
「忙しいくて時間がとれないな」
と感じたならば、
自身の仕事を減らして、
時間的・精神的なゆとりを作り出すことを考える必要があります。
そのためには今の仕事のうち何かを、
手放さなくてはなりません。
まずは自分自身の仕事内容を振り返り、
何がそんなに自分を忙しくさせているのか、
明らかにしましょう。
それが明らかになれば、
その仕事のうち自分の手から離せるものを社員さんに託す、
または捨ててしまう、
ということを実行しましょう。
「なんでこんなに忙しいのだろう?」
と、自分自身の忙しい理由がよくわからないのであれば、
それは大問題です。
理由がわからなければ改善のしようがありませんし、
改善されなければ、
経営者の手にゆとりのある時間が訪れることはありません。
今している仕事は全部自分しかできない、というのは
完全なる思い込み。
なんとか工夫し、仕組みを作ることで
組織内の他者に仕事を移管することは可能です。
そしてそれ自体が、組織の成長にもつながります。
出来た時間は、大切に置いておく
そうやって自分の時間を分析し、
手放すべき仕事を手放すことができると、
当然のことですが、
ちゃんと新たな時間が生まれます。
しかし、自分を忙しくすることが得意な(?)経営者は、
その時間をすぐにまた、
現場仕事や、人によっては経営者団体の会合などで埋めてしまうのです。
これでは、手間をかけて時間を生み出した意味がなくなってしまいます。
せっかく出来た空いた時間。
これは安易に他の仕事で埋めるのではなく、
そのまま大切においておきましょう。
そしてそれは、現場仕事や営業など目前の仕事で埋めるのではなく、
会社の将来のために、社員のために、
経営・マネジメントに使うようにしましょう。
本来そのために時間を作ったのだということを、
忘れてはいけません。
「経営者は忙しいからマネジメントが出来ないのではなく、マネジメントをしていないから忙しいのだ」
と、ピータードラッカーは喝破しています。
まさにその通り。
経営者は、自らの時間を作るためにマネジメントをし、
そしてマネジメントのために自らの時間を作ることに、
もっと意識を向けましょう。