かのピータードラッカーさんは、
「マーケティングとは、セリング(販売活動)を不要にすることである」と
マーケティングについて一定の目的を示しています。
今日はマーケティングとセリング(販売活動)について
ドラッカーの考えるマーケティング
前述のとおり、ドラッカーさんは、
マーケティングの目的として、
「マーケティングとは、セリングを不要にすることである」
と言っています。
さらには、
セリングとマーケティングは似ているものではなく、重なり合う部分すらない。
と断じています。
そこまで異なるマーケティングとセリングとは、何が違うのでしょう?
マーケティングというと一般的に
市場調査などを行って、
消費者の求める商品・サービスを開発し提供していく、
というイメージがありますが、
それはマーケティングの本質ではなく、ほんの一部です。
ドラッカーが「販売活動を不要にする」
と言っているとおり、
自ら積極的に売りに行かなくても
自然と売れる状況を作る活動全体のことを指していると
私は考えています。
いわゆる、ブランディングがその典型的な形でしょう。
高級ブランドは広告は出しますが、
自ら積極的に消費者が購入してくれるように
販売促進活動を行うということは行いませんから。
これはある意味、マーケティングの到達点なのだろうと思います。
ターゲットを明確にし、
そのターゲットに対して商品を通して
どのような「価値」を提供するのか、
ということが明確に構築されて、
ターゲットがその商品価値に対して共感し、
自然と商品が消費者の手に届く。
このように、
売り手と商品(価値)と買い手がキレイに一本の線で繋がり、
売り手が自社の商品を、
それを求める買い手に、
いかにスムーズかつスマートに届けるのか、
という仕組みを構築するのがマーケティングです。
この視点がなければ、
売り手側は常に消費者に対して
自社の商品を売り込み続ける必要があるため、
非常にキビシイ状態となります。
買い手もその商品を購入する決定的な理由が存在しないので、
価格競争に巻き込まれがちになってしまいます。
ですから、
自社の商品価値を明らかにし、
その価値が正しく届く消費者が誰かということを明確にして、
その消費者に向けて売り手と商品の関係を作り込んでいく、
というマーケティング活動は、絶対に必要なのです。
セールスは不要なのか
それでは販売活動(セリング)は全く不要かというと、
そんなことはないですよね。
あくまで販売が不要になる状態を
マーケティングの理想として定めているだけで、
現実問題としては、販売活動は非常に大切です。
マーケティング活動だけで
勝手に顧客が自社の商品を購入してくれて、
それで会社としては充分にやっていける、または引く手あまたである、
という環境になっている会社は、
世の中極々少数だろうと思います。
マーケティングだけで必要な売上を上げることが出来ないのであれば、
その部分を補うために、
一定の販売活動は必要になります。
販売活動というのは、マーケティングのように
「相手が自然と近づいてくる環境を作り上げて、待つ」
ということではなく
「商品を買っていただくために、こちらから積極的に仕掛けていく」
という作業です。
例えば
どのような販売活動を
どんな対象に対して、
どのような手段でもって、
どれだけの回数行うのか、
というものです。
このような販売活動計画を立てて、
実際にその計画を実行し、
その計画と実績との差異から、
次の販売活動計画を立てる
こんな、PDCAの世界が、
販売活動です。
PDCAを通して、より販売活動の精度が高まると
売上計画が単なる数字遊びではなく、
その実現可能性が高まり、
売上計画自体の精度が高まっていくのです。
マーケとセリングは相乗効果を生む
しかし、セリングだけの一辺倒で、
マーケティング要素がそこにない、というのは問題です。
前述したように、
売り手が常に売り込み続けないといけないということも問題ですが、
「顧客の求める価値を、適切に届ける」というマーケティング要素のないセリングは
単なる押し売りにどんどんと近づいていくからです。
すると、
「営業の人柄が良いからものを買う」
「その商品がよそより安いからそこで買う」
という、本来あるべきではない姿となってしまいます。
前者の「営業の人柄」というのは、
信用という意味で大切ではありますが、
マーケティング要素のない「人柄だけ販売」は、
本来その商品を求めていない人に
その購入を薦めるということになりますから、
決して良いものではありません。
「人柄だけでものが売れる人は、実は人柄が悪い」
というパラドックスが生じます(笑)。
お年寄り騙して高い商品を販売するなんていうのは、
まさにこれですよね。
少し話しが逸れてしまいました。
やはり、商品は、
その価値を求めている人のもとに正しく届いてこそです。
ですから
マーケティング技術でもって商品価値を磨いている商品は、
販売活動をどの方向に行っていけば効果的かということもわかりますし、
また最終的に購買につながりやすくなります。
また販売活動を行うことで、
マーケティングだけでは到達しなかった消費者に対して
その商品を届けることができるのです。
このように現実的には
マーケティングと販売活動のいずれかということではなく、
双方を正しく行うことで、
それぞれが互いの効果を高めてくれるのです。
「Marketing & Selling」は別個のものではなく、一体なのです。