顧客の定義のしかた。

昨日は顧客の定義についてお話しをしましたが、今日はその方法について。

顧客定義としてのペルソナ

自社のターゲットや、商品のターゲットを定めるにあたって、
最もメジャーな方法が「ペルソナ」です。

「ペルソナ」とはもともと、心理学者のユングが提唱した心理学用語で
「仮面」を意味します。
しかしマーケティングの世界においては、
商品やサービスを提供する消費者・顧客の典型的なイメージのことをいいます。

実際にその顧客が存在しているかのように、
その顧客の年齢・性別・所在地・家族構成・趣味・職業・年収・価値観・生活スタイルなどを
具体的にイメージして定めます。

そして最後に名前をつけることまでする会社もあります。
例えばそのペルソナを「ジェーン」と呼ぶとします。
そして自社の理想的な顧客である「ジェーン」とはどんな人物なのか、
先ほど挙げたような項目を設定していくのです。

ペルソナの目的は、理想的顧客をイメージしやすい形にして、
商品開発や広報・販促活動などがそのペルソナにマッチする形で企画していくことで
ブレをなくし、理想の顧客にちゃんと商品価値が届くようにすることです。
ですから、社内のメンバーが「ジェーン」のイメージを具体的に思い描けるよう、
詳細に詰めていく必要があります。

そのようなカタチで命を吹き込まれた「ジェーン」。
彼女をいかに喜ばせるのか、ということを基準にして、
商品にまつわる様々な企画を行っていくのです。

ペルソナの問題点とその解決法

ペルソナは上記にとどまらず、もっと細かい市場調査を重ねて活用をしていくのが本来ですが、
それはもっと大規模な会社の考えることですから、
小零細企業においては、上記の内容で理解しておけば、
まぁ充分かなと個人的には思っています。

しかしそんなペルソナにも問題点はありまして、
どれだけその「ジェーン」の属性を細かく設定していったとしても、
どこまで行ってもジェーンは架空の人物です。
ですから、どのようにすればジェーンが喜ぶのか、ということは、
正直ピンと来ないところがあります。

そこでその解決方法ですが、
既存の顧客の中で、自社が「理想の顧客」であると考えている人を一人抽出し、
その人を「ジェーン」に据えるのです。
そして、「ジェーン」をその実際の属性に分解していきます。
前述の手法とは逆の方向で考えていくわけですね。

この方法のメリットは、
「ジェーン」が実際に存在する顧客ですので、
そのイメージを鮮明に思い描くことができる、ということです。

どうすればその人を喜ばすことができるか、ということも、
実在の人物なわけですから、非常にイメージしやすいだろうと思います。

また、実際に名前がありますから、
仮称の「ジェーン」である必要もありません。

そうやって特定の人物を抽出してその要素分解をすれば、
あとは、徹底的にその人の喜ぶ企画を考え続けるという、
とてもシンプルな活動に集中することができるのです。

しかしこの方法にも一つ欠点があります。
それなりの規模の会社になると、いくら実在の人物であるとしても、
その人物との現実の接点がある人は非常に限られてくる、
ということです。

ですからこの手法は非常に有用ですが、
本当にその効力を発揮するのは、小零細企業において、ということです。

もちろん規模の大きい会社でも、
実在の人物を元にする方が、より具体的に属性をイメージできることは変わりありません。
そしてその「より具体的な属性」を元に企画運営ができますから、
まったく架空の「ジェーン」でもって考えるよりも、
精度の高い企画ができるのではないかと思います。

顧客ではない人を定義する。

このように、自社にとって理想的な顧客(=ターゲット)を定義することは
とても大切です。
それと同時に、
「こんな人はうちの顧客ではない」
という定義も同じくらい大切なことだと考えています。

もちろん、それは事業内容とその会社の方針によります。
不特定多数の顧客を相手にするような業種で、
事業を拡大していく方向で考えている場合には、
できるだけ多くの消費者を顧客としていくことが必要ですので、
選り好みができないという現実もあります。

しかしそうでない場合には、
「こういった人は、うちの店に来ていただく必要はない」
ということの定義づけはしておくべきなんじゃないかと思います。

基本的には、自社の価値を正しく理解してくださらない方は、
提供する商品・サービスに対して評価をしてくれません。
その人がいい悪いではなく、
そもそものニーズとずれているわけですから当然なのです。

満足をしていただけないということは、
その商品価格についても「高い」という風に認識されるでしょうし、
場合によっては「悪い評価」として吹聴されるかもしれません。

そもそも顧客が喜んでもいただけない仕事をするのは、
とてもストレスでもあります。

要は、ミスマッチが生じることで、お互い不幸な状態となってしまっているのです。

ですから、表立って明らかにする必要はないので、
「こういった人はうちの顧客でない」
ということを
社内としてそれを明確にしておいて、
そのようなミスマッチが生じるおそれのある顧客がうっかり自社の商品を買ってしまわないように、
企画・発信を行っていく必要があると思うのです。

会社として売上を伸ばすことは大切です。
しかし、その商品を求めてもいない人に商品を提供して、
お互い残念な思いになるような形で売上をあげるのではなく、
その分、少しでも自社の提供価値を評価してくださる方に
価値を届けて売上を伸ばしていくことが、
本来あるべき姿です。
なぜなら、皆さんが今の仕事をしているのは、
その仕事を通して顧客に喜んでいただいたり、
何らかの形で社会に貢献してこそだろうと思うからです。

ビジネスは、
商品サービスの提供を通して、顧客が喜んでくださることに、
そのビジネスの存在意義があります。
その商品価値を求める人に正しく届くよう、
そしておかしなミスマッチを生じないよう、
顧客を明確に定義していきましょう。

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