さて今日は昨日に引き続き、種類株式のお話しです。
昨日は、配当優先株・無議決権株・譲渡制限株の3つを解説しました。
そして今日はまたその中から2つをピックアップしてお話しします。
ちなみに()書きの数字は、昨日の解説時に使用した番号になります。
株式を強制的に買い取る!
まずは「(6)取得条項付株式」です。
これはどういったものかというと、
ある条件が発生したときに、
強制的にその株主の所有する株式を強制的に買い取ることができるものです。
そしてこれを買い取るときには
必ずしも金銭である必要はありません。
何が目的かというと、
もちろん株主の分散を回避するものです。
小零細企業においては、株主の分散は極力回避したいものです。
現経営者にお子さんが2人以上いる場合に
事業承継に向けて株式の移転を図る際には、
基本的に兄弟全員に持たせるのではなく、
後継者一人だけに株式を集めるようにオススメしています。
これは、次の世代は確かに兄弟だけれども、
その次の世代に引き継がれるとそれは従兄弟関係になりますし、
さらにその次の世代は、ほぼ他人となってしまいます。
ほぼ他人が自分の会社の株式を多数保有している状態をつくると、
その後が本当に大変なことになります。
そもそもなんだか気持ちが悪いです。
そこまで行かずとも、仮に兄弟間で保有している場合でも、
その兄弟が必ずしもずっと仲が良い、とも限りません。
ですから株式は極力一人の後継者に
引き継いでいってもらうのが原則です。
「この会社は私で畳む」ということが確定している場合に限り、
その後の解散時の配当所得を分散させるために、
例外的にお子さん全員に均等に持っていただくことはあります。
ちなみに「(5)取得請求権付株式」も似たような雰囲気がありますが、
この請求権は「株主から会社に向けられるもの」、
つまり会社に
「私の株式を買え!」
とできるものです。
先ほどの取得条項付株式とは全く逆向きのものですのでご注意を。
拒否権付株式
種類株式の中でもなかなか面白いのがこの「(8)拒否権付株式」です。
株主総会での決議や、取締役会での決議内容に
「拒否権」を発動することができるものです。
その拒否権を発動する決議内容はあらかじめ定めておくことができて、
例えば、取締役の選任や会社の組織変更、
合併などの決議事項を拒否権の対象としておくことで、
その決議に対し、「NO!」を突き付けることができるのです。
このようにたった1株だけでも強力な権限を有することから、
「黄金株」
という言われ方をしています。
事業承継や相続対策などで、
株式を贈与などによって早々に次世代に引き継がせていくことを行いますが、
次世代が経営者になったあとにも、その暴走を食いとどめるために
1株だけこの拒否権付株式を設定しておき、
これを先代が保有しておきます。
そして本当に「これはまずい!」という経営判断がなされたときに、
先代が拒否権を発動することで、
その実行を食いとどめることができるのです。
ただ先代と後継者の間で関係がこじれにこじれた状態にならないとも限りませんので、
これによって何もかもが解決する、というわけではありません。
そもそもこれを発動するような事態にならないよう、
両社の意思統一とコミュニケーションと信頼関係の維持が、
とても大切なのです。
種類株式の発行について
全部で9種類ある種類株式のうち、
小零細企業が活用しうる5つのものについて、
昨日から今日にわたって解説をしてまいりました。
なんとなくご理解いただけているとは思いますが、
この種類株式は便利な反面、
非常に強力な権限や制約を与えるものです。
ですから、「なんとなく」ではなく、
今後の会社の事業承継と株主対策の方向性を
顧問税理士などとよくプランニングしたうえで、
実行するようにしましょう。
そしてそれだけ強力なものなだけに、
一部の株主の権限で種類株式を設定することはできません。
種類株式の設定には定款の変更と登記が必要なのですが、
そのためには、
種類株式への変更を希望する株主全員と会社の合意が必要となります。
さらに、普通株式に留まる株主全員の同意を得る必要があります。
ですからすでに株式が分散してしまったあと、
その現在の株主の意向を無視して、
「今日からあなたの株式は、無議決権株式です!」
などということはできないのです。
当然ですが。
事業承継はできるだけ早いうちからその対策を考えておく必要がありますが、
種類株式の活用も、
実際に問題が生じる前に手を付けることが大切です。
複数の種類株式の組み合わせも可能ですから、
それによっていろんな活用をすることが可能となります。
明日はそんな活用方法について少し触れてみたいと思います。
例によってこのブログは、
その日に谷口が書きたいことを書く、というポリシーで運営しておりますから、
明日それ以上に書きたいものが生じた場合には
先送りになりますのであしからず。