何をKPIに据えるか。ほかKPI問題。

かつては知る人ぞ知る経営指標だった「KPI」。
今やずいぶんと一般的になってきました。
ただ、たまにこの使い方を間違えている方がおられるので、
その辺りも含めて。

KPIとは

KPIとは、「Key Performance Indicator」の略称です。
日本語では「重要業績評価指標」と言われます。
なんで日本語にすると、こんなセンスがない感じになるんでしょうかね。
まぁだからこそ「KPI」と英語のままなんでしょうけど。
経営管理もマーケティングも、そもそもが舶来ものですから
しょうがないところです。

さて一応KPIについてざっくり説明をしておきますと、それは、
「業績や成果をあげるためにどの業務についてどの程度のパフォーマンスを出しておけば良いのか」
ということを示す指標です。

たとえば、営業の現場などを例にするとわかりやすいのですが、
営業での目標を達成するために、訪問件数や提案件数など、
客観的数値で測定・評価するために指標として設定する、
その訪問件数・提案件数など。
これがKPIです。

なぜ、KPIは大切なのか。

KPIがなぜ大切かというと、
成果をその成果そのもので追いかけない、ということです。

今時ずいぶんと少なくなりましたが、
かつての日本では多くの会社に「ノルマ」みたいなものがあって、
その件数をグラフにして張り出したりしていましたよね。
今でもそんな会社あるでしょうが。

しかし成果はあくまで最終結果であって、
マネジメントにおいてその数値をコントロールすることはできません。
なぜならそこは最終的な顧客の意向が関わる話しですから。

コントロールできないものを目標にすると、
それは根性論へと置き換わります。
「全然成果があがってないじゃないか。もっと頑張らんかい!」
だからどうしろと、という感じですよね。

結果として無理やり押し売りをしたり、
バーターなどで顧客に捻じ込んだり、
闇のバックリベートみたいなものが生まれたりしてしまうのです。

こうして誰もハッピーにならない経営環境となってしまいます。

そういったことにみんな気付き始めたので、
ノルマなんてものがなくなってきたわけです。

そこで替わりに登場するのが、KPI。
・最終的にこれだけの成果をあげることが目標である。
・それは、「この活動」を「これだけ」行うことで達成されると考えられる(仮説)
・「この活動」を「これだけ」行うということを基準値として定める(これがKPI)
そしてあとはその数値が実際に達成されているかどうかを
測定・確認していくのです。

KPIが基準値以上に達成されているのに、成果が目標を下回った場合には、
KPIの基準値設定に問題があったのか、
「この活動」の質がよくなかったのか、
という問題であって、その活動を行った個人の責任ではありません。

この「個人の責任ではない」というところが、重要ポイントです。
KPIの基準値を達成しているかどうかという部分は、
もちろん個人の果たすべき責任ではありますが、
事業のあらゆる場面での最終成果については、
属人的な責任から解放してくれるのです。

間違ったKPI。

しかしKPIにもいろいろ間違った設定・運用をされている例も結構あります。
そんな例をいくつか。
思いついた順です。どれも大切なことですので順番は気にせずに。

1.それ、コントロールできない!

先ほどの売上の例がまさにこれです。
売上ではなくとも、「契約件数」というのも同じことです。
要は、こちらでコントロールしきれないものを指標にするのは間違い、
ということですね。

売上や契約件数などの最終成果ではなくとも、
運用サイドでコントロールできないものは、指標とはなりえません。
本人の努力以外の部分が影響するわけですから、当然ですよね。

2.それ、達成できない!

KPIは、成果をあげるために、これをこれだけ達成すれば実現できる、
として設定するものです。
ですからそれがそもそも達成不可能なところで設定されていては意味がありません。
先ほど、
「KPIの基準値を達成しているかどうかという部分は、もちろん個人の果たすべき責任」
と書きましたが、限度問題がある、ということです。
KPIを根性論化させないようにしましょう。

3.それ、業績につながらないよね?

KPIを設定するときに、よくわかっていない人にありがちです。
そのKPIはどんな成果のためのものなのでしょう。
例えば契約件数を求める成果としたときに、
名刺をもらった件数をKPIとか、明らかにおかしいですよね。

100歩譲ったとしても、その間が乖離し過ぎています。
「こうやったら、こうなる」
その因果でつながっているものをKPIとして設置しましょう。

4.それ、多すぎる!

KPIはとても大切なのですが、大切だからといって、
その数が多すぎるのは問題です。
マニュアル化・仕組み化などでも同じようなことが起こりがちですが、
その活動自体があまりに面倒なものであったらそれは、
徐々に実行されなくなっていきます。

ムリに実行させたとしても、
そこにかけている時間と効果のバランスが悪くて、
社員のモチベーションが落ちて来ることとなります。

ものすごい数のKPIがあるという、キーエンスのような例もありますが、
人的資源の乏しい小零細企業では
営業担当が営業に特化することが難しいですから、
KPIの管理でどんどん忙しくなって
ブラック企業の仲間入りをするだけです。

シンプルに、「ここを抑えればOK」という視点を忘れずに運用しましょう。

5.それ、どうやって測定するの?

次に、測定の問題です。
KPIは「Indicator」ですから、数値で表わされることが前提です。
数値で表わすことができるからこそ、測定が可能となるのです。

ふわっとした抽象的なものを目標に定めて
「KPI」などと名付けるのはやめましょう。

そして測定しにくいものもまた同様です。
あまりに測定に手間がかかってしまうものは、容易に頓挫してしまいますので、
ここでもシンプルさがとても大切なのです。

6.それ、業績管理に活かされてるの?

最後に、これ。これもよくありますね。
分析のための数値を集めるだけ集めて、
その後分析されていない。
分析されていたとしても、それが次に活かされていない。

これではデータ収集した時間が完全に無駄。
それならやらない方がましです。
社員さんも、収集・提供した情報がフィードバックされてこないと、
「なんのために、これやってるの?」ということになりますから、
ちゃんと分析してそれを次なる行動に活かしていくようにしましょう。

さて、自社が成果をあげるためのKPIはなんでしょう?
何をどれだけ行うことが、成果につながるのでしょう?
最初の内はポイントが掴めないかもしれませんが、
そんな場合はとりあえず試行錯誤してみましょう。

そしてちゃんと集計分析してそのKPIが適切なのかどうなのか、
検証してみましょう。
そうやっているうちに、きっと抑えどころが見えてくることと思います。

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