さて、3月ももう佳境。
3月決算会社の経営者の皆さんは、
そろそろ経営計画書を完成させないといけないころですね。
経営計画を作成するときには、当然損益計画が必要になりますが、
そのときに「どれくらいの利益が必要なんだろう?」と考えること、
多いだろうと思います。
つい先日も顧問先の社長さんに尋ねられました。
ということで、バックナンバーより、「目標とする利益の求め方」をお届けします。
ーーーー以下、2021/11/04 の記事を転載ーーーー
損益計画を求めるときに、
「必要な利益から逆算する」ということが基本となります。
すると、
「どれだけの利益を出すようにつくるのがいいのか」、
という疑問にぶち当たります。
正解はないわけですが、今回はそれをいくつか紹介したいかと思います。
①限界利益の20%
この「限界利益20%」というのは、
収益性が「とても優秀」な状態を表す数値です。
限界利益とは「売上ー変動費」によって求められます。
変動費とは、経費のうち、
売上が上下するとそれと完全に連動する経費のことです。
例えば原材料や外注費。
商品を発送しているような業種であれば、発送費も変動費です。
また売り上げの〇%を手数料として差し引かれるような事業の場合、
その支払手数料も変動費です。
逆に製造現場での経費であったとしても、
水道光熱費は変動費ではありません。
仕事が多くても少なくても、実は劇的に変わるわけではありませんから。
あと製造現場の社員の給与も変動費にはなりません。
通常の会計であれば売上原価に入るのですが、
たとえ製造の仕事がなくても社員の給与は支払わないといけませんから。
限界利益の説明はこれくらいにしまして、
経常利益をこの限界利益の20%あげることを目標として計画すると、
とても健全な会社の状態を目指すことができます。
かつて京セラ創業者の稲盛和夫氏が
「会社は売上の10%の経常利益を出さなければいけない」
とおっしゃってましたが、
いろんな業種がある中でこの数値は少し乱暴です。
限界利益率がそもそも10%しかない業種であれば、
その時点で絶対に不可能な数値です。
ですので、売上高を基準にするのではなく、
その会社が生み出した「付加価値」である
「限界利益」
を基準に考えることが正解です。
ちなみに、製造業で限界利益率がだいたい50%だとすると、
その限界利益の20%を経常利益の目標にすると
それは、売上高の10%になりますから、
稲盛氏がおっしゃっていることは間違いということではありません。
②借入の返済と減価償却から考える
借入の返済と一定の設備投資がある会社は、
これをベースに考えるのも一つの手段です。
借入の返済は、税引後の利益の中から行われることになります。
ですので、基本的には返済額よりも少ない税引後利益しか出ていないということは、
徐々にキャッシュが目減りしていく、ということです。
しかし設備投資が多額な会社に関しては、
その経費の中に減価償却費が含まれます。
減価償却費は、設備投資にかかった金額が、
その後その設備の使用期間(耐用年数といいます)に応じて
何年かにわたって経費になっていくものです。
ですから、設備投資の年度が前年以前ということであれば、
減価償却費は今年の経費であっても、
今年にお金が出ていったわけではありません。
ですから、非常にシンプルに考えると、
『今年の税引後利益+減価償却費』が
その年に増えたキャッシュです。
そしてこの中から借入の返済を行います。
つまり
『税引き後利益+減価償却費-借入返済額』が
ゼロとなる数字を目標として税引き後利益の目標値として設定すると、
キャッシュが維持される、ということです。
ただしこれはあくまで「維持される」というレベルですので、
キャッシュが増えることもありません。
会社の安定感は増していきませんし、
次の設備投資ではまた、全額お金を借りる必要が出てくるかもしれません。
ですので、
・今後の発生する設備投資の金額をためていく
・それとは別に毎年これだけキャッシュを増やす
ということを勘案して金額を決めましょう。
③貸借対照表を計画する
借金もなく、在庫もなく、設備投資も売掛もほとんどなく・・
といったようなシンプルな事業であれば、①がオススメです。
しかし逆に、
・借り入れが多い、
・在庫も多い、
・設備投資も定期的に必要、
・売掛金だけでなく受取手形・支払手形もある、
というような複雑な会社については、基本オススメはこの③です。
少しハードルはあがりますが、こういった会社は
利益の増減とキャッシュの増減が全く連動しませんから、
どれだけの利益を出せば安定感のあるキャッシュを作り上げていけるのか、
という数値の算出がとても難しくなります。
貸借対照表の計画ができるようになると、
自分にとっての理想の財産状態を築き上げるには
どれだけの利益が毎年必要か、
ということがわかるようになります。
貸借対照表の計画については以下のブログで
コッテリ解説していますので、ぜひご参考ください。
貸借対照表をめちゃわかりやすく解説します①
貸借対照表をめちゃわかりやすく解説します②
貸借対照表をめちゃわかりやすく解説します③
このように、必要な利益の求め方も、
シンプルなものから複雑ながらも精度の高いものまで、さまざまです。
さらに必要な利益の考え方は、
その会社の事業のあり方や、
事業に対する考え方も大きく影響してくることでもあります。
会社にとって、そして自分の人生にとって、
どのようなあり方がもっとも相応しいのか、
それをぜひ信頼できる顧問税理士などに相談をして考えていただければと思います。
絶対に、「勘定合って、銭足らず」という状態に
ならないようにしてください。
そういった方にはハードルが高いながらも、
③をマスターしていただく必要があるかと思います。
そのうちwebセミナー「経営計画のための財務講座」の開催を計画しているのですが、
優先順位が低いため、なかなか実現できずです。
「そのうち」とか言ってる時点で、ダメですね(笑)。
また開講の際には改めて発信いたしますので、
気長にお待ちいただけたらと思います。