いつもお話ししていることではありますが、
ターゲットを絞って、それに特化するということは、
とても大切です。
みんなに売りたい、は誰にも売れない
かつては、みんなと同じ、
均一的・均質的なものが売れる時代がありました。
かれこれ20年以上前かと思います。
私の感覚としては、社会人になってほどなくしてからは、
やはり自分のこだわりというものが強くなり、
どうでもいいものには、徹底的にお金をかけない、
しかし、自分が「ここ!」という部分については、
その分お金を惜しまない、という傾向に
なっていったかと思います。
私は人よりこだわりの強い、
マニアックな人間であるということは自認していますが、
それでもやはり一般的にそのような購買傾向になっていったのは、
これくらいの頃かと思います。
それが2000年代初頭くらいですから、
それから20年以上が経とうとしているのです。
20年も経過する中で、さらにその傾向は先鋭化し、
「私は、こういうものを買いたいのだ!」
というonly one の時代を経て、
「私は、あなたから買いたいのだ!」
というvital one の時代へと移り変わっていきました。
ターゲットとなる人の求めるものを徹底的に磨き上げ、
その人の心に深く突き刺さるように商品を作りこむ。
消費者動向がその方向に動き始めて20年以上もたっているのに、
まだ昔と変わらず
「みんなに売れるもの」を作ろうとするのは、
あまりに環境変化への対応が遅いのではと言わざるを得ません。
もちろんすべての業界がこれに当てはまるとは限りません。
しかし「商道」は変わらないとしても、
「商法」は変化させていかないと生き残れないことは、
歴史が証明していることでもあります。
「特定の人だけに絞るのは、怖い。みんなに買ってもらいたい」
というのは、誰の心を貫くこともなく、
結果として誰にも買ってもらえないのです。
AKBに学ぶ、「特徴」を持つこと
先日、テレビ東京のカンブリア宮殿にて秋元康が、
AKB48のオーディションの話しをしていました。
通常のオーディションは、
複数の審査員が、オーディションを受けに来た人を審査し、
その総得点の高い人から採用する、というスタイルです。
きっと通常の人材採用などでも一般的には
同じことが行われているでしょう。
しかしAKB48では、他の審査員の評価が低くても、
たった一人の審査員の評価がやたらと高い人を採用する、
というスタンスだったそうです。
その熱烈なたった一人がいるということは、
それと同じ考えをもっている人が世の中には何千人何万人といる、
という発想です。
そうして突出した特徴を有したメンバーをたくさん集めることで、
「多くの人が必ずこの中の誰かの熱烈なファンになる」
という構図を作り上げました。
私たちは小零細企業ですから、突出した特徴のあるものを数多く作って
網羅することはできません。
しかしだからこそ私たちは、「AKB48のうちのたった一人」をめざし、
「自社のファンになってくれない人は、他の会社に任せる」
と割り切ることで、
少なくとも自分のファンはファンであり続けてくれる、
という状態を作り上げることが大切です。
そうして、社会全体でAKB48を作り上げれば良いのだろうと思います。
自分は、どんな人にどんなものを売りたいのか。
そこでまずはターゲットを絞る、
ということになります。
そしてそのターゲットに自社の特徴を届け、共感してもらう、
ということが必要になります。
このとき、まずターゲットを定めるというところから始めるのも、
もちろんありですが、
そこに自社の強みや特徴がきれいにはまらないことも当然起こり得ます。
ですから、大切なことは、
「あなたは、どんな人に、どんなものを売りたいのですか?」
というところです。
顧客が価値を認めて買ってくださるものは、
あなたの会社の、そしてその会社の作る商品のもつ
「独自性」です。
なので、そもそも自社が強みとしてもっているものでないと、
それは顧客に価値として認められるに至らないでしょうし、
「こんな商品・サービスの価値に共感してくれる人に売りたい、作りたい!」
という情熱がないところには明確な独自性・特徴は生まれません。
プロダクトアウト、マーケットイン、という言葉があります。
マーケティング用語で、
前者が会社の作りたいものを作って売ること、
そして後者が、市場の求めるものを作って売ること、
です。
プロダクトアウトは、「良いものを作れば売れる」ということで、
消費者のニーズを無視しているとして、
古い考え方であるとされてきました。
しかし今は、その意味合いに変化を付けて、
一周回ってまたプロダクトアウトの世の中に変わってきたように思います。
かつては
「良いものを作っていれば」
でしたが、
今は、
「自社が作りたい届けたい、特徴的なものを徹底的に掘り下げて作っていれば」
というプロダクトアウトです。
消費者・顧客との共感が求められる以上、
自分たちが本当に作りたいもの・届けたいものでないと、
それは相手の心にはささらなくなってきたのです。
ただこれは、「消費者の声は無視してよい」
という意味ではありません。
自分たちの得意なこと・やりたいことを追求し、
そのうえで消費者の声を受けて
そこに改善を重ね続ける。
それが現在のビジネスで、大切なことであると思うのです。