先日顧問先から、「不安でたまらないんです」という電話がかかってきました。
相当悲壮感のただよった状態でしたが、なんとか電話口で対話をしていくだけで
ずいぶんと不安を取り去ってもらうことができました。
不安なときは、不安の正体を見極めることからスタートすることが、大切です。
不安とはどういった状態か。
人間誰しも、ふと不安になることがあります。
経営者の立ち場であれば、
おそらく一般的な方よりも、
不安に襲われることは多いだろうと思います。
周囲から見て、順風満帆に思える状態であるとしても、
実際、経営者は常に先のことを考えていますから、
「今はいいけれども、先は大丈夫だろうか」
という意識はいつも持っています。
逆にそういう意識を持っていない経営者の方は、
「危機感の欠如」だろうと思います。
しかし、「不安感」と「危機感」は、
似ているようで全く別物です。
人間、どんなときに不安になるかというと、
それは先の見通しがまったく見えないときです。
目の前にもやがかかって、
どっちの方向に歩いていいたら
どんなことになるのかわからない。
不安とはこういう状態を指します。
経営でいうならば、
「毎月お金がどんどん減っていく。
このままだったらもうすぐつぶれてしまうんじゃないかと思うと、
毎日不安で眠れない」
こんな状態です。
あまりにいろんなことが見えていなくて、
とにかくいつどんな状況になるかわからない。
するとこの先
「つぶれてしまう」
ということしか考えられなくなるので
不安ばかりが押し寄せてくる、
という状態です。
不安感を危機感に変換する。
つまり不安は
「その恐怖の実態がつかめていない状態」
なわけです。
ですからこの状況から脱却するためには、
まずはその実態を把握するところからスタートします。
例えば先ほどの、
「お金がなくなって会社がつぶれてしまうかも」
という不安に対して、
最初に今期の損益推移の計画をたてるところから
アプローチします。
そしてその損益推移計画の通りに進んだとしたならば、
どんなキャッシュの増減になるのか、
キャッシュフローの計画(予想)を作成します。
すると、実際にお金がどのように増減するのか
という実態が見えます。
もし、その損益計画どおりに行くかわからない、
ということであれば、
「最低これくらいは絶対達成できる」
という数値をもとに作成してもよいでしょう。
いずれにしてもそれで実態を把握することができます。
すると
もしお金が減っていくとしても、
実際お金がなくなるのがどれほど先の事なのか、
その現実が見えるようになりますし、
実はお金はなくならないという結果が出るかもしれません。
まさに、
「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」
です。
実際にはお金が減っていくという結果が出た場合でも、
具体的な状況がわかるだけで、
ずいぶんと不安が取り除かれるだろうと思います。
「いつどうなるか、わからなかった」
ものが、
「いつどのタイミングでどうなるか、ということがわかる」
という状況になりますから。
この瞬間、その不安感は「危機感」に変換されるのです。
具体的に手を打つ
不安感が危機感へと変化し、
その実態がつかめたとしても、
それでは具体的にどうすればその状況を回避できるのか、
またはその状況を改善できるのか
ということを考えなければ、結果は変わりません。
裏を返せば、
不安感が危機感に替わることで、
「どのようにすれば、悪い状況を脱することが出来るか」
ということを考えることができる状態になる、
ということなのです。
これが漠然とした不安を抱えているだけでは、
その状況を打破するためにどうすればいいのか、
ということを考えることができないのです。
そうやって具体的に
「これだけの売上や利益を作り出せば
キャッシュが減っていくことはない」
ということを知ることができれば、
次に、それを実現するために
具体的にどのような施策を売っていくのか
ということを考えていきます。
これはあくまで仮説ですから、
それを実行すれば
本当にその売上・利益が実現できるかは
定かではありません。
しかし、本来経営計画とは
そういったものです。
計画し、実行して、
その結果通りにならなければまた仮説をたてて
改めてその仮説に基づいて実行する。
これを繰り返していくことで、
会社の利益は必ず改善されていきます。
漠然とした不安感に呑み込まれてしまうと、
人間なかなか前向きな方向に
思考を向けることはできません。
まずは不安の正体と向き合って具現化し、
不安感を危機感へと変換させましょう。
これが積極的な行動へと変容させる、
第一歩になるのです。