私たちが日頃見かける商品の価格というものを考えたときに
同じような商品でも、全く異なる価格が付いている場合が普通にあります。
そしてその中であえて高い方の商品を買ってしまう場合があります。
この時点でいわゆる商品と言うものは、
その商品そのものを指すものではなさそうだ、ということに気が付きます。
それでは改めて商品とは一体何なのか、ということを整理したいと思います。
マーケにおける商品
商品について考える前に、
まずマーケティングとはどういうものかということをお話ししなければなりません。
これを非常に平たくこれを定義づけるならば、
「売り手が、顧客に、商品を、いかにスムーズに届けるか」
この仕組みを構築して実行すること。
これがマーケティングであると考えています。
ここで言う顧客とは、それぞれの会社のターゲットと言うことになります。
自分の会社は、自分の商品やサービスを
どんな人に提供したいのか。
これがまずマーケティングの入り口になります。
そして次に、このターゲットに何を届けるのか?
この「何を」と言う部分が商品なのです。これ自体は当たり前の事ですよね。
冒頭でお話しした通り、同じ商品でも安いものと高く売れるものがあります。
なぜ高く売れるかと言うと、
顧客はその商品にそれだけの価値があると認識しているから、
高くでも納得してそれを購入をします。
ですから私たちは、「顧客に対してどのような価値を届けるのか」ということを
考えなければいけません。
これは大きい立派な会社だからできるということではなくて、
むしろ小零細企業だからこそ考えなければいけない事です。
なぜなら顧客に対して提供する価値を考えないと言う事は、
顧客にとってのメリットは価格だけになってしまうからです。
中小零細企業が価格で勝負をすると言う事は絶対に避けなければいけません。
価格競争は、ある意味消耗戦だと思っています。
この土俵で中小零細企業に勝ち目はありません。
だから私たちは、
「どんな顧客に対してどんな価値を提供するのか」
「私たちが商品を提供することで顧客にどんな気持ちになって欲しいのか」
それをきっちりと定義付けないといけないのです。
価値を構成するもの
それでは次に、その顧客に届ける「価値」とは
どういったもので構成されているのかということを考えたいと思います。
先ほどお話しした通り、マーケティングで考えた場合に
顧客に対して届けるものは商品そのものではなく、「価値全体」ですから、
この「価値の総体」が広い意味での商品であると考えられます。
その構成要素は次の5つであると考えています。
・商品、製品
まずは最も狭い意味での商品です。
これはいわばその提供しようとしている商品やサービスの本質的な機能であったり、
物質的な商品そのものを指します。
皆さんが普段使っているボールペンを例に挙げるならば、
そのボールペンそのものであり、
そのボールペンの機能そのものです。
商品を買う人がボールペンで字が書けさえすればいいと思っているならば、
その商品は安ければ安いほど良いと言うことになります。
ですから商品やサービスの単純な機能そのものだけで勝負をすると、
値段勝負にならざるを得ないのです。
だからこそ、
ここにどんな価値をプラスするのか!
ということが大切だと言うことですね。
・サービス
このサービスとは
いわゆるサービス業のサービスのことを指すわけではありません。
例えば私は税理士でもありますが、
税務相談はサービス業としてのサービスではありますが、
提供する商品そのものですからこれは先の商品製品に区分されます。
ここで言うサービスとはそういった
商品・製品・本来商品であるサービスそのものに、
「どのような付加価値を乗っけるか」、
と言うことです。
もちろん値引きとか、そういった金銭的なものを
指しているわけではありません。
「顧客が自分たちの商品やサービスを買っていただくときに、
そこにこんなサービスが乗っかっていれば、
より顧客に喜んでもらえますよね」
と言うものです。
先程の「商品・製品」に、この「サービス」が付け加わったもの、
これが次に狭い意味での「商品」です
・空間
これは上記の商品サービスを
どのような空間でお客様に提供するか、ということです。
わかりやすい例で言うならば、
高級百貨店のじゅうたんは、なぜあんなにふかふかなのか
ということです。
全く同じ商品を購入したとしても、
百貨店で売られているものとそうでないものとでは、
大きく値段が異なります。
ですから、商品を販売している空間そのものが、
価値を持っているという認識を持つことが大切です。
顧客への付加価値を高めるために、
自分たちの商品を、どんな空間で提供するのか。
また、どんな空間であるべきなのか。
これをもっと深く考えましょう。
・時間
そして顧客に提供する価値には、
「時間」と言うものも含まれます。
この時間と言う考え方には二通りの見方があって、
一つは、
具体的に何時から何時まで提供されているのかという、
時間軸としての時間のことです。
もう一つは、
商品を提供する場面において、
顧客にどのような時間を過ごしてもらいたいのかという、
体験する時間のことです。
短い時間で提供し、時間の短さを価値とするのか、
それともその場でゆったりとした時間を過ごしていただくことを
価値とするのか。
こういった切り口です。
どんな時間帯で、どのような時間の過ごし方をしていただくのか。
自社の商品価値を顧客に提供するときに
最もふさわしい時間のあり方とはどういうものか、
考えてみましょう。
・パフォーマー
最後に商品を構成するのがこの
「パフォーマー」
です。
今までお話してきた事は、
・どんな商品、製品に、
・どんなサービスを乗っけて、
・それをどんな空間で提供し、
・どのような時間を過ごしていただくのか
と言う事でしたが、パフォーマーとは、
「これら4つの価値を届ける私たちはどんな人ですか?」
と言うことです。
例えばお店の店員さんがとても親切なのか、そうでないのか。
とても知識があるのか、そうでないのか。
これによって顧客に届く満足度というのは、
当然のように大きく異なってきます。
だからこそ「パフォーマー」(=商品を提供する人)はどんな人であるかということは、
商品価値の一部を構成する、大切な要素です。
上記5つの全体をもって、最も広い意味での商品と呼ぶのです。
ここまでくるともはや「商品」というよりも
「商品価値」という捉え方をした方がわかりやすいかもしれません。
そしてこの「商品価値」とは、顧客の立場から見たときには、
「顧客価値」ということになります。
つまり商品の正体は、「顧客価値」なのです。
あなたが届ける価値は?
前項で説明した5つの要素の集合体である「顧客価値」、
これは高ければ高い方がいいかというと、
必ずしもをそういうわけではありません。
顧客価値が、最初の方でお話しした、
「あなたが顧客に対して届けたい価値」
と照らし合わせた時に、ふさわしいものとなっているか、
ということが大切です。
顧客価値が高まれば高まるほど、価値全体は上昇していきます。
ここに含まれる5つの内容を濃くすればするほど顧客価値は上がるかもしれませんが、
同時に手間もお金もかかります。
しかし、自社が商品を届けたいターゲットの求める価値がこの顧客価値と一致しなければ、
それは単なる過剰サービスにおちいる可能性もあるのです。
ですから最初にターゲットを定義することがとても大切です。
ターゲットに届かない価値をどれだけ積み重ねても、
それはそのターゲットにとっての価値とはなりえません。
その積み重ねたものは結果として、自己満足に過ぎないものとなってしまうのです。
そしてもう一つ大切なことは、
その届けたい「顧客価値」は、
あなたの会社の理念やお店のコンセプト等に照らして、
果たしてふさわしいものなのか、
ということです。
あなたが届けたい価値は、あなたの理念やコンセプトから生まれてくるものです。
ですから商品として創り出す顧客価値も、
その理念やコンセプトにあったものでないと、
全体としてのバランスが崩れたものとなってしまいます。
私がいつも提唱している、
「部分最適ではなく、全体最適。」
商品だけやたら品質がよくてもしょうがないのです。
提供する空間だけ豪華であってもしょうがないのです。
これまでお話ししてきたようなことが、
どのようにすれば全体としても最もバランスが良いのか。
これを意識して、
「顧客に提供する価値」を考えてみましょう。