私は「ものづくり」の仕事をとてもうらやましく思っています。
逆にいろんな人から「あなたの仕事はいいなぁ」と言われます。
そんな、隣の芝が青く見える件について。
目次
なぜ私の仕事はうらやましがられるのか。
この仕事を20年以上続けてきて、いろんな経営者の方とお話しするなかで、
「あなたの仕事(=税理士・コンサル)はいいなぁ」
と言われることが多々ありました。
現在もそういわれることがあります。
どんな部分がうらやましがられているのでしょう?
・仕入れもいらないし、在庫負担もない
・設備投資がいらない
・自分の身一つなのでランニングコストが低い
・頭の中に「手に職」を持っている。つまり頭一つで仕事ができる。
・価値が高くて値段が高い。つまり儲かりやすい。
などなど。
これらのうち前3つは事実ですが、
うしろ2つは「そうか?」と思います。
頭一つで仕事ができる、というのが、すごく気軽なお仕事に見えるのかもしれませんが、
これは実は結構大変なことです。
頭一つ、ということは
自分の持っている知恵知識経験アイデアなどを「商品」としているわけですが、
世の中どんどん情報はあふれていって、
その気になればたいがいの情報は手に入りますから、
頭の中にあるものを提供することで価値を生み出すには、
それを常に更新し続ける必要がありますし、
その辺に垂れ流されている情報との差を生み出すためには、
それが整理されている状態になっている必要があります。
常にインプットが欠かせませんし、
それをわかりやすく整理してアウトプットすることが求められるのです。
ですからインプットし続けることが好きでないと仕事になりませんし、
それをアウトプットする能力がないと、これまた仕事になりません。
これが頭一つで仕事をするということの大変さです。
逆にこれらが好きな人で、
頭の中で情報を自分なりに再構築して人と違う形でアウトプットできる人にとっては、
天職だろうと思います。
もちろんコンサルに求められる能力はそれだけではありませんが。
税理士という仕事はちょっと違います。
なぜなら「税理士資格」という国家資格に守られているからです。
そして「税法も変わっていくから大変ね」とよく言われますが、
実はこれはそれほど大変ではありません。
もともとベースとなる知識があって、
その中身をちょっと改定するだけなので、
ちゃんと変化についていくことさえしていれば、
それほど大変なことではないのです。
そして「価値が高くて値段が高い」という部分。
これはある意味事実ですが、それほど容易なことではありません。
目に見えない価値は、
価値として理解していただくには結構難しいことです。
だから、ちゃんとした値段をつけるのが難しいですし、
そのためには確固とした自信が必要になります。
また、自分が動くことでしか収益が生まれませんから、
「完全労働集約型」となります。
ですから、儲かりやすく見えるかもしれませんが、
儲かる天井も結構低いのです。
結局何がいいたいかというと、
そんなに楽な商売ではないよ、ということです。
当たり前ですが。
なぜものづくりをうらやましく思うのか。
私は本来、ものを作るのが好きです。
ですから、「日曜大工」が趣味の一つです。
自分の手で自分の思い通りのものが出来上がったときの感動と達成感は、
何事にも代えがたいものがありますし、
それが人から「すごいね、これ」と評価してもらえたら、
めちゃ、嬉しいのです。
それを知っているからこそ、
「ものづくり」の世界には興味がありますし、
あこがれがありますし、
うらやましくも思います。
興味やあこがれはさておいて、
なぜ「うらやましい」と思うのかは次の通りです。
・目に見えるもので価値を届けることができる
これは自分が目に見えないものを売っているからこその反動です。
目に見えるだけにわかりやすい。
実際に手に取ってつかえるからこそ実感しやすい。
そんな価値を顧客に届けることができるのは
素直にうらやましく思います。
・自分にはできないことだから
日曜大工はできますが、もちろんプロとの差は歴然です。
その技術力(もちろんピンキリでしょうが)は本当に素晴らしいと思いますし、
その自分のもつ技量でもって生み出す形あるものを通して、顧客に喜んでもらえるのは、
純粋にうらやましいのです。
・形がある分、価値が伝わりやすい(と思う)。
私は目に見えない価値を提供している仕事をしていますので、
これを相手にわかってもらう労力と、
なかなかわかってもらえない悲哀を感じ続けています。
ですから、目に見える分価値が伝わりやすいように感じて、
うらやましいのです。
これらを聞いて、実際にものづくりをされている方は、
「いやいや、そんなに甘い世界ではないし、価値なんか作れないし、伝わらないよ」
とおっしゃるのだろうと思いまし、
確かにそれが事実なのかもしれません。
なぜこんなギャップが生まれるのか
こういったギャップは、
いわゆる「隣の芝が青く見える」状態に他ならないわけですが、
なぜこんなことになってしまうのでしょう?
まず一番大きなことは、
自分の仕事のマイナスの部分ばかりが見えてしまっている、
ということです。
どんな仕事でもプラスの部分とマイナスの部分があります。
本当にプラスしかない仕事であれば、
この自由競争の元ではあっという間に人が群がり、
あっという間に価格が下がり、
あっという間に過当競争に陥って、
あっという間にマイナスだらけの仕事になってしまいます。
ですから、自分の仕事のマイナスの部分ばかりに目を向けていても、
いいことは何一つありません。
逆に自分の仕事のプラスの部分に目が行きにくくなってしまいます。
・自分の強みはなんなのか、
・自分の強みを生かすことで何ができるのか
・自分の持っている力でできることは何なのか
これらにもっとフォーカスしていただきたいのです。
あなたの芝はもっと青いはずです。
隣から見たら青い芝なのです。
少なくとも青くすることができる芝なのです。
眺めるべきはマイナス面と隣の青さではなく、
自分自身の持っている力です。
そして隣の芝が青いのは、ただ何もせずに青いわけではありません。
その隣人が、青い状態を維持しようと
不断の努力を積み重ねているからこその「青さ」なのです。
自分自身の足元を見据えて、芝が枯れているようであれば、
それを青くすることに努力を注ぎましょう。
とは言っても、それでも隣の芝は青く見えるものです。
ということは自分の芝の青さは自分自身よりも
他人の方が良く気が付くものです。
ですからどうしても自分の芝が青く見えない(=強みがわからない)のであれば、
遠慮なく人に尋ねましょう。
自分自身では当たり前と思っていることが、
思わぬ価値を持っていることに気付かされます。
それを周りから指摘されてもなお、
「いやいや、そんなこと誰でもできることやから」と謙遜(卑下?)される方も多いですが、
本当に誰でもできることなのか、よく考えてみましょう。
そしてちょっと足りないな、と思うのであれば、
本当に価値あるものにするべく、
その技術を磨き上げればいいのです。
そんな苦労はどの業界にだってあります。
今の仕事が儲からないから、といって安易に奇をてらったものに手を伸ばすのではなく、
まずは自分の足元を眺めてみてください。
特に、ものづくりをしている皆さん。
ものづくりは本当に素晴らしい仕事です。
自分の力で、目に見える価値を生み出すことができる、
虚像ではない「本物の」仕事です。
自身の能力が生み出せる価値に、
もっと可能性を感じていただけたら、
幸いです。