いいものを作るのと、それをアピールするのとは、別の仕事。

いいものを作るだけで、それが必ずしも自然と世の中に広まるわけではありません。
そのハードルを越えるために、考えなければならないことを。

京丹後市の刀鍛冶「日本玄承社」。確かなものを作っているが、その「良さ」はまだまだ世に伝わってはいない。

いいものを作っても、誰も知らなければ・・

本当に優れた製品を生み出しても、売上が伸びない、あがらない。
製造業に身を置く多くの方が、この悩みにさいなまれています。

製造業だけではないかもしれません。
良いサービスを生み出しても、それだけで
そのサービスが世の中に行きわたっていくわけではありません。

たとえそこに良い商品があったとしても、
その存在をだれも知らなければ、その商品は、
それを知らない人にとっては、この世に存在しないことと変わりのないことなのです。

そして、どう考えても自分のところよりも品質的に劣る商品が、
「極めて品質の優れたもの」として世の中に広まり、
多くの人がそれを評価し、売れていくという現実を目の当たりにして、
「うちの商品の方が明らかに優れたものなのに、なんであそこのあんな商品が売れるんだ」
と口惜しい思いをすることになります。

ですから、良い商品を生み出し、その売上を上げていくためには、
それを求める人の元にそれが届くよう、
発信をしていく必要があります。
いや、もっと言うと、
発信をしていく責任があるんじゃないかと思います。

その会社の素晴らしい商品が、
その商品の存在を知らないという理由から、
潜在的にそれを求めている人の元に届いていないのですから。
それがその人の元に届くということは、社会価値を高めることにつながっていくのだと思うのです。

誰に伝えたいのか

商品を販売するというマーケティングの世界において、
そして営業の世界において、
「その商品を誰に届けたいのか」
ということを定めるのは基本です。

いわゆる「ターゲッティング」ですね。

いい商品だからといって、
その商品はどんな人にも共感してもらえるわけではありません。
ですから、
その商品はどんな人に買ってもらってこそ初めてその本領を発揮するのか、
もっとも感動してもらえるのか、
それを考える必要があります。

「誰に届けたいのか」ということが定まれば、
「誰にこの商品の存在を伝えるべきなのか」が定まります。
そうなると、
「じゃあそんな人はどこにいるのか」
ということにつながって、
実際の営業活動の場面に活かすことができますし、
発信をするにしても、
どんな発信の仕方をするべきなのか、
どんな発信をしてはいけないのか、
という軸を定めることができます。

例えばただ試供品をばらまいても、
それを欲しくない人のや、その良さが理解できない人の元に届くものは
ほぼ意味がないのです。
もちろん商品の種類にもよりますし、商品の流通形態にもよりますが、
ちゃんとその商品の良さを理解してくれる人のものに、
徹底的に伝えていくことが大切なのだろうと思います。

ちゃんと共感を生み出すことができれば、
それは一歩一歩ですが着実に広まっていくのです。

その「良さ」とはどういったものなのか

作り手側は、その商品・製品のプロフェッショナルです。
ですから自社の商品が他の商品とどう違うかといったような
細かい差を明確に判断・区別することができます。

しかし残念ながら、
一般の人はそんなことはありません。
A商品とB商品、どっちもそれなりに優れたものであるならば、
大半の人はその差には気付かないのです。

ましてやその両者を同時に使い比べたり食べ比べたりしてみない限り、
そこに歴然とした差があったとしても、
ある一定の水準をクリアしているものであれば、
その差はたいして理解されないものであると思っておいた方がいいと思います。

だから、自社の商品が本当に良いものなのであれば、
その「良さ」とはいったいなんなのか、
ということをしっかり伝えることができる準備をしておく必要があります。

そして常々、それを伝えたい相手にちゃんと伝わるよう整理し、
成文化しておくことが必要です。

あいまいなものであるその「差」を、どう表現すれば明確に伝わるのか。
それを品質という観点だけでなく、
その商品をとりまくコンセプトレベルで正しく表現しましょう。

ブランディングとは、
「伝えたい価値を、正しく相手に伝えること」
そして
「それを通して商品価値を高めていくこと」
と私は定義しています。

それを届けたい相手が、
「だからこの会社のこの商品を、買うんだよね」
と具体的に説明できるくらいのレベルになれるよう、
自社の独自性を明確にし、正しく相手に伝わるように
文字にして、
言葉にして、
デザインにして、
しっかりと伝えていきましょう。

「独自性」とは文字通り、
「独自」のものです。
自社製品の「良さ」の説明が、他にもあるような内容のものであれば、
その発信は「独自性」へとはつながっていきません。

自社および自社の製品の何が「独自」なのか。
それを改めて時間をかけて、
考える機会をもっていただけたらと思います。

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