イーロン・マスク氏がTwitterを買収し、
大量解雇が行われ物議を醸しました。
少し下火になってきた話題ですが、
我々経営者にとって大切なテーマですので、
昨日に引き続き、Twitterネタです。
普通の企業再生
Twitter社が紆余曲折の末にイーロン・マスク氏に買収され、
氏が取締役全員を解任し、自身がCEOに就任しました。
1ヶ月ほど前の話しですね。
そしてその後、皆さんご存じの通り、
大量解雇と退職勧告がなされ、某記事によると3週間ほどで
従業員数は7,500人から2,700人まで激減したとのこと。
これに対しては様々な見解があろうかと思いますが、一般的には、
少なくともオールドメディアを通して聞こえてくるのは、
マスク氏への批判ばかりです。
まず基本的に私は、経営者の責任として雇用は守るべきであるし、
継続雇用が担保されるからこそ、社員さんは安心して会社で働くことが出来る、
という考え方です。
ですから私は経営者が社員さんのクビを切るようなことがあってはならないと思っています。
その前提で今回Twitter社の大量解雇についての私の考えですが、
マスク氏が行ったことは、通常の企業再生の過程である、ということです。
もちろんメディア等から入ってくる情報からしか判断できませんし、
直接当事者の意見を聞いたわけでもありませんから、
限られた情報からの判断に過ぎませんが。
ただ前提として考えなければいけないのは、
マスク氏のツイートによれば、
Twitter社は一日400万ドル(約5億6,000万円)もの赤字を、
日々垂れ流しているということ。
これをそのまま真に受けるならば、企業存続の危機、
しかも限りなく死亡に近い状態です。
まさに予断を許さない、即座に大手術を敢行しないと、息絶えてしまう。
そんな現状なのだろうと思われます。
そんな中、「全社員の雇用を守る」と言っている場合ではありません。
全社員を守ろうとすると、早晩倒産し、一部の社員すら守れなくなります。
ですからこういった状況で大量の解雇を行うこと、
そして事業を収益性の高いものへと変革させるためにテコ入れすることは、
企業再生の観点では当然のことと言えます。
その意味で、マスク氏の行ったことは企業再生として普通のことで、
そこまで大きく批判されることなのかな、と思います。
あの、故稲盛和夫氏ですら、JAL再建のときには、
パイロット・客室乗務員の解雇を断腸の思いで実行しています。
それだけに、人件費というものは、再生が必要な会社にとっては重荷ということ。
もちろんそれを実行したマスク氏に一定の批判がなされることは、
ある程度はしょうがないことかと思います。
しかし本来もっと批判されるべきは、
このような経営状態を作り上げてしまった、それまでの経営者です!
経営者の方針
とはいいつつも、これほどまでの大量解雇が必要だったかというと、
流石にそれはやり過ぎなんだろうなと思います。
私には実態が何もわかりませんから、あくまで無責任な憶測でしかありませんが。
しかしこれを断行したところに、
イーロン・マスクの経営者としての本質が見えてきます。
昨日のブログにも書きましたが、彼の基本的な経営方針は、
超優秀で馬車馬のように働く仕事ジャンキーを集めて、
少数精鋭型の事業を行っていくこと。
彼はこの会社の筆頭株主、そしてCEOとして、
自分の考える組織のあり方にいっきに組み替えようとしているんですね。
普通の経営者ならばある程度、
その会社の築き上げてきた文化とかを大切にして、
それを壊さないようにするものですが、
彼はそんなのお構いなし。
彼は自分の考える、
自分の方針通りの会社を作り上げようとしているのです。
「そんなことをしていると、社員は誰もついて来ないぞ」
という向きもあります。
正直私もこんな経営者のもとでは全く働きたくありません。
確かに元からいた社員の大半はついて行くことができないでしょうし、
だからこそ大量解雇だけでなく大量退職が発生しているわけです。
しかし今後この会社に入社してくる人は、
そんな彼の方針を知ったうえで、
それを「良し」と考える人だけでしょうし、
超優秀で仕事だけが生きがいみたいな人は世の中に普通にいますから、
そんな人だけで組織された会社として存続していくのでしょう。
この経営の方向性は私の考えるところとは全く異なりますが、
経営者が自社の方向性を明確にする、ということは、
雇用のミスマッチを回避するために、とても大切なことです。
彼は今回の騒動を利用しながら、
全世界のマスコミを使って盛大に、かつ無料で
全世界に自身の経営方針を発信しているのです。
そして彼一人が悪者として扱われることで、
実はTwitterという会社自体のブランド・評価はほとんど傷ついていません。
こんなところも計算してやってるんじゃないかな、と勝手に思っています。
経営者の責任
イーロン・マスク氏も、スティーブ・ジョブズ氏も、
世界的なイノベーションを起こした非常に優秀な経営者ですが、
特に「人」という側面での経営方針には、
私は全く共感できません。
人を道具と考えているというわけではありませんが、
自分の考える基準についてこれない人に対して容赦ありませんから。
まぁ、鬼ですよね。
しかし今回のTwitterの件については、
先ほども書きました通り、もちろんマスク氏もめちゃめちゃですが、
本来の責めは、放漫経営を行ってきたこれまでの経営者に帰すべきものです。
その意味で経営責任を果たしていないのは、
マスク氏よりもむしろ過去の人たち。
私たちは小零細企業の経営者ですが、
どんな小さな会社でも、
雇用を守るということは極めて大切なことです。
小さな会社だからこそ大切とも言えます。
会社が1年ももたないような状況になったときには、
心を鬼にして人員整理を行う必要が出てくるかもしれませんが、
そもそもそのような状況に絶対にしない、ということが
経営者の責任なのです。
「そんなこと言っても、コロナとか天災とかでどうしようもないときはあるよね」
とおっしゃる方もおられますが、
そういった事態になっても、
会社が再建されるまでの間、給料を支払い続けることができるだけの現金を確保していれば、
誰一人解雇することなく会社を存続させることができます。
ですからそんな最悪の状況であったとしても
解雇に踏み切らなければならなくなるということの責任は、
天災のせいだけでなく、やはりその一部は経営者にあるということ。
先にも出てきた故 稲盛和夫氏は、
「1年間売り上げがゼロでも全員の給料を支払い続けることができるだけの現預金を持っておけ」
と言っています。
まさにそれが、経営者の責任なのだな、と思うのです。