事業を運営していると、
結構高い確率で、資金調達をしなければならない局面が訪れ、
そのときに、銀行とのお付き合いというものがでてきます。
そんな銀行との向き合い方について。
銀行の行動原理を理解しておく
銀行とのお付き合いをするにあたって、大切なことは、
銀行がどういった行動原理に基づいて動くのか、
ということを理解することです。
銀行と融資の話しをしたことのある方は、
ある程度経験があるかと思いますが、
まあ、理不尽な思いをすることも多々あります。
ただこのときに「理不尽だ!」と主張したところで
何か変わるわけではありません。
それで融資が引っ張れるなら頑張って主張すればいいのですが、
基本相手を変える・動かすことは不可能ですので、
そんなところに労力を割いて、
自らの中に小さな怒りの炎をたぎらせても
意味がないことです。
ですからまずは、
「銀行とはどういうところなのか」
それを理解して、
基本的にその行動原理にこちらがいかに合わせていけるか
ということを考えましょう。
どうしてもおかしい!と思えることも、
行動原理を知っておけば、
「ああ、そういうところなんだな、じゃあしょうがないな」
という考えに切り替えることもできます。
金融機関の方が見たら、怒られるかもしれませんが、
あながち間違ってはいないと思います。
お金があるところに貸したがる
銀行は、お金を貸す以上、その貸し倒れを恐れます。
これは当然ですよね。
自分がそれほど仲がいいわけでもない他人に
お金を貸すことをイメージしてみてください。
基本、貸したくないですよね(笑)。
でも銀行は、お金を貸すことが仕事です。
今となっては様々な手数料を得ることが銀行の仕事になりつつありますが、
それはいったん横に置いときまして、
とにかくお金を貸すことが仕事です。
ですから基本的にお金を貸したいわけですが、
返してもらえなくなる可能性の高いところには貸したくありませんし、
逆に返してもらえることがはっきりしているところには、
貸したくてしょうがないのです。
これが「信用」です。
私たちが日常的に使用している「信用」という言葉とかけ離れているので
ちょっと理解しがたいところがありますが。
会社は赤字になるから倒産するのではありません。
お金がなくなるから倒産するのです。
ですから、お金を持っているところには、
銀行としては貸しやすくなります。
たまにこちらが借りたいわけでもないのに、
銀行の側から「借りてください」と言ってくることがあります。
もちろんただで貸してくれるわけではなく、
そこには利息が発生するのですが、
日常的に資金調達を必要としている会社は、
そのアプローチに対して門前払いすることはないのかなと思います。
こちらが借りたいときよりも、相手が貸したい時の方が
交渉もできますし条件もよくなるのは当然の話。
一度話しを聞いてみて、好条件であれば借り入れして、
手元のキャッシュを分厚くしておくのも、一つの選択肢です。
ただ、それでもって「うちにはお金がある」と錯覚しないようにしましょう。
気分良く動いてもらう
金融機関と融資の話しをする窓口は、
取引している支店の融資担当や、法人担当など。
どんな肩書きであれ、特定の担当者を通して
融資を進めていくことになります。
先にも述べたとおり、金融機関と融資の話しをしていると、
理不尽だな、と思うことが山のようにあります。
そんなときにそのちょっとした違和感やちょっとした怒りを
その担当者にぶつけてしまいたくなる気持ちもよくわかります。
しかしこの時考えていただきたいのは、
その行動をしたときにデメリットがあるのは自分の方だ、ということ。
銀行の担当者も人間です。
仕事をするにも、当然気持ちよく仕事がしたいですし、
気持ちよく仕事をさせてくれる先の仕事を優先してしまいます。
逆に言うと、
ややこしいところや進んで関わりたくないところに対しては、
仕事が遅くなってしまいます。
「そんなことで仕事の優先順位を決めるなよ!」
と言ったところで何も変わりません。
テーマは、
「いかに、担当者が気分良く、スムーズに仕事ができる環境を整えるか」
ということです。
担当者も一営業マンですから、融資が通るものなら通したいのです。
それが仕事ですし、それが自分の成績になりますから。
ですから、こちらから積極的に、
「何を提供したら、通りやすい?」
というものを提供していくのがいいだろうと思います。
担当者は基本、顧客と上司の間に挟まれています。
上司や本部に対して、決済を通しやすくするようなものを提供すれば、
彼らはスムーズに仕事ができるようになります。
ただ、提供して不利になるものまで
わざわざ提供するのはマイナスでしかありませんから、
そこの自己判断ができないようでしたら、
顧問税理士などに相談しましょう。
銀行の担当者にケンカを売っても、何一ついいことはありません。
「こいつ仕事ができないな」
と思っても、広い心で関わりましょう。
複数の金融機関と取引を
金融機関には、社内での不祥事を防止する目的で、
頻繁に異動があります。
「今の担当者、仕事ができるな、ずっと担当して欲しいな」
と思っていても、
すぐに転勤でどこかにいってしまいます。
そして次にやってくる担当者が能力が高いとも限りません。
これは担当者だけでなく、支店長に関しても同じ事が言えます。
そして問題なのは、
担当者と支店長の能力であったり、やる気であったり、
自己保身と顧客への思いとのバランスであったり、
そういったものに大きく振り回されてしまうということです。
特に、やる気の全くない担当者であったり、
顧客に全く向き合わないタイプの担当者に当たってしまうと、
なかなか大変です。
その時でも前述した通り、
基本的にはその担当者が仕事をしやすいように関わるという方向は変わりませんし、
怒りを表しても、会社にとって良いことはありません。
いずれ転勤でまた異動していきますから、
残念ではありますが、それまではじっと我慢しましょう。
しかしそれでは会社が前に進みにくくなるので、
その保険として、
複数の金融機関と常時付き合いをしておくということが大切です。
私はだいたいいつも、3行くらいとの取引をオススメしています。
内訳は、地方銀行2行と信用金庫1社、といった感じでしょうか。
地方銀行1行と信用金庫2社でもいいでしょう。
いずれにしてもそれぞれの金融機関に緊張感をもっていただくということと、
3行との取引があれば、
その全ての担当者が揃って仕事ができない担当者になることはないだろう、
というリスクヘッジが目的です。
小零細企業は、都市銀行との付き合いは不要かと思います。
銀行側がそもそもこちらを重要視していませんし、引き際も早いので。
正直現在の銀行は、会社の事業性や成長性を判断できる能力はありません。
そのあたりはまたゆっくりお話しできたらと思いますが、
いずれにしても金融機関との取引は会社の維持・発展のために必要なもの。
適切な距離感で、適切な関係性をもって、感情的にならず、
「どうすれば自社にとってもっとも有利に働くのか」という視点で
関係を築いていただけたらと思います。