「オーケストラが明日の組織モデルである」
これはピーター・ドラッカーさんの著書に出てくる言葉です。
なぜ、企業の組織の理想がオーケストラなのか、整理してみました。
それぞれがプロフェッショナル
まずは、これですね。
オーケストラは違う楽器を持った人たちの集団です。
違う楽器を持っている、ということがいわゆる「個性」です。
そしてそれぞれがそれぞれの個性を磨いたプロフェッショナルの集団なのです。
経営の組織においても同じことが求められます。
小さい会社だと、いろんな仕事を兼務しているかもしれませんが、
兼務しているだけで、それぞれの役割は違うはずです。
そして社員一人一人の特性にあった役割を与えてこそ、
その社員は輝きますし、
それによって会社全体の力も高まります。
バイオリンが得意な人に、チェロを弾かせてませんか?ということです。
いわゆる適材適所。
それぞれの社員が最も力を発揮できるところに役割を与え、
それを統括することで、組織全体として大きな力を発揮するのだと思います。
チューバだけでは演奏できない
なぜチューバかというと、ドラッカーさんの本でこのまま例えとして使われていたからです(笑)。
オーケストラはいろんな楽器の集合体です。
曲によって人数や編成が変わることがありますが、基本数十人規模。
ですからもちろんチューバだけで演奏はできません。
トロンボーンだけでも演奏できません。
バイオリンもビオラもチェロもホルンも・・・
これらいずれの楽器も単独もしくは少数ではオーケストラにはならず、
様々な楽器が合わさって初めて
オーケストラはオーケストラとして成立し、
合わさって初めて、
チューバやトロンボーンも欠かせない存在になるのです。
別にこの2つの楽器をディスってるわけではありません(笑)。
共にとても大切な役割を果たす、素晴らしい魅力ある楽器です。
会社も同じ。
営業ばっかりでは売り上げはあがるかもしれませんが、売るものがありません。
総務事務ばかりだと内部体制はがっちり整うかもしれませんが、売上はあがりません。
いろんな必要な役割があり、
その役割を果たす人がいてこそ会社は回りますし、
ある一人の能力が突出していたとしても、
他の部門の能力が低いと、その低いなりの組織となってしまいます。
まさに全体最適。
経営者は自社の組織のバランスを整えながら、高みへと導いていく必要があるのです。
同じ楽譜を持っている
オーケストラは、個々それぞれの役割と演奏する内容は違いますが、
当然のように、全員が同じ楽譜を持っています。
モーツアルトの交響曲第25番を演奏するぞ、ということであれば、
この曲の楽譜に基づいてみんなが演奏するわけです。
この「楽譜」にあたるのが、経営計画であり、経営方針です。
逆に言うと、経営計画や方針がちゃんと社員さんに伝わっていない状態で経営をしているということは、
オーケストラでそれぞれが楽譜を持たされていないし、
なんの曲を演奏するのか知らされていない、
というのと同じ状態である、ということです。
そんな状態でいざオーケストラのみんなが集まったときに、
「あ、今日はこの曲演奏するから、君はこんな風に弾いてね、君はこのとき休んでね」
となっているみたいなものです。
それぞれプロフェッショナルですから演奏自体はできるでしょうが、
バラバラなものになるのは想像に難くないでしょう。
経営計画がないと毎日の仕事が
そんな場当たり的な、その場しのぎな感じのものになってしまい、
経営はどこに向かっていて、
その中で自分はどのような役割を果たすべきなのかということがはっきりしないので、
それぞれが自分の力をMAXで発揮しようとも、それは「部分最適」でしかなく、
個々の力が全体として全く活かされないカタチになってしまいます。
指揮者を見て演奏する
オーケストラの現場では、みんな指揮者を見て演奏しています。
当然ですよね。
そこに至るまでに細かい練習を共にして、
細部はその過程で詰めているわけですが、
本番も指揮者をみてその指示に従って演奏をしています。
指揮者は経営におきかえると、もちろん経営者です。
みなさんの会社はちゃんと経営者の方をみて仕事をしているでしょうか?
それは別に、社長の機嫌を損ねないかビクビクしているとかそういうことではなく、
ちゃんと経営者の考えを理解してその指示のもと仕事をしているか、
ということです。
そのためには経営者自身が、
自分の会社の経営について確固たる方針をもっておく必要があります。
そのブレない方針に基づいた指示であり、
その指示に従えば会社は大丈夫だ、という納得性があってこそ、
本当の意味で社員は社長を見ながら仕事をしていると言えます。
また、オーケストラの団員は、指揮者を見ながら演奏をしていますが、
気持ちは観客の方を向いています。
観客に最高の演奏を届けようと一生懸命演奏し、
その演奏を素晴らしいものとするために、顔は指揮者の方を向いているのです。
社員さんの場合も同様です。
顔も体も心も経営者(または会社)の方を向いていないでしょうか?
目の端で経営者をとらえながら心と体はお客さんの方へ、
というのが正しい在り方であると思います。
コンサートマスターが大事
コンサートマスター(略して「コンマス」)とは、オーケストラのリーダーのようなもので、
オーケストラ全体を統率して
指揮者の意図をちゃんと音楽に具現化する役職です。
その役割から「第2の指揮者」と言われます。
必ずしもそうというわけではありませんが、
だいたい第一バイオリンのトップが務めています。
ですから通常、観客側から見て指揮者の一番手前左側にいます。
これまで意識したことがない方はぜひ意識しながらオーケストラを見てみてください。
指揮者はコンマスと最もコミュニケーションをはかりますし、
演奏者も指揮者だけでなくコンマスの方も見ながら演奏しています。
指揮者の指示を補ったり、指示に従って細かく他の団員に指示したりするのが仕事ですから、
経営の現場におきかえると副社長、
要は会社のNo.2ですね。
優れたオーケストラに、優れたコンマスあり。
このいわゆる「社長の右腕」がしっかり機能して、
社長の足りない部分を補ったり、社長考える方針や意図を社員に伝えたりして、
心は経営者の方を向きながらも社員と社長との間をつないでくれる人がいると、
本当に経営は安定します。
経営者も好きなように飛び回ることができるようになります。
こんな風に、オーケストラのあり方が、
大いに組織作りのヒントになりそうです。
「うちはオーケストラになるほど社員さんの人数がいないよ」
という会社も他人事ではありません。
組織が小さかろうが、組織の中で必要な役割の数はそれほど変わりませんから、
一人でいくつかの役割を担う、というカタチになるだけです。
ぜひ一度、自社の「オーケストラ」としてのあり方を、考えてみてはいかがでしょう?