資金繰りの厳しい会社は、山のようにあります。
コロナ禍からこっち、当初はコロナ対策支援による
無利子・無保証金・元本据え置きの融資がおりたことで
一時的に救われている会社も多いでしょうが、
今後その返済がスタートしたときには、
資金繰りで苦しむ会社で溢れかえることだろうと推察されます。
そんな資金繰りの苦しいとき、お金を支払う順番を間違えないようにしなくてはいけません。
目次
取り立てがうるさい順番に支払ってしまっている
私が税理士・コンサルをしている現場で見ていると、
「なんでそっちから先に支払うの?!」
という場面が散見されます。
事前にちゃんと相談してもらえればいいのですが、
「気が付いたら支払ってしまった後」
ということになっていることがよくあります。
特によく見られるのは、
「取り立てがうるさいところ」から先に支払っている
というものです。
この「取り立てがうるさい」というのは、
「取り立てが厳しい」というのとは
意味合いが違います。
「うるさい」のは、取り立ての回数が多い、ということ。
そして「厳しい」というのは、取り立てに対して支払いを実行しないことで
事業に悪影響を及ぼす、ということです。
事業に悪影響を及ぼすどころか、
事業や会社の存続を危うくする場合もありますから、
支払う順番は
「うるさい先」よりも「厳しい先」
と認識するのが、大切です。
税金の支払いが後回しに!
ただ現実としては、
人間日常の取り立てのうるさいところから先に支払ってしまいますから、
一般的に、
1.銀行
2.仕入れ先等
3.税金
となってしまっていることが多いのです。
しかしこれは全く逆であると私は考えています。
1.税金
2.仕入れ先等
3.銀行
この順番です。
銀行は回収について最もうるさく、
うるさいが故に支払わないと大変なことになってしまうように思われがちです。
しかし、銀行に対してはリスケも可能ですし、
会社をつぶしてしまうような取り立て(いわゆる貸しはがし)はある程度制限されていますから、
ちゃんと今後の事業計画・返済計画などを丁寧にすり合わせたうえで、
胸を張って後回しにしていただければと思います。
もちろんうるさいことには変わりありませんが。
税金を後回しにすると怖ろしいことに。
税金に関しては、金融機関とは逆で、
少し支払いが遅くなったり、多少未納がたまったところで、
特に激しい取り立てがあるわけではありません。
最初は郵送で未納のお知らせと納付書が届くというだけにとどまります。
しかも、仕入れ先などと異なり、
今支払わなくても事業を続けるのに影響がなさそうに思えるので、
ついつい後回しにしてしまうことが多いのです。
しかし、これが間違いの始まりです。
放置をしていると、
ある瞬間からいきなり激しい取り立てが始まります。
しかもそのときには普通に差し押さえをちらつかせたり、
実際にそれを実行したりしてきます。
具体的には1000万円以上の滞納となると、
国税の管轄は税務署から国税局に切り替わります。
相当の気合を入れたうえで、
ちゃんとノウハウを持ったうえで抵抗をしないと、
平気で不動産や売掛金を差し押さえに来ます。
資金繰りの厳しい会社の場合は、
不動産はとっくに金融機関が担保として押さえているでしょうから、
結構簡単に差し押さえの手が売掛金に及んできます。
これが実行されると、
税金滞納の情報が取引先に伝わってしまい、
取引先の信用を失って、
いっきに事業を畳むところまで追いやられてしまいます。
実は恐ろしい、地方公共団体の税金。
私が個人的に「実は恐ろしい」と思っているのは、
税務署よりも県税・市税の滞納です。
税務署の徴収部門は税金の回収のプロです。
中にはずっと徴収畑を歩んでいる人もいますから。
しかし県や市は異なります。
役所の中での人事異動がありますから、
税金回収のプロでないどころか、
税金のプロですらないケースも多いのです。
そしていずれ人事異動があるということになれば、
面倒なところには首を突っ込まないのが人情です。
こんな事情から県税や市税は、ある程度の滞納までは、
手元に滞納の通知と延滞金を添えた納付書が届くのみで、やさしく(?)放置されます。
そして滞納している側も、放置されているが故に滞納が重なり、
何百万という金額になるまで放置してしまうのです。
しかしこれがある一線をこえると、
これまたなんの相談もなく(当然ですが)その滞納の回収は突然、
「地方税回収機構」へと移管されます。
するとここで、一気にその取り立ては厳しくなります。
突然「差し押さえ」という話しがでてきて、
あれよあれよという間に差し押さえが実行されてしまうのです。
回収機構は県や市の職員とは異なり回収のプロですから、
その対応も極めて厳しく、国税局と同レベル。
経営者は経営をやっている場合ではなくなってしまうのです。
一度こうなってしまったものを、交渉して現実的な金額で分割払いへ持って行くという交渉は
非常に厳しいものとなってしまいます。
向こうが放置しても、こちらは放置しない
以上のことから、
まずは、税金をちゃんと払いましょう。
これが本当に大切です。
いずれ支払わなければいけないものですし、
経営に与えるダメージが半端ないですから。
特に法人は倒産すればそれまでと言えばそれまでですが、
個人の場合税金滞納は、自己破産後も消滅することなくついて回ります。
別の視点では、
それぞれの地方公共団体が実施している補助金・助成金などは、
税金の滞納がないことが条件となっていることも少なくありません。
これらは税金から拠出されてるわけですから
当然と言えば当然です。
これらの権利を失わないためにも、ちゃんと税金は納めましょう。
本気の取り立て・差し押さえが始まってからでは、
後の祭りです。
もし滞納をしてしまったら、相手方が放置しているとしてもこちらは放置せず、
こちらから出向いて納税できない事情を説明し、
具体的に納税できる金額を話し合いましょう。
そうすれば、分割払いは可能です。
そしてその話し合いの結果通りに支払うことが出来るようであれば問題ありませんし、
またそれが困難になった場合にもそれを放置するのではなく、
またちゃんと訪問して事情説明・状況説明を重ねましょう。
こうして支払う意思を正しく伝えて滞納額がこれ以上増えないようにできれば、
国税局や回収機構に回される前であれば、
差し押さえという話しになることも、まずないと思われます。
資金繰りに困っても、まず税金。
金融機関の支払いをリスケしたとしても、
税金は期限までにちゃんと払っていきましょう。
というよりも、リスケの段階で税金がちゃんと期限までに払える前提で計画をして、
条件変更するのが大切なのです。