税理士・コンサルとして仕事をしていると、
事業承継の現場に居合わせることになります。
そしてつくづく、経営会議の場って大切だなぁと思います。
親子だからこそ、難しい。
一般的に「事業承継」という場合、
それは親から子(その他下の世代)に引き継がれることを指します。
もちろん社員が引き継ぐ社内継承やM&Aも広い意味では事業承継ですが、
ここでは親子間の承継という意味で「事業承継」という言葉を使うこととします。
事業承継がなされるのが、事業の継続のあり方としてはやはり理想だと思うのですが、
この事業承継、親子だからこその難しさがそこにはあります。
親が社長で子が会社にいて、どう考えても子が次の社長になる、
ということがはっきりしている状況であっても、
社長と息子(または娘)がケンカばかりしている会社があります。
これが、わりとあります。
別に家族仲が悪いと言うわけではありません。
仕事以外の場では自然に会話をしている、普通の家族。
しかし仕事の話しになると、すぐにケンカになってしまう。
そんな会社を、たくさん見てきています。
また逆に、コミュニケーションが少ない、
または全くないようなケースもあります。
それぞれ別に口数が少ないわけでもないのに、
これも親子だからこそなのでしょう、変にお互いに遠慮があったり、
なんだか気恥ずかしかったり、子の側が委縮していたり・・
「事業承継に向けて、動き出すぞ」というタイミングが測れないというのもあるかもしれません。
いずれにしてもこの状態だとズルズルと承継準備のタイミングを逸してしまいます。
承継は、経営をただ引き継ぐだけの問題ではない
子が承継者と決まっている場合、特に親子間で対話がなくとも、
親の引退と同時に自然と子が引き継ぐことになります。
しかしスムーズな事業承継は、ただ経営を引き継ぐというものではないはず。
取引先や関係先との関係の維持や、社員との関係、
現在の経営理念にいたるまでの思いや、
今の事業を継続する上でのポイントなど、
承継すべきものは多岐にわたります。
そして、これまで先代経営者が何十年もかけて培ってきた経営ノウハウ。
これが承継されず、世代が変わるたびにリセットされているようではもったいない。
ですから事業承継はズルズルと先延ばしにして、
あるとき先代が動けなくなってその時にしょうがなく、
というものであるべきではないのです。
まずは現経営者が「何年の何月で引退」と明確に決め、
そこから逆算して事業承継の準備を始めましょう。
早いに越したことはありません。
余裕があるのであれば、5年以上の期間をかけて、
段階的に進めていくことをオススメします。
経営会議の場を活用する。
しかし前述の理由などで、
なかなか親子間のコミュニケーションが成立せず、
落ち着いて事業承継を行う場がもたれないまま経過してしまうことが、
ままあります。
そんなときには、第三者の力が必要です。
すでに社内に経営会議、幹部会議などの場ができあがっている組織では、
その会議に自然と承継者である子も入ってくることになるでしょうから、
そのままその場を利用して、子へと権限委譲していくことができます。
2人だけで話しをしててもケンカになるだけ、ということであっても、
会議の場のような、他の幹部社員などがいる場では、
さすがにそのようなことも起こりにくいですし、
逆にそのような場でもケンカになるようであれば、
それは社員に対して恥ずかしい話しですので、
そんなみっともないことはやめてください、としか言いようがありません(笑)。
そして経営会議の場がないようでしたら、
敢えてその場を設けましょう。
少人数の会社で、経営会議の場を作っても第三者が入り込んでこないようであれば、
顧問税理士を活用するのが良いだろうと思います。
毎月税理士と打ち合わせをしているのであれば、
その場に承継者にも参加してもらうようにして、
一緒に今後の経営の話しをするのです。
今の税理士にその能力がないのであれば、
税理士をかえるか、
今の税理士を変えなくとも、
そういった能力とノウハウをもった税理士はおりますから、
セカンドオピニオンとしてコンサルのような形で入ってもらうのもありでしょう。
親子間のコミュニケーションが成立しているとしても、
ちゃんと事業承継のノウハウをもっている人にアドバイザーとして介入してもらうことは、
価値があることだろうと思います。
親子だからこそ、素晴らしい。
これまで「親子だからこそ・・」という形でその欠点ばかり伝えてきましたが、
決してそんな良くないことばかりではなく、
親子だからこそのメリットというのも、たくさんあります。
健全な関係の親から子への愛情は、はかりしれないものがあります。
子が引き継ぐのだからこそ、
親としては心配のないようにしてやりたいと思いますし、
承継が終わった後も、何かと気にかけてくれるのも
親だからこそです。
第三者への承継であれば、
会長職などで会社に残っている場合は別として、
完全に会社から離れてしまったら、
今後の関わりも手助けも、基本的にはありません。
もし承継後に会社で大変なことが起こったとしても、
それを最後まで見放さずに支えてくれるのは、
家族です。
これほど力強いものはありません。
現状なかなか親子間でのコミュニケーションが成立しにくいようなのであれば、
ぜひともどちらかが一度勇気を出して踏み込んでください。
そしてケンカばかりになるようなのであれば、
どちらかが大人になってください。
そして時間をかけて、
適切なコミュニケーションがとれる関係を築いていってください。
二人だけでは無理なのであれば、
その場を適切にコントロールしてくれる税理士や
コンサルなどの第三者とともに経営会議の場を設けて、
構築していっていただければと思います。