未来創造マネジメントは(原則)私の代まで。

未来創造マネジメントは私の代、つまり一代限りで終わらせる予定です。
ということで、今日は事業承継のあり方と、その注意点について。

理想の承継の姿ですが、すべてがこんなにうまくいくとは限りません。

永続性がすべてではない

事業は継続する責任がある、という言葉をよく聞きます。
事業があるということは、
そこに雇用があり、顧客がいるわけですから、
もちろん事業を継続する責任が経営者にはあると思います。

そして私もかつては顧問先や周囲の経営者に、
「事業は永続させなければいけない」
ということを伝えてきました。

しかし自分自身のやりたいことが、
組織的な税理士事務所を経営することではないということに気が付いたとき、
自身の事務所は私の代で基本的に終了する、という方向にしましたし、
周囲にも、もっと柔軟で良いということを伝えるようになりました。

もちろんうちの息子や娘が15年後とかに、
『私の事務所を引き継ぎたい!』と本気で言うのであれば、
そのときに持ちうる私のノウハウを全て伝授するつもりで、承継を行います。
相手が私からそれを学ぶ意志があるのが前提ですが。

今から15年~20年後、その時点でも私は時代に遅れているつもりは毛頭ありません。
しかしさらにその先20年を見据えることはしないし、
できないとも思います。
ですからその時点での私のノウハウを100%吸収することが、
彼ら彼女らにとっていいことであるとは限りません。

ひょっとしたら15年後には、未来創造マネジメントの経営内容は、
すっかり違ったものになっている可能性もあります。
最終的にはその時になってみないとわかりませんね。

ただ少なくとも、今の会計事務所や税理士事務所の在り方が、
この後20年継続するとは思えないので、
会計事務所としての未来創造マネジメントを引き継がせることはないでしょう。

経営に向いていない人に継がせてはならない

今、私の顧問先で、間もなく事業を畳もうとしていらっしゃる方がおられます。
その方は先代から事業を引き継がれたのですが、
なかなかその事業がうまくいくことはありませんでした。

その経営者さんが最近、ふと私に漏らした言葉が、
「私、会社の経営が実は全然好きでなかったことに気がついた」
というものでした。

一生懸命関わってきた身として少し寂しい思いはありましたが、
その経営者がそのあとに繋いだ、
「先代の思いを引き継いで、ただ「潰してはいけない」という思いだけでやってきました」
という言葉を聞いたとき、
これは不幸なことだな、と思いました。

その経営者は、ただひたすらに、
自分の愛する親の残したものを守るために、
自分の一生をかけて、自分に向いていないことをやり続けてきたのだと考えたとき、
本来その人が背負うべきでないものを背負い続けてきたことに対して、
これはあってはいけない不自然なことだ、
と思ったのです。

経営に向いていない人が、
努力の末に立派な経営者になるケースは、もちろんあります。

ただ、私が仕事を通してこれまで多くの2代目3代目の経営者を目にしてきて、
そうでないケースの方がたくさんあるな、と感じることも事実です。

「努力すれば向いてない人でも経営者になれるんだ!」
と口で言うのは簡単ですが、
うまくいっている少数のケースをとらえて、
「だから努力すれば誰でもそうなれる」
というのは乱暴な話しです。

結果本人だけでなく、その家族や社員さんまでもが不幸になってしまうこともありますから、
全体幸福の最大化にフォーカスするならば、
その事業を上手に畳んでいくか、
経営能力のある人に引き継いでもらう、ということも選択肢の一つなのです。

息子さん娘さんへの事業承継が、正義ではありません。

ただその方向に行かない場合、
周囲に迷惑をかけないためにどのような準備をするべきか、ということは、
よくよく考えなければいけないと思います。

一代で終わらせることの責任

ですから、私の決断のように、
自分の代で事業を終わらせるという決断をするからには、
そこに向けて準備をしていく必要があります。

まずは雇用問題です。

会社を畳もうとするときには、
いま雇用している人のうち一番若い人はいったいいくつなのでしょう?
少なくともその人が65歳くらいになるまでは、
面倒を見てあげる必要があろうかと思います。

もしその人が経営者より10歳年下であれば、
たとえ事業が縮小していくとしても、
経営者が75歳まで経営をするイメージをもつべきでしょう。

もしくは自分が引退しても仕組みだけである程度売上を維持できて
そのまま縮小して、ゆっくりと終焉させることができる状態をつくるか。

あとは、事業承継で他の経営者に引き継いでもらうのか。


そして、顧客問題です。

これについては多くの場合代替する事業者がありますから、
実はそれほど大きな迷惑がかかることはありません。
「あなたのところの商品しか買わないんです!」と言っている顧客も、
最初は困るでしょうが、次第に慣れていきます。

しかし、本当に代わりのいない、独自性の強い事業をしている場合には、
やはり大きな影響を及ぼしてしまいます。
ですから、事業・経営は継続できなくとも、
その技術を伝承することを考える必要があるかもしれませんし、
または、顧客を意図的に減少させていって、
できるだけ迷惑をかけることなく静かに消滅させるということを
考える必要があるかもしれません。

雇用問題にしても顧客問題にしても、これら以外にももちろん手段は考えられるでしょう。
しかし大切なのは、どの方向性で引退するにしても
ちゃんとその準備をしておくことです。

こういったことは「いきなり5年後」とかをゴールに据えて
実現できるものではありません。
M&Aだって、円滑な承継のためには、
素晴らしい承継先が現れるような、魅力的な会社にしておく必要があります。
それ以外のケースでも15年~20年前から、
イメージをもって準備をしていくことが必要だろうと思います。

私も最終完全引退を75歳に設定して、
現時点での終着イメージを持っています。

そしてこれも一度作ったら終わりではありません。
10年以上あれば事業のあり方は変化していきますから、
その状況の変化に応じて終了の仕方も変わってきます。


毎年、自社のビジネスシナリオを描き直すとともに、終了の仕方を微調整する。
そんなことがとても大切なんじゃないかと思います。

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