損益計算書の中に潜む、固定費。
費用というからには支払なわけですから、
少ないに越したことはないですよね。
しかし、油断をすると気が付くと増えてしまいます。
固定費とはなにか
まず最初に、固定費とは何か、というお話しから。
固定費とは読んで字のごとく、
「固定」化されている経費のことです。
つまり売上が多かろうが少なかろうが、
それほど大きく変わらないもののことを言います。
これに対するものが「変動費」。
これまた読んで字のごとく、「変動」する費用です。
何に連動して変動するかというと、売上です。
売上があがると、必ずそれと完全に連動して増減するもの。
それが変動費です。
たとえば、商品仕入(売上原価)。
完全に売上に連動します。
たとえば、ECサイト売上の送料。
これも完全に売上に連動しますよね。
これが変動費です。
そして、こういった変動費以外のものを「固定費」と呼びます。
水道光熱費など、確かに売上が増えると人の活動が増して、
その分増えるかもしれませんが、
売上に完全に連動しているわけではないですよね。
こういったものは固定費になるのです。
固定費が少ないと楽
かかっている固定費が少ない状態での経営は、
ずいぶんと楽になります。
例えば
粗利率60%で、固定費が2000万という会社が、
400万の利益を出そうと思うと、
粗利益が2400万必要ですから、
必要な売り上げは2400万÷60%で4000万となります。
同じ条件で、仮に固定費が1400万で済んでいるとすると、
同じく400万の利益を出すためには、
必要な粗利益は1800万となります。
するとそのために必要な売り上げは、
1800万÷60%で3000万となります。
同じだけの売上をあげるのに、3/4の売上で済むのです。
無駄な固定費が多い会社は、経費がだぶついている、
贅肉だらけの会社です。
逆に無駄な固定費がほとんどない会社は、
獲得した粗利益が即座に経常利益に反映する、
筋肉質な会社といえます。
しかし当然のことながら、固定費は少なければ少ないほどいい、
ということでもありません。
固定費は会社を動かすための必要経費でもあるわけですから、
会社を動かすため、そして会社を成長させるための
エンジンとしての役割を果たします。
ですから、そういった本来必要な経費まで削減された状態では、
会社に勢いがなく、成長力のない状態となってしまいます。
これは「筋肉質経営」ではなく「骨と皮だけ経営」です。
考えるべきは「費用対効果」。
「ちゃんと効果を生み出す経費は、適切かつ積極的に使う」
ということも、一方では大切な考え方です。
最も大きな固定費は?
それでは固定費の中で最も大きな経費はなんでしょう?
これは間違いなく「人件費」です。
多くの場合、その会社の固定費の50%前後を占めています。
ですから、「費用対効果」を考えるにあたって、
最も慎重にならなければいけない経費です。
それなのに案外、簡単かつ安易に
人を雇用する会社が多いように思えてなりません。
1万円の本当に必要な経費はめちゃめちゃケチるのに、
人はすぐに雇ってしまいます。
もちろん会社を動かすのは人ですから、人の雇用は大切です。
しかしその前に一度立ち止まって考えていただきたいのは、
「現状の人材を100%活かせているか?」
ということです。
このように尋ねられて、「100%活かしてます!」と言える経営者は
少なかろうと思います。
経営は一定の余裕をもった状態で運営する必要がありますから、
100%は逆に良くないことかもしれませんが、
いずれにしても、現状の人材を
もっと効率的・効果的に活用する手段はあるはずです。
そこをまず徹底してからでも、
新たな人の雇用は遅くはありません。
会社の継続的な成長を考えたとき、
先行投資としての人は必要です。
しかし、いかに先行投資とはいえ、
それによって赤字になるようではいけません。
先を見据えて雇用をする場合でも、
その雇用を行ったうえで、現状でも十分に利益が出せることが
先行投資できる条件であると思います。
どうやって減らすか
このように、気が付けばブカブカと膨らんでいく固定費。
それではそれをどのように削減していけばいいのでしょうか?
これはめちゃ簡単な話しで、
一つ一つの経費を洗い出して、
「それが本当に必要か」
「その経費がなければ運営に支障を来たすのか」
「その経費は、もっと削減できないか」
「その経費を他に代替することはできないか」
このようなフィルターを通して、
聖域なく、妥協なく
「これはなくてもいいかも」と思われるものは、勇気を持って削減していくことです。
一度やめたものをまた始めるのは、それほど難しいことではありません。
悩ましいなと思ったら、一度やめてみて、
それから考え直してもいいかもしれません。
考えるべき基準は「費用対効果」。
その費用をかけるに値する効果が果たして生まれるのか。
この一点に尽きます。
「あった方が便利だから」とか
「なんとなく必要だから」とか
そんな基準で考えていると、
どんどん膨らんでいって、利益を削り取っていくのです。
先ほどもお話しした通り、
会社の成長・発展のためには経費は必要です。
ですから、なんでもかんでも削減・節約すればいい、
というものでもありません。
そこの微妙な匙加減を意識しながら、
「それ、実はいらないよね」というものは、
どんどん削減していきましょう。
場合によってはそれだけで、売上を1円たりとも上げることなく
赤字脱却・利益倍増することも可能かもしれないのです。